以下は個人的な意見ですので参考程度にどうぞ
写真はUFC公式より
女子バンタム級タイトルマッチ 5分5R
WIN 王者 ロンダ・ラウジー VS 挑戦者 リズ・カムーシェ
(腕十字による一本勝ち ラウジーは初の王座防衛に成功)
ファイトメトリックによるデータはこちら
意地を見せた女戦士リズ・カムーシェ
カムーシェがとてもいい選手だと思えた試合だった。
彼女が頑張ったおかげでこの試合は成立したと思う。
彼女は誇り高く勇敢で、この選手に強い敬意を抱いた
試合だった。
今回の試合で一番の収穫は、たぶんもう少し女子MMA
が普及すればロンダはそこまで磐石ではないだろうことが
判明したことだ。これで一応次の試合も見てみたいと
思うことが出来た。もし完全に一方的な、何一つ
反撃の無いリンチだったらそれ以後の女子MMAは
32倍の速度で展開することになっただろう。
カムーシェはストライカーということだったが、
グラップリングも基礎をきちんとやっていて素晴らしい
動きだった。序盤でラウジーのバックに回りこみ、
ねじ切るようなネック・クランクを仕掛けたときには
彼女がこのまま勝てるように祈ってしまった。
この技のおかげでこの試合はとても劇的な試合に
なったといえる。ただの残虐ショーを救ったのは
この技で、本来デイナは彼女にサブミッション・
オブ・ザ・ナイトを与えるべきだったろうと思う。
繰り返すが、この大会を成功に導いたのはロンダの
腕十字ではなくカムーシェのネック・クランクだ。
カムーシェ、戦士の意地を見せたネック・クランク! |
ただ、フィジカル差が明らかだった。数字よりも
遥かに体重差があったように見えた。体はカムーシェが
一回り小さかった。ラウジーがかなり戻しているの
だろうか?組み伏せられてからはパワー差のせいで
結局カムーシェはスタンドに戻ることができずに
終わってしまった。
腕十字を極めるだけの簡単なお仕事、少し難しくなる
一方ロンダの試合はワンパターンで、適当に打撃を
するフリをした後は、さっさと組み付いてTDして腕を
極めるだけのものだ。今回もそれですぐに終わらせる
つもりだったらしい。もしそれであっさりと極めていたら
今後ラウジーは32倍速で動く女となっていただろう。
しかしそのワンパターンを読まれてカムーシェに
一矢報いられてしまった。
この試合でラウジーが思ったほど磐石ではないのかな
と思ったのはスタミナとスタンド技術のせいだ。現状
圧倒的なフィジカルと投げの技術でTDを防御されて
いないからこそ今のような勝ち方ができているが、
フィジカルが同等の選手が出てきたら案外あっさり
打撃で負けるような気がする。次の対戦相手は、
レスリングベースでボクシングが巧い選手辺りを
連れてきて組ませて欲しいと思う。
ここからの展開は一方的だった |
スタミナ面でも1R終盤で少し息切れしているような
ところが見えた。ラウジーのTDを防げる選手が徹底して
グラウンドを回避することに専念すれば、3Rくらいで
ラウジーはガス欠を起こして負ける展開もあるような
気がする。体重もかなり戻しているように見えるので、
スタミナ不足は十分にありうる話だ。
女子MMA、課題は圧倒的な選手層の薄さ
自分は正直このタイトルマッチには不満が多かった。
まず、なぜラウジーがすでに王者なのか。フライ級では
新設時にトーナメントをして、こちらは無しでは筋が通らない。
最低でも防衛戦ではなくて王者決定戦と銘打つべきだったろう。
また女子MMA開催決定の理由が一人のスターのため
というのも気に食わない。デイナは以前、女子MMAを
UFCでやらない理由として「選手層の薄さ」を挙げていた。
これを理由に女子部門を創らないというのはとても
納得のできるものがあった。現状ラウジーという
スターが出てきたために部門を創ったものの、
選手層の薄さは変わっていない。カムーシェは
善戦はした。しかし全体で見ればやはりこれは
雑魚狩りだ。最初のカムーシェでこれでは、あと
数年は多くの女子選手の腕を負傷させるだけの
展開が続くのではないかとおもう。
得意の腕十字の体勢に入るラウジー 見慣れすぎた光景だ |
一方で、それは承知の上で部門を創設すれば選手層が
厚くなって行くという面は確かにあるだろう。ラウジーの
人気によってアマチュア格闘技のトップエリートたちが
MMAに転向してくれれば、結果的にラウジーの
対戦相手が充実していくことになる。日本には
優秀な女子レスラーや女子柔道家も多い。女子でも
大金が稼げるとなれば、日本女子格闘家でも
プロを目指す選手が出てきてくれるかもしれない。
そうなればこのスター頼みの部門新設は成功したと
言えることになるだろう。自分は女子部門新設の
成功を決定付けるのはラウジーの連勝ではなく、
ラウジーの敗北によってだと考えている。
掴みはOK!の女子MMA、今後の展開は?
ともあれ今回の試合は初の女子MMAの試合としては
及第点だったろう。波乱があり、そしてスターが
必殺の腕十字で勝利という大成功の内容だった。
自分が思っていたよりは面白かったし、男子の
試合と一緒にやってもそこまでの違和感は
感じられなかった。何よりもラウジーの上半身の
ウェアは最高だった。前の谷間よりも、背中の側が
紐になっているのがかなりぐっときたと言っていい。
ラウジーは丸みが多くとても女性的な体をしたまま
だったのも印象的だ。ラウジーは女子版ケイン・
ヴェラスケスと言えるナチュラルな体つきだった。
蹴り上げでラウジーのおっ、胸を一撃した
カムーシェは本当にいい仕事をしたと思う。
ただやはり今後懸念されるのが対戦相手だ。
この展開を何度も何度も繰り返せばあっという間に
飽きられてしまうような気がするし、自分はあと
2回くらい同じ展開が続いたらたぶん32倍速ボタンを
押すだろうと思う。逆にラウジーがあっさり負けるような
ことがあれば今後は楽しく女子バンタム級を見ることに
なるだろうし、ラウジーをとても応援するようになるかも
しれない。賽は投げられた。カムーシェのような素晴らしい
ハートを持ち、ラウジーのようなフィジカルを持った選手が
続々とUFCに乗り込んで来るのを期待している。