チアゴ・シウバは地獄の幼少期を振り返る
fightersonlyより
画像はUFC公式より
これは短いが、MMAというスポーツの最も意義深い一側面を非常によく現したインタビューだ。長年に渡りチアゴ・シウバは英語を喋ることが出来なかったので、彼のパーソナリティは言葉の壁と恐ろしい強面の裏に隠れてしまっていた。
ここ2年ほど彼は一生懸命英語のスキルを磨き続けて、今では流暢になった。それによって彼は今回のような見識を述べることが可能になったのだ。シウバの幼少時代はまるで悪夢のようだ、ありがたいことに痛ましく辛い経験は比較的小さなパーセンテージで済んだ。彼は言う、彼は今幸せだと、しかし彼の瞳は別の事を語っていた・・・。
「私の父はとても攻撃的な人だった。彼はしょっちゅう自分をしこたまぶったんだ、何の理由もなしにね。彼がテレビを見ているような時に、私が何がしかで遊んでいて、テレビの前を走ると彼はベルトを握り締めて自分を打ったりしたんだ。私は『ある日の殴打事件』を思い出すのは好きじゃないんだが、彼は木片を掴んで私の手を打って指をぶっ壊したんだ・・・ちょっとキチガイじみてたね。」
あなたは今までに両親ともう一度関係を築きなおそうとしましたか?
「彼らは私の妻に接触したようだが、でも正直に言えばね・・・」
「私は彼らを憎悪してはいないんだ、でも彼らは何事においても私を一度たりとも助けたことはなかった。彼らはこれまで私に声をかけて支えてくれたことはなかった。それはハードなことだよ。時々一部の友人達が『お前は彼らのことになると何でそんなにおかしくなるんだ?』といった感じになる。その理由は、私の感じたことを他の奴は誰も感じなかったからだ。」
「もう何も気にしちゃいないよ。私には私の人生があるし、私の家族がいるし、私の友人がいる。私に必要な物はここに全部あるんだ、過去から何も得る必要はないんだよ。」
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というわけでチアゴ・シウバの哀しいインタビューでした。彼の強面の裏側には悲惨な幼少時代とトラウマが隠されていたようです。
チアゴ・シウバはライトヘビー級で活躍する中堅どころの選手です。つい先日ブラジルでハファエル・カバウカンチと対戦してTKOで勝利しています。自分は殴り屋ということとリョートに面白KOされた人というイメージが強いです。よくチアゴ・アウベスと記憶が混ざってワケがわからなくなります。
そんな彼ですが、両親がだいぶひどい人達で幼少期に散々な目に会ったようです。いくらなんでも木材で指を砕くというのはちょっとどころか相当狂ってることだと思います。この時代の記憶が彼を格闘家という仕事に向かわせた要因の一つになっているのは確かでしょう。しかしMMAと出会うことによって彼の人生は大きく変わり、今では仕事、友人、家族と大事なものを手に入れて彼のトラウマも少しは癒されたようです。
しかし彼のどこかトロンとした目つきや、妙に恐ろしげな容貌、そしてやたらと攻撃的なファイトスタイルなど、彼の心には今なお癒されずに残ったままの傷があるようにも感じられます。もし彼がMMAと出会わず、自分の中の攻撃衝動をスポーツに昇華できなければ彼は大きく道を踏み外してしまった可能性もあるように思います。
現ウェルター級チャンピオンのGSPは元いじめられっこでしたし、理不尽な暴力を受けて心に傷を負った人がMMAで成功するケースというのは比較的多いのかもしれません。暴力に対する怒りや嫌悪、そしてそれにより発生する鬱屈した攻撃衝動にとって、コンバット・スポーツは恐らく非常に相性がいいのでしょう。というのも格闘技とは、あるルール下において暴力に慣れ、その暴力を意思でコントロールすることを技術体系化したものだからです。暴力と折り合いがつかない人間にとって必要なものがそこには詰まっているのでしょう。
どんなに酷い目に会わされても実の両親だから憎みきれない、そんな哀しくも優しい思いを抱いてチアゴ・シウバは戦っていました。彼は努力して2年で英語を習得するなど、非常に勤勉なところもあるようです。彼もまた格闘技に救われた人間であり、これもまたMMAの素晴らしい側面の一つでしょう。このエピソードを知って、自分は彼を応援する気になりました。これでもう彼をチアゴ・アウベスと混同してウェルター級の選手などと書いてしまうこともなくなるでしょう。
しかしアメリカ人から見てもチアゴ・シウバの顔は怖いんですね。割と見慣れてるかと思いきやそうでもないようです。私は直接あったらたぶん震えあがって目を合わせることはできないと思います。あの少したるんだ体がよりヤバイ感じを増してる気がしますね。
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