2013年1月29日火曜日

UFC on FOX 6 感想と分析 part2

残りの試合に関する感想です。
以下はあくまで個人的な意見ですので参考程度にどうぞ。
Part1はこちら

WIN アンソニー・ペティス VS ドナルド・セラーニ
(ミドルキックによるTKO)

打撃では全局面でペティスのほうが優勢だった。セラーニは
パンチディフェンスとフットワークに問題があると思う。
序盤足を使ったセラーニを見てディフェンスが改善されたかと
思ったが、試合が白熱するにつれて足が止まり被弾することが
増えたように思う。やはり熱くなってから作戦を忘れて打ち合って
しまうところはカウボーイの最もダメなところだろう。劣勢と見たなら
TDに切り替えても良かったかもしれない。

対するペティスはセラーニの顔面にパンチを集め、
KOを意識させたところでパンチフェイントからのミドルキック一閃。
狙い澄ましたKOだった。ローゾン戦の時もパンチを布石にしての
左ハイだった。素晴らしいセンスだと思う。
また試合途中で見せた、相手に金網を背負わせてからの
金網蹴りジャンプ→膝蹴りという信じられないコンビネーション。
壁を蹴った足でそのまま膝を打ち込んでいた。どういう
ボディバランスをしているのだろうか。ただの見掛け倒しでなく、
的確にセラーニの顎をヒットして明らかに効いていた。
壁際でのまったく新しい展開だ。これを見れただけでも
この試合の意味はあったと思う。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Anthony Pettis (L) kicks Donald Cerrone (R) during their Lightweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)
セラーニのわき腹を叩き折るようなミドルキック!

これで文句なしにペティスはタイトル挑戦権を獲得した。
例え相手がメレンデスだろうとヘンダーソンだろうと、この男は
間違いなく最高の試合をしてくれるだろう。何よりこの男、この
強さでまだ若い。タイトルマッチのショータイムが楽しみだ。

WIN グローバー・ティシェイラ VS クイントン・ジャクソン
(ユナニマス・デシジョンによる判定勝利)

つまらない試合になるかと思いきや、予想以上に面白かった。
ティシェイラの序盤のボディブローで明らかにジャクソンの
動きがおかしくなる。シェイプに不安のあるジャクソンには
これほど効果的な攻撃はないだろう。距離の取り方もうまく、
クリンチでの攻防もよく見てきちんとディフェンスしていた。
ボクシングでもジャクソンより優位に運び、ジャブでは圧倒的に
ジャクソンよりも冴えていた。ジャクソンはこれで中に入れずに
攻めあぐねていた。またブーイングされてはいたが、時折
まぜるタックルのタイミングも抜群で、ジャクソンのスタミナは
大きく削られることになった。すこしスピードとスタミナに不安があり、
5Rマッチだとスタミナ不足を露呈しそうな予感はするが
上位と戦うには十分な実力だろう。惜しむらくは年齢が
もう33歳と少し厳しいことだ。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Glover Teixeira (L) punches Rampage Jackson (R) during their Light Heavyweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

ジャクソンはシェイプがよくないとはいえ、打ち合いでの勝つための
コツみたいなものを本当によく知ってると感じた。攻撃するべき
ポイントみたいなものを体で理解してるのだろう。相手が出てくる
瞬間、組際などにKO必至のパンチを打ち込んでくるのはさすがと
言わざるを得ない。だが、ボディを打たれ、攻撃を散らされると
自慢のボクシングがあっさり瓦解。さらにジャブで懐に入れて
もらえず、曲線軌道のパンチが多いジャクソンはパンチが
空を切ることが非常に多かった。試合全体を見れば一方的な
ものだったし、3Rではグロッキーですっかり動きが止まっていたが、
それでも意地はしっかりと見せた。よく戦ったほうだろう。

試合後にMMA引退を撤回するような素振りだったが、これ以上
強くなるためにはフィジカルトレーニングとレスリングが必須に
なってくる。膝も故障しているし、テストステロン補充もしている
ジャクソンには、残念ながらもうトップコンテンダーになれる
ポテンシャルはないだろう。これ以上晩節を汚さないためにも、
すっぱり引退するほうがいいような気がする。

WIN クレイ・グイダ VS 日沖 発
(スプリット・デシジョンによる判定勝利)

思わずテレビに三角飛びハイキックが
炸裂するところだった。

納得がいかない。日沖にポイントつけたジャッジになら
抱かれてもいい。

序盤、日沖は距離を取ってシャープな打撃を打ち込んでいく。
パンチではどう見ても日沖が圧倒的に優勢だった。
特にボディブローが素晴らしかった。グイダのヘッドバンキングが
一瞬ウッ!っとなって止まっていた。あれは相当効いたはずだ。

日沖は明らかにUFCをよく研究し、打撃技術が向上している。
ボディブローをコンビネーションで打ち込むあたりは最近の
トレンドもよく理解してると言うべきだろう。
距離を取ってフットワークを使って打ちに行くように
なっていたのは彼の研鑽の証だ。時折まぜる前蹴りも
距離をとりつつ削れる素晴らしい武器だった。
手数も前回よりずっと多い。自分はこの調子でスタンドを
続ければ日沖が勝てるとかなり興奮していた。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Hatsu Hioki (R) kicks Clay Guida (L) during their Featherweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

ネックになったのがTDディフェンスだ。組みは決して弱くないし、
クリンチからの投げには定評がある日沖だが、グイダの高速
低空タックルには対処できていなかった。あれだけのクリーン・
テイクダウンは印象が悪いのは間違いない。3Rで見せた
リフトアップしてからのスラムは文句なしにグイダの有効な
攻撃だった。あの体で日沖を担ぐパワーは凄まじい。
ラマス戦でも日沖は担がれてスラムをされていたが、
恐らくグイダは研究してきたのだろう。日沖は少し
重心が高すぎるのかもしれない。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Clay Guida (L) dumps Hatsu Hioki (R) during their Featherweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

だが、テイクダウンされた後の対処は悪くなかった。
パスガードを阻止しつつ、下からサブミッションや肘うちを
仕掛けていく。そのどちらもかなり効果的だった。
グイダはポジションキープを続けるものの、これといった
有効な攻撃はほとんどできなかった。

有効打数では倍くらい日沖が多かったし、そこそこ
優勢に運んでいたと思うが、場内の歓声もあってか判定は
グイダに行った。もちろんグイダが勝ってもそれなりに
納得できるのではあるが、昨今の有効打を評価する傾向からは
少し不満が残るジャッジだ。下からの攻撃やサブミッションも
ポイントになるようになった。もうちょっとあれを評価しても
よかったのではないかと思う。

日沖のスタンドは素晴らしかったが、そこを活かして勝つには
寝かされないこと、寝かされてもすぐに立つことが必要に
なってくる。下からの攻撃も決して悪くは無いが、まずスタンドに
戻すことを優先する作戦のほうがいいだろう。

また岡見選手が言うように、自分から先にTDを仕掛けることも
必要だろう。スタンド一辺倒では相手に読まれやすくなる。
組みでTDできない相手ではないだろうから、どこかで
クリンチに行って投げてもよかったかもしれない。
試合展開が少し単調すぎる嫌いはあったと思う。

ともあれ、けっして日沖は悪くなかった。
なんとなくだが日沖の打撃によるKOは見えてきたと思う。
成長していたのは間違いないし、本人もまた作戦を練り直すと語って
いる。まだ2勝2敗。次の試合がさらに期待できそうだ。

一方グイダは試合前のインタビューとはかけ離れた試合だった。
フィニッシュの可能性などどこにあったのだろうか。打撃で劣勢に
なってTDに行くまではいいが、その後日沖を攻めきれずに終わった。
案の定リーチ差がかなり影響し、スタンドでは終始日沖に削られる
ことになっていた。グラウンドでも日沖の長い手足と下からの攻めに
苦しめられていた。この試合内容では、フェザーの上位とやるにも
少し厳しいのではないだろうか。ことさらに攻めてるアピールを
しているように見えるヘッドムーブも苛立ちを誘った。

海外でもこのパフォーマンスには不満の声が多い。
これではさらに階級を落とすことも必要になるかもしれない。
あと髭を剃れ。

WIN ヒカルド・ラマス VS エリック・コク
(グラウンド・エルボーによるTKO)

スタンドで優勢に運んでいたコクだったが、ラマスがすこし
崩れたところに気負って追撃しすぎたために逆にトップを
取られて逆転KO負け。これは迂闊だったといわざるを得ない。
これが若さか。かなりもったいないミスだった。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Ricardo Lamas (Top) punches Erik Koch (Bottom) during their Featherweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

一方でラマスは不利な状況でも冷静に対処した。
隙を見てのガードからの肘の嵐は素晴らしい勝負勘だ。
スタンドに戻って長引けばKO負けもありえた展開だ。
自分の有利な土俵で一気に勝負を決める。理想的な
勝ち方と言えるだろう。

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Ricardo Lamas (Top) punches Erik Koch (Bottom) during their Featherweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)
一瞬で血だるまにされるコク。わずかなミスが命取りになるのがMMAだ。
肘で切り裂かれた目蓋が痛々しい。

またラマスのフィジカル、特に上半身の充実ぶりと
パワーは素晴らしいものがある。あのフィジカルから
繰り出される肘はガードからでもあっさりコクを
KOしてしまった。日沖もこのパワーによってスラムで
叩きつけられて敗北したが、フェザーにおいて
驚異のフィジカルだと思う。これでラマスもいよいよ
タイトルマッチが見えてきた。これからの試合が
楽しみになる一戦だった。