UFC167の感想と分析です。以下は個人的意見ですので参考程度にどうぞ。
ウェルター級5分5R
WIN 王者ジョルジュ・サンピエール vs 挑戦者ジョニー・ヘンドリクス
(スプリット・デシジョンによる判定勝利 王者は9度目の防衛に成功)
Fight metricによるデータはこちら
昔話の教訓、その本当の意味と価値
日本人1億2千万人の内、9割9分の人間は昔話というものを聞いたことがあるはずだ。無い人は残念ながらここまでとなる。昔話は幼少の寝物語に、情操教育に、文字の学習にと様々な形で知る機会があったはずだ。昔話は遥か昔から時の洗練を受け、その形を変えながら現代まで受け継がれてきた無形の財産ともいえるものだ。そしてなぜ残り続けているのかと言えば、そこには普遍的な、人間の本質を突いた教訓が描かれているからに他ならない。そんな昔話の中で、現代でも容易に適用しうる優れた教訓を持つものとして頻繁に引用される作品の一つに、「うさぎと亀」という話がある。筋は簡単、足の速いうさぎと鈍足の亀が競争し、当然大きな差をつけたうさぎは亀の足の遅さに安心し、ゴール前で悠々と一休みをしたら、彼が眠る間も懸命に歩き続けた亀がうさぎに勝ってしまったというものだ。慢心を戒める話として今も様々な状況で語られる。そして多くの人は、それがたとえ小学校にも入らない幼子であったとしても、思い上がったうさぎを愚か者と嘲り、そして自分はこんなマヌケなことは絶対にしないと鼻で笑う。この教訓話の最も優秀な点はここにある。それは、うさぎは自分がうさぎである自覚がないことだ。そして鼻で笑った人間もまた、自分が愚直な爬虫類だと思い上がった、己惚れた愚かな哺乳類であることを知らない。人は己の慢心に気づかない。それが慢心の本質であり、だからこの話が示唆している本当の教訓は「慢心を戒めよ」ではない、本当の教訓は「人は己の慢心に失敗するまで気づかない」ということだ。もし人の慢心が言われて治るのならば、この話は現代まで残っていないだろう。世界中に類話がある。世界中で愚かなうさぎ達が今日もしたり顔でこの話を他人に語る。どこかの格闘技中毒のうさぎも、わかったような顔でブログを書いては、己の無知無学も知らずに己惚れて眠り込む。そして今も、世界中で己惚れたうさぎが足元をすくわれては蹲って悔いているのだ。
「ビッグ・リッグ」ジョニー・ヘンドリクス、ウェルター級王座に手の届いていた彼は、この日ゴール前で眠ったためにその王座から転がり落ちた。うさぎというにはあまりにも強靭な体躯を持ったその哺乳類は、「still」の言葉を聞いて膝から崩れ落ち、そして地面に蹲った。
彼はその隆起した岩のような肉体、濃い顔立ち、そして生い茂った髭のために「スパルタの戦士」と形容されていたが、それは彼には相応しくなかったかもしれない。戦士としての英才教育を受けたスパルタ人ならば、相手の心臓を刺し貫くまで決して勝利を確信したりはしないはずだからだ。敵がまだ武器を持って動いていながら、なぜ彼は最後まで相手を仕留めに行かなかったのか。勝利の女神は驕れる男に強烈な平手打ちを見舞い、そして彼は戦士から滑稽な道化に早変わりした。試合自体は彼が勝っていたと言うべきだろう。判定で気の毒に思うところもある。しかし彼は驕っていた、そして詰めが甘かった。何よりも、判定のシステムを勘違いしていたとしか私には思えない。
ビッグ・リッグの大誤算、それはMMAの判定システム
試合中、彼はしきりに時計を見た。何度も見ていた。その行動から、彼は恐らく判定勝利を念頭に置いていたはずだ。5R開始前には腰に手を当てて笑顔を見せた。彼は明らかに勝利を確信していたように見えた。そして5R、彼の4Rの攻勢は影を潜め、強烈な右ストレートを貰った後にテイクダウンを奪われた。5Rは明確に落としていた。にも関わらず、彼は5R終了のブザーが鳴った途端に跳ね起き、勝利したのだと大喜びして両手を広げて歩き回ったのだ。
彼は試合前に散々に不愉快な思いをしてきた。一方的なドラッグ・テストを持ち掛けられ、断ればまるで彼がドーピングしているかのように思わせる流れが出来ていた。彼の肉体は嫌疑を掛けられやすい怪力を有している。彼は憤った。そして試合前、カナダ系メディアはまたしてもしつこくドラッグ・テストを断った理由を彼に聞いた。彼は髭を震わせてますます怒った。GSPの真意は知らない。だが、それは結果的に盤外戦術となっていたし、それは彼に礼を失していた。だから彼はGSPを叩きのめしたくて仕方がなかった、勝利を得たくて焦れていたのは間違いないだろう。そして彼は試合で己が勝っていたことをほぼ証明したのだ。気持ちはわかる、ただ、それを喜ぶのはGSPが大地に倒れて動かないのを見届けてからのことだ。
試合後に彼は言った、そこまでハードに殴らなかった、ノックアウトを狙いにはいかなかった、7割の力だった、そしてそれは十分だったと。彼は大きな魚を逃がしたのが悔しくて口を滑らせたのかもしれない。ぶどうがすっぱいことを吹聴したくなったのかもしれない。手を怪我するのが嫌だったのかもしれない。本当のことはわからない。しかしデイナが言うように、それは十分ではなかったから負けたのだ。彼は選手である。「ビッグ・リッグ」ジョニー・ヘンドリクスはいつから「ジャッジ」ジョニー・ヘンドリクスになった?それは彼が判断することではないはずだ。愚かなうさぎは傷ついた亀を見て、ゴール・テープを切らない内から勝ったと思ったのだ。己の左手が勝利を奪ったのだと勝手に決めつけたのだ。勝利を焦りすぎたのかもしれない。彼が負けたのは、そこで自分を抑えられなかった自分自身に対してだったのではないだろうか。
UFCはラウンド・マストという判定システムを採用している。それは各ラウンドごとに優劣を決め、多くのラウンドを取ったものが勝利するというものだ。各ラウンドはどちらがより優位に運んでいたかで採点される。そしてこのシステムには大きな落とし穴がある。完全決着にならなかった場合、どちらがより相手を痛めつけたか、ダメージを負わせたかで判断したくなるところだ。しかしこの競技のジャッジはそういう判断をしてはいないことによくよく気をつけねばならない。あくまでも、どちらが多くのラウンドを取ったのか、が判断基準なのだ。だから最後に片方がズタズタになっていたとしても、判定で勝利することは十二分にありえるのだ。123ラウンドをわずかな差で勝ち取れば、45で大きなダメージを負ったとしても、ダウンさえしなければ勝つことが可能だ。
そしてどちらがより優位に運んでいたのかを、何を持って判断するのか。現状コミッションのジャッジが優先して評価する傾向にあり、私自身評価基準にしているのが手数だ。より多く攻撃を繰り出した方が、そのラウンドは優位に運んでいたという考え方だ。片方が多く攻撃しているということは、もう片方は攻撃をする機会を得られていないということだからだ。
ダメージという考えがある。より相手にダメージを与えたほうが勝つべきだという意見がある。ただそれはダウンなりをしなければわからない。殴った本人ですら、相手がどの程度効いているかはさほどわかっていないだろう。顔の傷で判断もできない。1Rに顔面がズタズタに切り裂かれたとしても、残りのラウンドで相手を漬けきって勝てば試合後には勝者が負けたような顔をしているだろう。だから基本的には手数で判断して構わないだろう。
だが、この手数の判断に差が出る。MMAはあらゆる攻撃が有効になる。パンチ、キック、膝、肘と打撃があり、その中でもパンチはボクシングで反則なオープン・ブローやバックハンド・ブローも許されているし、蹴りも回し蹴りから前蹴り、サイドキックとさらに細かく種類がある。グラウンドでも同様だ。あらゆる打撃が可能であり、ポイントとして加算される。加えて組みの攻防、テイクダウン、ポジションの奪い合い、サブミッションへのトライなどがある。あらゆる競技のあらゆる有効な攻撃を判断しなければならないため、その判定は困難を極める。どの攻撃がどの攻撃よりも優位なのかが判然としないからだ。
この難問をさらに難しくするのがジャッジのバックボーンだ。現状、MMA専属のジャッジはほぼいない。コミッションが派遣してくるのは、ボクシングやレスリング出身のジャッジが多い。彼らはコミッションから指導を受けているとはいえ、専門外の競技、それもあらゆるコンバット・スポーツの集合体を正確に採点をすることは難しいだろう。パンチのみのボクシングでさえ判定で物議を醸すのは日常的に起こっているのだ。
まだ問題は追加される。MMAではラウンド数が少なく通常3R、王座戦などで5Rだ。5Rとなれば当然互いが長期戦を想定することが多く、試合序盤は僅差になりやすいのだ。もし10R近くあるのならば、もう少し優劣がつくかもしれない(結局はラウンド数に合わせた組み立てになるから同じかもしれないが)。だから序盤でラウンドを取ったかどうかが大きく影響してくるのだ。
したがってこのシステムで判定勝利を目指すならば、誰が見ても一方的に攻撃しているところを見せ続け、全ラウンドを取るくらいでなければならない。そしてその方法を完成させて王座に君臨し続けたのが、今回ビッグリッグと戦ったジョルジュ・サンピエールなのだ。彼はフィニッシュを狙うリスクを避ける代わりに、全ラウンドを支配して判定で議論の余地がないほどに圧倒するという戦略を築き上げたのだ。安全運転と揶揄される一方で、生きた人間を相手にそれを遂行し続けるのがどれほどに難しいかは容易に想像できる。だからもしビッグリッグが判定を考えていたならば、対戦相手同様最後の最後まで攻め続ける必要があった。そしてそれは結果的に、フィニッシュを狙って攻撃し続けるのと同じ展開のはずだ。このラウンドは自分が取ったから次は少し休もうか、などとソロバンを弾いた時点でこの戦略は破綻するのだ。
王者を轢き潰した「ビッグ・リッグ」の力量と今後の課題
しかし上記の驕りさえなければ、「ビッグ・リッグ」は素晴らしい仕上がりだった。肉体的には肌ツヤがよく、スピード、パワー共に破格だった。マイク・ドルチェが側にいたが彼の指南によるものだろうか。よく練り込まれていたと思う。メンタルでもまったく気負っておらず、王者に対する恐れは微塵もなかった。グローブを合わせるシーンで笑みを浴びせかけるあたりはさすがの肝のでかさだ。
そして彼の最大の強みは、やはりレスリングで勝っていたことだ。彼が試合開始早々に打撃に合わせたタックルで転がされた時にはやはりいつもの展開かと思ったものの、際どいチョークを脱した後はほぼ完ぺきにタックルを封じた。その後何度か転がされたとはいえ、やはり全体的に勝ったのはヘンドリクスだ。またヘンドリクスも何度かTDし、一度はガードからいい肘を何度も当てていた。まさにGSPのお株を奪うような削りだった。
またクリンチの攻防で有効な攻撃が出来たのも大きいだろう。防戦一方どころか、ヘンドリクスが逆にクリンチを使ってGSPを削っていった。特に1Rの差し合いがGSPにはかなりの痛手となったと思う。ここでヘンドリクスはGSPとケージ中央で押し合い、そしてGSPのウィーク・ポイントである膝の上部に強烈な膝蹴りを何度も打ち込んだ。これは地味ながら極めて有効な攻撃だ。相手の足を壊すことは、長期戦で大きな意味を持ってくる。彼はその後も何度も膝の上を狙って蹴っていった。またGSPがタックルに固執して金網に押し付けた時も、GSPの側頭部にこれも重いエルボーを何度も振り落した。このエルボーは決して反則ではない上に、KOを狙うこともできる打撃の一つで、金網に押し付けてくる相手への対抗策として今使う選手が増えている。これも有効だった。また差し合いでのポジションの取り合いは明らかにヘンドリクス優位で、金網に押し付けられても軽々と位置を変えてGSPを押し付けて削っていた。ここも大きく試合を左右したポイントだろう。
クリンチでは離れ際の振り回すパンチも並外れた速さで、しかも相当な破壊力だった。GSPは決して目がそこまでいいわけではないし、この試合では右目を負傷して見えていなかった。そのために近接戦闘でヘンドリクスが用いたクリンチ・アッパーを被弾して倒れ込むなど、離れ際、組み際でもビッグ・リッグが優位に運んだ。自分が一番面白いと思ったのは、その怪力を利用しての引き寄せだ。相手の頭に右手をひっかけ、そのまま自分の懐に引き込んでから用意しておいた左拳を叩き込むのだ。これはレスリングの技術だろうか。組みと打撃を組み合わせた見事な技だ。ボクシングで反則なこの技は、チェール・ソネン曰く有効な方法だから反則とされたのだ。逃げようとするGSPが吸い込まれるように捕まり、そしてGSPは殴りつけられてしたたかに脳を揺らされた。
そして試合前からその威力で有名だった凶悪な拳は、この試合でもやはり有効に機能していただろう。リーチで劣るために飛び込みを読まれて回避されることが多かったが、それでも何度となくGSPの顔面に叩き込んでぐらつかせ、確実に脳を揺さぶって王者の自由を奪っていった。その飛び込みとハンドスピードの速さは相変わらずすさまじく、そして独特の飛び込み方に見える。普通に走り込んでいくかのようだ。
一方で彼の問題点も見えた。彼は常に攻め続けるタイプではなく、一気にラッシュをかけては休み、休んではまた攻めるという波のある戦い方だ。その休んだところでかなり被弾をしていたし、そこでラウンドを落とすように思った。たとえば2Rは猛烈に攻めた、夢中になるあまり自分のマウスピースを落とすほどに攻めたが、そこで自分が落したマウスピースのせいで試合が中断すると、彼はどっと疲れて一気に手が止まった。そこに脳が揺れて朦朧としたGSPが懸命にジャブ、右ストレート、前蹴り、ハイキックと繰り出していくとこれがクリーンヒットした。そのダメージなりスタミナのロスが3Rでの彼の失速へと繋がっている。3Rはリズムを取り戻したGSPがテンポよく蹴りを主体によく打撃を当て、最後にTDして削るもラウンドを落とす結果となった。4Rから5Rも同様だろう。やはり攻めた後に疲れ、そこで疲れたためにまた5Rを落とした。彼は余裕を残したように言ったが、実際は疲労とダメージがそれなりにあったのだろう。特にGSPのローやボディへの蹴りを序盤からかなり嫌がっていた。スタミナが削られていたと私は見ている。
彼はこの組み立てのために危うさを見せる。先のコンディット戦でも、この攻め疲れを狙われてじわじわと追い上げらるシーンがあった。もし狙われるとしたらここだ。彼は5RでGSP渾身の右ストレートを受けて効いたのだろう、そのままタックルで転がされて上を取られている。やはり彼は攻めなかったのではなく、かなり疲れていたためにKOを狙うほどにガスが残っていなかったと言うのが正しいところではないかと思っている。
またスタンドにおいては素晴らしいスピードと破壊力だが、やはりリーチに劣ることと、ディフェンス、特に蹴りに対する対処がいまいちのように思う。今回はGSPが蹴りを有効に使ってかなり抵抗した。強烈なハイキックを2度被弾し、前蹴りを細かく貰い、接近戦でミドルをどてっぱらに受けている。ローで足が流れたり、蹴られた後にスイッチをするシーンがあった。ボディとローはかなり嫌そうに見えたし、蹴られた後に離れて首を振っていたが効いていたのだろう。彼が笑ったり首を振ったりするときはまず効いていると考えていいだろう。顎は頑丈なのだろうが、案外この辺りに突破口があるかもしれない。もちろんビッグ・リッグはやられっぱなしではなく、蹴り返したり蹴りを狙ってパンチを打ち込んだりしていたが、被弾はやはり多かっただろう。
またジャブの被弾も多かった。これはヘンドリクスがというよりも、GSPを褒めるべきことだろう。これを2Rあたりから頻繁に貰いすぎたのはかなり判定に響いている。遠目から素早く放つGSPのジャブが何度もヘンドリクスの顔面を弾いた。ヘンドリクスがタフなことと、GSPのパンチがあまり強打の質ではないためにダメージこそさほどではないだろうが、判定を考えるならばこの被弾が痛手であることは確実だ。現に、シグニフィカント・ストライキングでは負けているのだ。
以上のことを踏まえて、2、4Rはジョニー・ヘンドリクスが間違いなく取っただろう。5Rは確実に落としている。判断に迷うのが1、3Rで、3Rは終盤のTDをどれほど評価するか次第だろう。ただこのラウンドはGSPがかなりテンポよく打撃を当てていたので自分はGSPが取ったと思う。そしてネックとなったのがやはり1R、差が付きにくい最初のラウンドだ。GSPは一番初めのTDとサブミッション・トライ、そしてハイキックが有効な攻撃だった。しかし彼はクリンチで劣勢になり、この時はまだジャブがさほど当たっていなかった。クリンチで優位に運び、有効打を多く打ち込んだのはヘンドリクスだ。ただ彼のパンチもさほど当たっていない。際どいが、私はヘンドリクスがより優位だったと考えてヘンドリクス勝利と思った。そしてジャッジは、ここをGSPが取ったと考えたのだ。自分はクリンチでGSPが攻めあぐねているのが強く印象に残ったし、ここでの攻防がその後のGSPにマイナスに作用したと思っている。しかしただお互いがやったことを並べれば、TD1とサブミッション・トライは大きい要素だろう。MMAの判定システムでこういう結果になることは、もはや今更の感がある。
失敗して得た、真の王者たる資格
デイナ・ホワイトは試合後に、ここにヘンドリクスが勝ったと思わなかった奴がいるのかと言った。GSPは己のダメージを自嘲的に語り、トラックのように殴りつけられたよ、傷ついた、自分の顔を見てくれと悲しげに微笑んだ。そして怒れるトラックは、自分は明確に勝ったという言葉を排気した。デイナは、どちらがよりダメージを与えるかを競う競技だと言った。だがそれは間違っている。完全決着を目指してダメージを与えあい、そしてもし時間内に決着がつかなかったら、各ラウンドごとにどちらがよりダメージを与えていたと「思うか」を第三者に判断してもらい、そしてその勝ち取ったラウンド数で勝者を決める競技だ。大事なのは、各ラウンドは独立して判断され、そのダメージの多寡は考慮に入れられないことだ。ジャブ一発多いために勝ったラウンドも、ダウンこそないものの100発以上多く殴って勝ったラウンドも、まったく同じ1ラウンドなのだ。
だからゲームとしてGSPが勝つことはあり得ることだ。それをデイナも、大型トラックも、向こうのメディアも見落としているのはよくわからない。皮肉なことに、この解決策の一つをトラックに轢かれながらもベルトを守った男が提示している。それはラウンドを廃止することだ。もしラウンドはなし、判定になった時に全試合を通してどちらが有利だったかを判断をするルールだったならば、トラックが荷台に金色のアクセサリーを載せて愛娘の元に揚々と引き揚げていただろう。このシステムを完全に把握して勝ってきた男が、この判定方法に対する矛盾を誰よりも知っていたのだ。そしてその矛盾を知る男は、皮一枚のところでこのシステムに救われたのもまた皮肉なものだ。今一番屈辱を感じているのはベルトを逃したトラックではなく、傷つきながらベルトを持ち帰った男だろうと思う。
試合自体は面白く、そしてとても貴重なものが見られた。「ビッグ・リッグ」の戦前の評価に偽りはなく、彼の左拳には本物の力が宿っていた。輝かしい経歴を誇る彼のレスリング能力もこの試合では王者を凌駕した。多くのダメージを与えたのも彼だろう。ただ、彼は仕留めきれなかったし、ラウンドをすべて取ることもできなかった。そしてジャッジに判定を、MMA専属ではないジャッジに勝ったかどうかを委ねてしまったのだ。デイナ・ホワイトは常々言っている、「ジャッジに判定を委ねるな」と。これはそのほうが興行的にプラスだからというだけではない、他ならぬ選手自身のためでもあるのだ。うさぎは時計を眺め、そして自分が勝ったことにほくそ笑んでいたに違いない、残り1分、己の腕に組み付き、歯を食いしばりながら捻りあげようと足掻く戦士の懐の中で。その傲慢さの報いはあまりにも大きい。彼は勝手に勝ちを確信し、そして大衆の前で哀れなピエロに祭り上げられた。相手を亀だと思ったのなら勘違いも甚だしい。彼が思うほどに対戦相手の足は遅くなどなかったし、眠り込めるほどの差などありはしなかったのだから。
「うさぎと亀」の教訓はもう一つある。うさぎが一度懲りて手を抜かなくなれば、圧倒的ということだ。彼が本当にこれを教訓とするならば、それは恐らくベルト以上に価値のあるものだろう。この経験無くして王者になっても、彼はいずれ同じ負け方をする可能性があったからだ。少なくとも、彼はもう二度と判定を当てにすることはないだろう。
そして願わくは、次は全力でノックアウトに行ってほしいと思う。二度と全力で倒しに行ってはいなかったのだなどと言うべきではないし、本当に70%だったのならば負けて当然だろう。どのみち相手を舐めているし、何よりもひどい侮辱だからだ。GSPに対してだけではない、ファンに対して、競技に対して、そして練習してきた自分自身に対してだ。こういう発言をしてしまうメンタリティを見る限り、もしかしたらこの結末は必然だったのかもしれない。王者になるために必要な資格が、これで「ビッグ・リッグ」に積み込まれたことを期待したい。
傷ついてなお前に出続けた王者の「ラッシュ」
血に塗れた顔から虚ろな影をちらつかせた瞳がのぞく。苦悶に耐えて目を細めているのか、それとも殴られて腫れているのかは判然としない。もしかしたら両方かもしれない。最終ラウンド、大きなダメージを負っているのは間違いなく王者の方だった。彼の目からは表情が読み取れない。目を大きく見開き、コロコロと表情を変える挑戦者にはっきりと意志や感情が読み取れるのに対して、王者はもはやAIで動くロボットのように感じられた。彼の心はすでにケージを出て、カナダに帰っていたのかもしれない。しかし残された肉体はケージの中で止まることはなかった。これまで6年以上に渡り防衛を続けた戦いの記憶が、彼の肉体に最適の行動を取らせていた。
彼は最後の最後まで前に出続け、戦い続けた。「ラッシュ」ジョルジュ・サンピエールは、ブザーが鳴るその瞬間まで勝利を諦めなかった。それはもはや王者の姿ではなかったかもしれない。だが世界で最高の闘士の姿だった。
私は絶対王者というのが好きではなかった。大概の場合は挑戦者の肩を持っていた。防衛よりも、奪う展開のほうがワクワクするからだ。特に防衛期間が長ければ長いほど、王者陥落による興奮は大きくなる。かつてアンデウソン・シウバが左フックで崩れ落ちた瞬間、私は動物園のサルのほうがまだ上品だろうという振る舞いに及んだ。だから今回も、さぞかし浮かれるだろうと思っていた。
だが私は哀しかった。朦朧としながらもなお懸命に前に出て、わずかな可能性を探りながら諦めずに戦い続ける王者の姿は悲壮だった。5Rに彼が右ストレートを打ち込んでタックルで転がし、さらには起き上がったトラックをもう一度横転させたときにも、彼の勝利が近づいたとは思わなかった。私にラウンド・マストのシステムを忘れさせるほどに、王者は傷ついていたからだ。
だからバッファーのコールと共にGSPの腕が上げられた時、判定がどうのと思うより先に、ああ良かった、GSPが勝ってくれたのだと不思議な安堵を感じた。それが自分の正直な感想だ。判定結果は妙だなと思ったし、落ち込むヘンドリクスが気の毒だなとも思った。ただそれ以上に、あの悲壮な戦士が報われたのだということを嬉しく思った。理由はわからないが、私は彼に勝たせてやりたかったのだ。それがどんな形であれ、だ。
その姿には見覚えがあった。つい先日UFCのヘビー級王座を争って王者ケイン・ヴェラスケスと戦った挑戦者、「シガーノ」ジュニオール・ドス・サントスだ。彼もまた意識を半ば失いながら立ち続け、そして己のDNAに刻み込まれた記憶だけで最終ラウンドまで戦った。あの姿はMMAというスポーツに命を捧げたファイターが、傷つき曖昧になった世界の中でなお勝利を追い求めている様なのだ。その姿はあまりにも格闘技中毒の私の胸を打つ。その姿を見ると、どうしても勝たせてやりたくなってしまうのだ。シガーノのときには相手があの獣の王だったために、最後の最後まで前に出続け殴り続けた王者によってとうとうシガーノは力尽きた。だが今回のGSPの対戦相手は明らかに驕りがあった、慢心があった、そして彼は最後まで攻撃し続けなかった。そのために、ひたすらに攻め続けたGSPは最終ラウンドに盛り返したのだ。傷つきながらも最後の最後まで攻め続けた彼は、ダメージがあって劣勢なはずの最終ラウンドを文句なく勝ち取ったのだ。
一度は外れたかに見えた王者のベルトは再び留められた。それは今にも外れそうに緩いものだ。そして彼の腰に巻かれているのは本当は間違っているのだろう。それでもかまわない。彼にはもしかしたら、もう一度チャンスが与えられたのかもしれないのだから。
防がれたタックル、崩壊する王者の黄金パターン
GSPの戦い方はパンチ、蹴り、タックルを織り交ぜて相手のディフェンスを迷わせ、スタンドでもグラウンドでも圧倒的な手数で削っていき、そしてすべてのラウンドを勝ち取るというものだ。その要となるのがタックルだ。相手の打撃に合わせた抜群のタイミングのタックルは、これまでどの選手も翻弄され続けてきた。皆がこのタックルを食い止めようとしてきたが、全ては失敗してきた。だからこのタックルを止められるかどうかが大きなポイントとなっていた。
果たして、GSPのタックルは止められた。こんなシーンがいつか来るだろうとは思っていたが、それでも目の当たりにすると衝撃だ。最初のタックルと、最後のラウンドでの打撃からのタックルのみがこれまでの彼らしいTDだった。それ以外は全て防がれている。そしてタックルのプレッシャーが無くなった時、彼は純粋なスタンドのみで勝負しなければならなくなる。そうなった場合、GSPの打撃はそこまで優位に展開することは出来ない。彼の戦略は大幅な見直しを迫られることになったのだ。
一番失策だったのは、1Rに組み合いで意地になったことだ。冷静な彼らしからぬ行動だった。自分の戦略が通用しない現実を認めたくなかったのかもしれない。自分の一番の武器の一つであるレスリングを捨てることに未練があったのかもしれない。だがここは素早く見切るべきだった。相手はあの巨大トラックだ。まともに押し合ったらスタミナを大きくロスしてしまう。自分の方が優位に削れるならまだしも、より有効な攻撃を当てていたのは相手の方だ。ビッグ・リッグはGSPの古傷がある膝の上を真正面から何度も膝で蹴り飛ばした。打撃のプレッシャーが効かないままに焦って無理なタックルを狙ったために、側頭部にエルボーを何発も貰い、いたずらにガスを消費した。この疲労が2Rの被弾にもつながっているだろう。
タックルのディフェンスは優れていたが、打撃で効かされていたのとフィジカル差のために押し込まれてからTDされてしまった。幸いヘンドリクスは打撃からの連携をしたりはしなかったので対処はしやすかったと思う。フェイントに使われたために打撃は多少やりにくかっただろう。これまで自分の使ったプレッシャーをそのまま返された形だ。それでもTDはほぼ最小限に食い止めたと言える。
クリンチと接近戦はやはりGSPには最悪の場所だった。相手の方がフィジカルでも技術でも優れていた上に、ヘンドリクスはここで勝負を決める武器を持っていた。頭を抱え込んでの打撃だ。2R、4Rともにこの打撃で一気に不利になっている。特に4Rのクリンチアッパーはかなり強烈で、そのままGSPはバランスを崩してマットに倒れ込み、上になったヘンドリクスから肘やパウンドで大きなダメージを負わされた。KOを防ごうとハイガードを選択して頭を下げ、相手の打撃を見ていないケースが散見されたGSPは、このクリンチ打撃と相性が最悪だった。ガードの隙間から拳が飛んでくる上に、後ろに下がろうにもがっちりと首根っこを押さえられて下がれないのだ。差し合いでも金網際で軽々と体を持ち上げられ、何度も体勢を入れ替えられてもいた。元々GSPはさほどクリンチに行くタイプではない。この場所を避けることが、GSPにとっては必要だったように思った。
またパンチのディフェンスもさほどよくはない。彼もまた長いリーチによって回避をしていたタイプだと思う。接近戦では相手の攻撃を見ていないことが多かった。もっとも、それは目を負傷したことも影響しているだろう。苦しくなってからハイガードを多用したが、このガードはMMAでは機能しにくい。何度もガードを抜かれてフックやアッパー、ストレートを被弾した。脳が揺れて判断力が鈍って死に物狂いだったためだろうが、これがさらにダメージを大きくしたことは間違いないと思っている。
逆に良かった点は彼の蹴りだ。空手仕込みの蹴りこそが、この試合で一番機能していた武器だろう。右ハイ、ロー、前蹴り、ミドルとどれも素晴らしかったし、威力もそれなりにあったように思う。2Rはセコンド前の水溜りで足を滑らせて膝をがくつかせてから畳みかけられて劣勢になるものの、その後でリズムを取り戻して2R終わりくらいはGSPが優位に運んでいた。続く3Rはリズムが出て蹴りとパンチがよく当たっていた。手数を稼ぎつつ削る優れた武器だ。ボディとローはヘンドリクスも嫌がっていたように思った。
次にジャブも優れていた。相変わらずよく伸びる左で、彼はヘンドリクスの右足の外に回り込みつつ被せるように何度もジャブを打ち込んでいった。そのヒット数はかなりのものだ。もちろん倒せるような威力はないが、それでも途中でヘンドリクスを失速させるのに一役買っていただろう。
また右ストレートと、最終ラウンドに見せたワンツーもよかっただろう。あれをもっと序盤から当てていければもう少し展開は違ったかもしれない。最終ラウンドにワンツーを受けた後ヘンドリクスがニッと笑ったが、さらにそこに追撃しての右ストレートによって彼は続くタックルを成功させた。これは威力もあったように思う。
単純なスタンドだけならGSPは一撃がないだけで、決して劣っていないどころか若干GSPが有利ではなかっただろうか。そうでなければ、ヘンドリクスはもっと容易くKOできているはずだからだ。フットワークもよく、窮地でも軽くステップを踏んでリズムを作ろうとしていたのはかなり良かっただろう。GSPは打撃の数自体は相当数当てている。そして蹴りには威力があった。ヘンドリクスは少なからず削られていたはずだし、そこまで思うほどに打撃戦を優位に展開したわけではないだろう。後半のヘンドリクスの失速と合わせて、どんなに劣勢でもコツコツと打ち続けたGSPの打撃は見た目以上に試合に影響していたと思う。
フィジカルでは、スタミナにおいてはGSPが優れていただろう。あれだけ殴られて組み合いで押されていながら、5Rに自分から前に出て攻めるのみならず、優位に運んで2度TDを取り、良い打撃を当ててラウンドをもぎ取るのは凄まじい運動量だ。これは絶賛されてしかるべきだろう。ただやはりパワーではだいぶ劣っており、特にクリンチでの差は顕著だった。
ラウンドに関しては上記の通りだ。私はGSPが負けたと思った。そして彼のこんな姿は見たくもあったし、見たくなかったところもある。やはりGSPが負けていた試合だったとは思うが、ラウンド・マストではあり得ることだ。このシステムを熟知し、長い年月をかけてこのシステムを骨身に浸透させた王者が、判定勝負になった時に必要なことをきちんとやっていた結果とも言えるだろう。これも経験の差というべきものだ。このシステムでは、フィニッシュされたりダウンを奪われない限りは、最後まで動き続けて攻撃し続けるマラソンタイプが判定では強いのだ。努力は人を裏切らない。少なくとも、そしてどれだけ批判があろうとも、彼が練り上げつづけた戦略と技術はその分だけ彼に答えてくれた。
そして霧に覆われた意識の中で、彼がもっとも有効に使ったのは先にも述べたように蹴りだった。いじめられっ子だった彼を救った空手の精神が、絶望の淵でたたずむ彼を突き動かして攻撃を繰り出させたのかもしれない。彼は空手によって苦難に立ち向かう勇気を得た、そして窮地で立ち向かう勇気を持って空手で戦い抜いたのだ。彼の愚直なまでの空手を用いた攻撃が、圧倒的不利という瓦を打ち砕いて奇跡的な勝利を招いたのだ。それがシステムの欠陥によるものだったとしても、そういうルールである以上勝ちは勝ちだ。そして彼が諦めていれば、この勝利は絶対になかったのだ。GSPは己を誇っていいだろう。何も恥じることなどありはしない。この空手家は最後まで苦難に立ち向かって、決して屈しなかったのだ。
もし再戦するとして、GSPが取るべき戦略は徹底して距離を取ってスタンドで戦うことだろう。序盤は絶対にTDを狙わず、クリンチからは死に物狂いで逃げ、そして遠目からコツコツと蹴りやジャブで削っていくべきだ。削って削ってKOパンチを必死で防御し、そしてヘンドリクスが焦れたあたりでTDを仕掛ければ成功するだろう。接近戦では肘を振り回してもいいかもしれない。そして突き放せばまた削りだ。単純な間合いならGSPに分がある。蹴りという武器もある。そしてTD防御ならばコンディットより遥かに上だ。このやり方で3Rまで行ければ、GSPにも勝機は十分だ。スタミナではGSPが勝っているのだ。クリンチで無駄な消耗をしなければ、今回よりも打撃戦をスムーズに展開できるだろう。とにかくクリンチ、特に吸い込むような彼の右手による頭のロックだけは外さなければいけないと思う。
傷ついた王者と、ウェルター級のベルトの行方
王者は試合後のインタビューで少し休みたいと言い、そしてファンに今までありがとうと言った。まるで引退するかのようだった。ポストファイト・カンファレンスでも明らかに敗北を受け入れた発言をした。彼はかなり感情的になっていることを認めたが、それくらいに彼はこの戦いで身も心も傷つきすぎたのかもしれない。ベルトを持つと言うことは、常に狙われるということだ。彼は試合前に言った、挑戦者はどんどん強くなるのだと。UFCのシステムでは絶対に楽は出来ない。勝ち上がった連中が次々と自分の前に立ちはだかる。そして試合を重ねるごとに彼の戦い方は研究され、対策が立てられていくのだ。彼はもう6年以上それを続けてきた。その合間にはアスリートして致命的な怪我もあり、それを克服して彼はここまで戦ってきたのだ。心身ともにすり減り切っていてもおかしくはないのだ。
もちろんこれからどうなるかはわからない。GSPは試合での記憶がところどころ途切れ、相当に脳を揺さぶられたことも試合後に認めている。今の彼に冷静な判断はできないだろう。今は外野がとやかく言うべきではない。彼の傷が癒え、落ち着いてから決断を聞くべきだ。執拗に引退するかどうかの言質を取ろうとする記者をデイナが遮ると、会見場は沈痛な空気が流れた。傷だらけの顔で懸命に笑顔を作ろうと足掻くGSPを、横にいるラシャド・エヴァンスがひどく悲しげに見つめていた。こんなに悲しい試合後会見は初めてだった。
今は何も聞かないでやってほしいと思う。戦士は全てを出し尽くし、そして誰よりも傷ついている。私は信じている、彼はまだ偉業を成し遂げたと思ってはいないはずだと。一方的にやられたままで、黙って引退するような男ではないということを。彼はきっとこの戦場に帰ってくる。そして今度こそ、完全な決着をつけてくれるだろう。だが今はそっとしておこう。死地を潜り抜け傷ついた王者には、絶対に休息が必要なのだから。
はじめまして。
返信削除いつも楽しく拝見しています。
エディさんのMMAに関する知識の豊富さ、緻密な分析力、読み手をひきつける文章力にいつも関心しきりです。
今回のタイトルマッチは画面越しに
会場のヒリヒリ感が伝わってきました
新たなチャンピオンを望む者、GSP勝利を信じて疑わない者の想いが伝わってきました。
その想いはラウンドを重ね、GSPがボロボロなるにつれ
新チャンピオン誕生への高揚とGSPの
王者陥落という絶望、その両方が
歓声となって会場全体が異様な雰囲気になっているのが印象的でした。
試合内容はGSP本人も観てる側も感じたようにGSP敗戦だったように思えます。しかし、最後に勝敗を分けたのは
MMAを熟知しつくし、自分にできる最善を尽くしたことが絶望とも思える防衛を成功させたんだと思いました。
きっとその崇高なる精神にジャッジも心打たれたのでしょうw
ともあれ僕もGSP勝利にホッとしましたwww
長くなってしまいましたが
これからも楽しみに読ませていただきます。拙文失礼しました。
なんでしょうね、あのGSPの放っておけない感w男ですが母性本能がくすぐられました。本当に最後までよく戦ったと思います。
削除自分もジョニヘンの勝利に一票です 1R、2R、4Rはジョニヘンかと
返信削除応援いていたのはGSPですけど
試合前の予想ではGSP断然有利としていたので大外れですw
GSPの戦術は良かったと思います
ワンパターンに陥ることなく色々やれていたと思います
ただ、予想以上にジョニヘンのパワーが上回っていたのと、思い切りの良さで押されましたね
クリンチからの膝や手打ちのパンチでさえ威力有りそうでした
自分が一つGSPに変えて欲しかったのは左のローは機能して無かったので
左のローを途中でやめる事でした
2Rでビッグヒットもらった時も左ローに対するカウンターから入ってます
左ローは確実にカウンター狙われてました
再戦があるとすれば今回で彼我のパワー差、破壊力の差がはっきりしたので
とにかくジョニヘンが元気な中盤まではクリンチやグラウンドの展開を避ける方向で遠間からのパンチと蹴りでスタミナを削るべきでしょう
パワー型の選手は後半バテてきますからそれまでは多少見栄えが悪くとも
必死で強打を避けながら距離を保つしか無さそうです
それはそうとジョニヘンがGSPのタックルの入りに対して決め打ち的に
膝を打っていたのは思い切りが良くて素晴らしいと思いました(アッパーも一発出しましたね)
仮にヒットしなくても相手はタックルを出しにくくなると思います
また個人的には膝より脛のほうが当たりやすいので脛を相手の頭部に当てる感覚で出すのが良いかと考えました
ベラスケス戦のサントスも博打で良いのでタイミングを合わせてどんどん膝を出して欲しかったです
ちなみに5Rジョニヘンが前に出れなかったのは
勝ちを確信して流していたのではなく、ただのガス欠かと思われます
予想は外れたほうが楽しい派としては、今回の試合は中々でしたwもう少しGSPのタックルが決まるかと思いましたが、ヘンドリクスのTD防御が上回りましたね。
削除蹴りによくパンチ被せられてたのは気づきましたが、左のローでしたか。後でWOWOWオンデマンドでじっくり見直します。全体的にヘンドリクスはよく見てましたよね。GSPの打撃が軽いせいか全然恐れてなかった感じです。
タックルへのカウンターの膝は3度くらいやってましたが、そのうち2度はいい当たりでしたね。GSPが途中でタックルを放棄した主因の一つだと思います。もう少しGSPが勢いよく突っ込んでたらダウンしたかもしれませんね。すぐに立てない選手だと五味グイダ戦のように不味いことになりますが、シガーノやヘンドリクスのように寝かされてもすぐに立てるかTD防御が出来る自信があれば、バンバン出してくと有利に運べそうです。サントスはこの膝を身に着ける価値は絶対にあります。
5Rに関しては、流したのとガス欠両方だろうと思ってます。ガス欠はたぶん間違いないです。ガス欠だし、間違いなく勝ってるからそこまで行かなくてもいいかなと考えてたような感じがします。ガス欠だけど、最後まで仕留めきろうと思わなかったのが最悪だったのだと思います。コーミエも似てますが、やはりアマチュア的ですよね。レスリングみたいにはっきりとポイントが出るわけではない競技なので、あのソロバン勘定は結構危うい要素になっていると思います。
最終ラウンドの終盤に無理を承知でジョニヘンの腕を極めにいった事からもGSP自身が判定では負けると感じていたのでは無いでしょうか。
返信削除判定となった時点で、当時者同士の決着はついていたように感じました。
その結果を第3者であるジャッジが歪めてしまうのは双方にとって不幸な事だと思います。
ファイターおよび観客の9割以上がジョニヘンが勝ったと思ったのに、どうしてジャッジの見解だけ異なるのかという疑問はありますが
これを改善するにはオープンスコアリングシステムを導入し、ジャッジとの認識のズレを試合中に自覚する事しか無さそうです。
ただ、あれって観てる方は割と興ざめするんですよね。
リードしてる選手が最終ラウンドで露骨に逃げたりして、試合内容にも影響するし。
とはいえタイトルマッチの好勝負が後味の悪いものになるのは見過ごせないので、5ラウンドマッチの3ラウンド終了時点のみ
スコアを公開するといった事を行えば、試合内容を損ねる事無くフェアな勝敗をつける事に近付けるのではと考えています。
今回のジョニヘンも3ラウンド終了時点で負けてると分かれば、残り2ラウンドをヒゲを逆立てながら奮闘したのでは無いでしょうか。
スコアで勝っていると確信すれば、逃げ回るのも仕方ないところはありますね。誰でもリスクを減らして確実に勝つことを考えるのは当然ですので。たぶん自分が選手だとしても、相手が一発があるタイプだと逃げ回る気がしますw
削除オープンスコアリングは良し悪しですが、たとえ相手が逃げたとしてももう片方が奮起するのであればそんなに悪くはないような気がしますね。もしこの試合でヘンドリクスが3Rまでで負けてると知ったら、確かに4R髭を逆立てて「逆さ絵?」みたいな感じで襲い掛かってた気がします。客としてもそこまでのスコアは納得できなかったとしても、最後の最後に「はぁ?」ってなるよりはまだマシな感じです。
デメリットとしてはやっぱり興ざめというのが大きそうですね。なんかワクワク感を損なう感じはあります。試しに何回か導入して実験して欲しいですね。
自分はGSPだと思いました
返信削除他の方のブログでも書きましたがドラえもんの最終回ののび太vsジャイアンで明らかなように
喧嘩においても勝敗はダメージでなく最後まで気持ちが折れないものが勝者です
ただ再戦は義務だと思います
「生業の仕事」ならば十分に稼いだので体が壊れる前に引退するというのが正しい選択でしょうが
自分は「貴族の義務」かと
懐かしいですねwあの話は泣けました。今よんでも多分泣いちゃいます。F先生は本当に素晴らしい漫画家でした。
削除いや、ドラえもんはどうでもいいんです。自分は数値化できるもので試合を判断したいのと、理不尽だろうがルールで決まってればOKという極めてゲーム的なものを好むタイプですので、GSP勝ちでもいいかなって思います。
ノブレス・オブリージュですか、なるほど。ベルトを持つ者の責任、というところでしょうか。ある意味では彼が再戦して完全に決着をつける、ということはMMAに対する最大の貢献になるでしょう。9連続防衛という記録は、このままベルトを返して引退していいほどの軽さではないかもしれません。
ただ、私にはそこまでを要求するのは酷かなと思うところもあります。彼はMMAの発展と普及に己の命を削ってもう十分に貢献したとも思うからです。
でも大丈夫です。私は彼のMMAへの愛情が彼に引退を許さないだろうと思っています。貴族の義務以前に、彼は「戦士の矜持」で自ら望んで再戦を選ぶはずです、きっと。
今回も執筆お疲れ様です。楽しく読ませていただきました。
返信削除僕もヘンドリクスの勝ちだと思いましたが、スプリットで負ける可能性なら、さもありなんといった印象でした。
ジャッジの問題は随時改善するのでしょうが、マストラウンドシステムなら10-8以下も積極的につけるのがいいかと思います。(ドローの可能性も生じてしまいますが)
試合内容に関しては、改めてMMAにおけるフィジカルの重要性を感じました。
フィジカルで追随を許したからこその接戦だと思います。
実はUFCは10ポイント・マストなんですが、10-10はつけてもよいのです。勝った方が10、負けたほうが9以下、イーブンなら10-10です。http://www.ufc.com/discover/sport/rules-and-regulations#14ここに明記してあります。
削除ただ、実際は皆ほとんどつけません。可能な限り差をつけるようにしています。本当はもっとつけてもいいと思いますし、海外の記者もそれに対して不満を口にしていたことがあります。
10-10をもっとつけるのと同時に、もっと9以下のスコアを積極的につければ差がはっきりするかもしれませんね。何もボクシングの猿真似をする義務はないわけですから、MMA独自の採点があってもいいと思います。
ヘンドリクスはバネ、スピード、パワー、GSPはスタミナに秀でていましたね。ヘンドリクスの力の強さとスピードには本当に驚きました。GSPを無理やり引き寄せる動きとか熊みたいでしたね。対するGSPは本当に恐ろしいスタミナです。今MMAが12Rになっても最後まで戦い抜けそうでした。前もどこかのコメント欄で書きましたが、現在のMMAでは絶対に技術よりもまずフィジカルが最優先だと思います。特にスタミナと体操選手のような身体のキレ、調整力、スピードが必要ではないかと考えています。二人とも化け物です。
2,4のヘンドリクス3,5のGSPは異論がない所かと思います。
返信削除僕は1は強いて言えばGSPだと思いました。
しかしマストじゃなければ間違いなくドローをつけてたでしょう。
その1ポイント差と2,4,5、の1ポイント差が等価値じゃないのは明らかです。
上のコメント同様もっと積極的に10-8やあるいは10-7を認めるかマストをなくすか、じゃないとこれからも「勝負に勝って試合に負けた」が後を絶たない気がしますね。
ある意味では勝負に負けても試合に勝てるわけで、ちょっと面白い要素ではありますよね。ゲーム的には面白いですが、見てる方はストレスが溜まりますw
削除上にも書きましたが、本当は10-10つけていいんです。でも実際はまずつけません。一応10ポイントマストなので、なるべく差をつけるようにしてるからです。ここがネックですね。
なのでもっと点に差をつける、イーブンもつける、さらにはドローになったら2ラウンドくらいまで延長するようにすればいいかもしれません。TUFの延長ラウンドとか結構面白いですし、あれそのまま転用して欲しい気がします。それかラウンド数を増やして、ラウンドごとの時間を短くするというのでももうちょっとマシになるような気がします。