UFC社長のデイナ・ホワイトは
ジョン・フィッチ解雇という会社の判断を擁護する。
MMAjunkie.comより
写真はsherdog.comより
UFC社長のデイナ・ホワイトはジョン・フィッチ(MMA24勝5敗1分
・UFC14勝3敗1分)の解雇という経営戦略上の判断を擁護し、
一度ウェルター級に挑戦した選手の値段としては、最近の
彼のキャリア上の地位を鑑みるに法外な高さだと語った。
「彼はとにかくクソ高すぎる。」とデイナは木曜日に語った。
カリフォルニアはアナハイム、ホンダ・センターで土曜日に
開催されるUFC157の大会前ニュース・カンファレンスでのことだ。
「彼は結局どこかしらに落ち着けるだろう、そして彼は
戻ってくるだろう。これはスポーツ・ビジネスだ。そして
これは起きうることなんだ。」
ホワイト、彼個人としては、ベラトールMMAがフィッチに
大金を支払うと考えているようだ。彼の最近の不振と、
ベテランとしてのステータスが彼をプレリミナリ・カードと
しては高額水準の商品にしてしまっているのだ。
「バイアコムは豊富な資金がある。」と彼は言った。
「バイアコムMMAは資産を損なっていない。この男には
出向いてそれなりに金を稼げる場所がいくらでもあるんだ。」
事実、バイアコムの以前のプロモーションは、
その5年間の歴史において何人かのUFCから
捨てられた選手と契約した。しかし、バイアコムが
所有し、ベラトールを放映しているスパイクから来た
経営者は近頃、ベラトールCEOのビヨン・レブニーに
対して団体が所有するタレントを育成するように
伝えたという話が囁かれていた。
それにも関わらず、ホワイトはフィッチが彼の
キャリアを再び築き上げ、たぶんオクタゴンに
戻ってくることを予見している。
「(フィッチは)最終的にはベラトールか他の団体のどれかに
参戦して、世界タイトルを獲得するだろうね。」と彼は語った。
「彼は最後はそこに落ち着いて、すべての男たちを打ち倒し、
乗り越えてチャンプになるだろう。男は外に出て行き、何勝か
して、いくつかの印象的な活躍を引っさげ、そして戻ってくる。」
フィッチ、ついこの間デミアン・マイアにUFC156で判定負けした
彼の名前が直近のUFCの解雇名簿16名の中にあり、そのことは
視聴者とメディアの間に大きな動揺を巻き起こした。
1勝2敗1分という彼のここ4試合の成績にも関わらず、
元パデュー大学のレスラーは世界でもトップクラスの
ウェルター級選手だと広く考えられていた、彼が
解雇通知を貰ったときのことだ。彼の凋落より以前、
彼はUFCにおいて13勝1敗であり、その一敗はウェルター級
王者ジョルジュ・サンピエールに対しての一敗だったのだ。
批判者達は2007年のプロモーションにおけるフィッチの
肖像権論争に対する報復だ、魅力的なファイターを
強い競争者よりもえこひいきしている、新たに女子
バンタム級の部屋を作るために男性ファイターを
蹴り出している、そして自分たちが作ったウェルター級
ランキングを無視している、などを糾弾している。
「もういい加減にしろや。」とホワイトは言った。「これは
どのスポーツでも同じことだ。グリーンベイ・パッカーズは
(チャールズ)ウッドソンを切った。そして他の数多の男たちが
切られたり、トレードされたりしてるんだ。」
ホワイトは、この先さらに多くの解雇があるかもしれないと
警告した。
「我々が契約中の奴らは470人くらいいる。」と彼は言った。
「今現在名簿には100人以上もの人数が載っている。だから何が
起ころうとしているのか、負けたときに、まだ全ての血が流れ出て
はいないかもしれない。もっと溢れ出ているかもしれない。」
ホワイトは、フィッチのウェルター級での立場というものを
彼のファンとは異なった観点で見ている。
「これはジョン・フィッチが9位、7位、6位、4位、2位のどこに
ランクしてるかという問題じゃないんだ、どの道私たちは
彼を切っただろう。」と彼は言う。「彼は以前1位にランクしていた、
-タイトルを賭けて戦い、そして彼は2位、3位、6位、7位と
ランクされていった、そして今彼は9位だ。これは一般的に
キャリアにおける落ち目と呼ばれるものだ。」
「彼は二つの試合で敗北した、一つは引き分けで一つは勝利した。
ああ、それはもちろんエリック・シウバを倒したときだ-彼は
(デイナの)お気に入りをブラジルで倒したと、これは本当に
クソみたいな話だ。一体エリック・シウバがどんな奴を倒したって
いうんだ?あれはエリック・シウバにとって初の本当の戦いだった。
素晴らしい試合だった-フィッチはファイト・オブ・ザ・ナイトを
獲得した。彼はそのボーナスも勝ち取った。」
ホワイトは、UFCのビデオ・ゲームの肖像権認可に
サインすることを拒んだことに対する報復としての
解雇だ、と言うファンに対して猜疑的だったが、
結局はごく一般的な解雇だった。
「私を馬鹿にしてるのか?このビジネスの歴史において、私が
ティト・オーティスよりも嫌っている奴は存在しない。」とホワイトは言った。
「いつでも私は椅子に座り彼が戦うのを見ていた、まるで
『あいつをぶちのめせ。』とでも言いたげにな。それくらい私は
あいつを嫌っていた。彼がUFCでのキャリアを終えて、「ランペイジ」
ジャクソンが私たちの全ての頭痛の種になった。そして
彼が出て行ったとき、彼は言った、『あんたも寂しくなるだろう』と。
私は言ったよ、『もう寂しいさ、兄弟』ってな。何もわだかまりはない。」
「全体このジョン・フィッチ-デイナ紛争を大げさに考えすぎ
なんだよ。私はジョン・フィッチに1オンスの嫌悪も抱いていない。
不快感すらない。これっぽっちもだ。私はジョン・フィッチは好きだよ。」
ホワイトは、フィッチのレスリング偏重スタイルの話になると、
その反対者であるとしてしばしば批判されてきた。そのスタイルは
UFCにおいて10回の判定試合という結果をもたらしてきた。
しかし代表はそれは誤解だという。彼のファイターに対する
考え方は、選手は自分の戦い方に沿って個々に判断すべき
だというものだ。
「私が(マット)リドルを毛嫌いしているか?彼のスタイルを
嫌悪して彼を今ここから追い出そうとしているか?リドルは
まさにジョン・フィッチのように戦う。」とホワイトはMMAjunkie.comに
語った。「もっとも最近になって、だがな。彼は超エキサイティングな
戦い方から今の足を掴んで引きずり倒したがる戦い方になった。
これはミックスド・マーシャル・アーツだ。シウバ-フィッチ戦が
あんなにいい戦いになったのは、シウバが実際わずかながらに
フィッチのレスリングを無効化し、いくらか打撃を当てることが
できたからだ。」
自分はまな板の上にいるかもしれないと考えるファイター達に、
ホワイトは対戦相手をフィニッシュすることを奨励している。
「成すべきことは出場して世界中でベストを目指すことだ。
そして皆のケツから感嘆の叫びを上げさせようと頑張るんだ。」
とホワイトは言った。「それはどれだけ多くの金を稼ぎたいか
次第だ。そこらじゅう巡って奴らに金を賭けたいか?どれだけ
多くの人が連中が再び戦うのを見るためにドアをぶち破ろう
としているのか?ということだ。」
「実を言うと、ジョン・フィッチが受けた反応(ファンからの)は
素晴らしいものだよ。大勢の人が彼を後ろから支えていると
いうのは喜ばしいことだ。これは悪いことじゃない。
彼にとって良い事だ。しかし私は彼にこう言うことができる、
ジョン・フィッチは安くない。バイアコムMMAはいくらか資産が
ある、だから彼は今すぐ市場に出て、自分の価値というものを
見出せる。」
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デイナのフィッチ解雇への説明でした。
要約すれば「コストパフォーマンスが悪い」ということですね。
いい選手だけどもギャラに見合わない、ということです。
私は今回の説明で納得したし、もちろんフィッチさん
次第ですがこれはフィッチさんにとってもプラスに
なることのような気がしてきたのでデイナをクソハゲ
野郎呼ばわりはやめておくことにします。ジョー・
シルバがスイカに塩をかけて食うことも許可します。
なるほどね、という感じです。
まず経営上の説明ですがこれはある程度納得ですね。
UFC156でのフィッチさんのギャラが6万6000ドルで、
これはまあまあの高水準といえるでしょう。確かに
実力的にはこれくらいが適正ですが、人気という
面を考えると少し割高だという説明もわからなくは
ないです。安定してメインに出られるなら別ですが、
この価格でプレリミに落ちてしまうとコストが高いと
いうのはそのとおりでしょう。反面、こいつは
貰いすぎだろというのも結構多いような気がします。
同じUFC156だとホジェリオが基本給10万ドル、
というのは個人的に納得しかねるところです。
加えて、デイナのクソハゲ野郎が今回の件で
しきりに言及しているのがバイアコム、つまり
ベラトールが買うだろうということです。恐らく、
フィッチという人材をどれくらいの値段で買うか、
それでベラトールという団体がどういうものに
なりうるかの観測気球として市場に流したという
側面もあるかもしれません。フィッチを獲得すれば、
ベラトールの体力、経営方針、選手の水準などを
計ることができるからです。地味で実力者で
そこそこのキャリアとギャラ、というフィッチさんは
格好の物差しでしょう。
次が本題ですが、デイナの発言からは人気が無い
事への批判よりも、実力に見合った人気をつけて
欲しい、というニュアンスが見て取れることです。
今回の騒動を受けて多くのファンが声をあげたことで、
恐らく皆が思っていた以上にジョン・フィッチという
選手は愛されていたということがわかりました。
しかし一方で、ジョン・フィッチの人気というものが
「彼のために金は落とさないけど試合は見たい」という
タイプの人気であることがはっきりとしました。
説明が難しいのですが、こういう職人肌の選手は
どのスポーツでもそういう傾向がある気がします。
つまり、ジョン・フィッチへの愛情というのは
MMAというスポーツへの愛情に近いものであって、
強く人を惹きつけ魅了するパーソナルな人気
というより、存在がそのスポーツの一部であり
象徴であるようなものへの愛情なのかなと思います。
野球で言うならホームランバッターへの憧れというより、
巧いショートへの敬意と賞賛のようなものでしょうか。
当然こういう人気は金を産みません。憧れを
抱かせるものではないですし、ライトユーザーを
引き込む魅力を有するものではないからです。
ただMMAというスポーツを愛する人間からの
敬意と愛情を受けるのは間違いありません。
そしてこのままではこうなることはフィッチさん
自身予見しているところもありました。エリック・シウバ戦
前後でも、しきりに彼は語っています。MMAというものの
中心はスポーツであり、その周辺はすべてがサーカスだと。
自分は全てをスポーツとして扱いたかったが、それでは
ダメなのだ、ファンを魅了する戦いをしなければいけない。
自分はこれまでその努力を何もしてこなかった、と。
だからこそ彼は、リスクを背負い、失うことを恐れず、
失っても取り戻せるんだという自信を持ち始めていました。
ところが事態は予想外に早く動きます。彼が
そう決意したわずか1戦目で敗北し、リリースされて
しまったのです。それはこれまでの戦い方のツケと
いえるのかもしれません。確かにこれは一見すれば
悲劇そのものでしょう。
しかしデイナが期待している通り、これはフィッチさんに
取ってビッグチャンスとなります。ここを乗り越えれば、
フィッチさんは実力に見合った人気を獲得し、
スターダムに躍り出ることができるのです。
なぜそう思うかといえば、彼が明らかに不遇な
解雇をされたことにより、これまで漠然とした好意を
寄せていたファン(自分も含む)は、はっきりと
フィッチ愛を自覚し、これからは猛烈に彼を
応援し見守るようになるからです。彼の去就は
メディアやファンたちから見守られ、その動向は
注目される事になります。
次に、彼が他の団体に出向くことによってMMA全体が
活気付きます。実力は誰もが認めるフィッチが他の
団体で試合をすることで、団体ごとのレベルの差や
フィッチ自身の本当の底力がはっきりと査定されることに
なるからです。もしフィッチがどこかの団体で王者になれば、
UFCのレベルもさることながらやはりフィッチの実力が
再評価され、それにより人気が実力に追いつくでしょう。
もしフィッチさんが負ければ、その団体の評価や
倒した選手はかなりの利益を得ることが出来ます。
最近ではネイト・マーコートがUFCをリリースされたものの、
階級を落としてSFで衝撃的なKOで王者となることにより、
彼は名声と地位を得てUFCに乗り込むことができました。
また彼がSFで大きく進歩を遂げたことで、彼がどこまで
UFCでやれるかという期待感で多くの人が彼の試合を、
実力を見たいと思うようになっています。フィッチさんも
これと同じことができるかもしれません。
そして、デイナは明らかにマーコートと同じような
展開を期待している節があります。もっというなら、
間違いなくそれは可能だろうと信じています。
デイナ自身、それくらいフィッチの実力は評価している
のは確かです。そして強くなり、人気を得てまた
戻ってくることを予期しています。
フィッチさんの問題点、それはフィニッシュをしない
ということでした。彼の戦績を見れば判定決着の
多さは一目瞭然です。そして思うに、フィッチさんは
性格的な甘さからフィニッシュできるのにしないのかな、
と感じています。
以前のシウバ戦後のインタビューなどもそうですが、
どうも彼は根が優しすぎるような印象があります。
それが相手に止めをさすことをためらわせては
いないでしょうか。そしてスポーツライクに考える
あまり、フィニッシュにあまり価値を置かず、
とにかく有利に最後まで動いて勝つことを目標に
していたのかな、と思います。彼の実力を考えれば、
もっとフィニッシュできておかしくないと思うからです。
デイナが選手に期待することもその点です。
ファイトビジネスにおいて、そしてこのスポーツに
置いて最も重要視されるのはフィニッシュ、つまり
完全決着です。これは自分もまったく異論がありません。
MMAというスポーツの一番いい点は、一対一で
人間が己の肉体を武器に倒しあい、どちらが強いか
決めるというとても原始的でわかりやすいところです。
それは人が本能的に求めるものであり、それこそが
皆を惹き付けて止まない要素です。
しかし、これを生み出そうと無理に働きかけるのは
意味がありません。たとえば戦い方を強制する、
かませ犬をあてがって格差マッチをする、というのは
これは違います。これは闘争の本質を大きく損ねる
ものです。これでKOを量産しても一時的な人気は
得るでしょうが、結局はゲテモノショーとして終わるでしょう。
これでは交通事故を見るのと変わりません。
本当に実力あるもの同士が、相手を完全に
打ち倒すことを目標に据え、その目標に向かって
各々が考え努力し、そしてその全てを賭けて
目標を果たすためにぶつかりあう、ここに価値が
あるわけです。その結果、倒しきれずに終わって
しまうことがあってもそれはしょうがないと思います。
作戦を立てること、仲間同士で鍛えあうこと、
減量の中で己と戦い体を練り上げること、こういう
全ての過程があって、その先に生まれる完全
決着こそが崇高なものなのです。こういう過程が
あってこそ価値があるのです。人の知恵と勇気の
全てがたった一点に集約される美しさが私の
MMAに望むものです。
スポーツは、お互いが傷つきすぎないように
ルールを取り決め行われる闘争の代替行為です。
しかし、MMAに限らず格闘技はお互いが傷つけ
あうことを行う、スポーツと闘争の中間に位置する
特異なものです。それゆえに普通のスポーツの
ように考えるのが難しいところもあります。
スポーツというものを考えれば、人が人を完全に
倒し制圧するということをルールを整備して行う
のは矛盾しているのかもしれません。しかし、
ルールによって整備され、お互いが敬意と誇りを
持って倒しあうという行為は最も洗練された闘争の
代替行為と言うことも出来るのではないでしょうか。
憎しみではなく誇りを賭けて戦う、というのは
人間が最も目指すべき姿の一つだと思うからです。
自分の意見が万人に受け入れられるとは思いません。
しかし、デイナも私も恐らく同じ感覚を共有してるだろう
ことは間違いないと思います。なぜならデイナは個人の
好みとしてファイトスタイルに言及しますが、だからといって
選手にブルファイトは強制していないからです。あくまで
戦略は選手に委ねています。これははっきりと認めて
いいと思います。彼はスポーツの本質をきちんと理解し、
そのうえであくまでアドバイスとしてフィニッシュを目指せと
言っているに過ぎません。それは選手のためを思っての
ことだと思います。
ジョン・フィッチが今回の解雇を受けてハングリー
精神を手に入れ、金や勝利に貪欲になり、フィニッシュ
の価値に気づいてそれを目指した戦いをすれば
かならず結果はついてくると思います。彼が他団体で
劇的なフィニッシュを重ねれば必ず彼はUFCに
戻ってこれます。その時は、彼の人気も実力に
見合ったものになっているでしょう。UFCほどに層が
厚くない団体なら、フィニッシュも今よりきっと容易に
なるでしょうし、それが彼の自信に繋がるかも
しれません。
最後に、この件でジョン・フィッチは自分という
人間がどういう存在か、それを客観的に見つめて
自覚する機会を得られたことが何よりもよかったと
思います。彼には恐らく彼自身が思うよりずっと多くの
ファンがいたでしょう。彼が思うよりずっとその実力は
評価されていたでしょう。そして彼はそれを知ることで、
人生で最高のモチベーションを持つキッカケを得られた
のではないでしょうか。
彼のスポーツへの愛情は、彼の孤独なまでの切磋琢磨は
ちゃんとMMAファンに認められていました。多くの人が
彼の存在を必要だと感じていました。彼の存在は
MMAの一部であり、このスポーツの礎となって
皆の心に根付いていたのです。自分は彼のファンとして、
世界中で彼の解雇を嘆く声があがったことを本当に
嬉しく思っています。そしてもしかしたら、デイナも
同じような気持ちなのかもしれません。彼の本当の
価値は、彼を失わなければ気づかなかったのかも
しれないと思います。
さあ、今世界中がジョン・フィッチという不幸な男に
注目しています。今こそ長い間練り上げた己の技術と
肉体で、新たな戦場で戦いを始めるときです。
いつか王者という経歴を引っ提げ、大声援と共に
オクタゴンに再び足を踏み入れる日を信じて、
これまで以上に世界が愛した極上の塩、
ジョン・フィッチを応援していきたいと思います。
あ、ショックで引退とかはマジでやめてください・・・。