2013年8月13日火曜日

ショーグン、フレディ・ローチとボクシングを学ぶ

ショーグン・フアはフレディ・ローチとのトレーニング後に語った:「私は今やスーパーマンのようなパンチが打てる」



マウリシオ・フアはマサチューセッツはボストンでチェール・ソネンを相手に行われるUFC Fight Night(2013年8月17日)のメイン・イベントを目前にして出来うる限りの努力をしている、有名なボクシング・コーチであるフレディ・ローチとトレーニングすることによってだ、それは昨日のUFCの特集ビデオによって明らかになった。



そのブラジル人はどういう経緯で二人の男が驚愕の合同練習をすることになったのかを説明した。

「これは全部私のマネージャーがフレディ・ローチと彼のチームにコンタクトを取ったことから始まり、いくつかのトレーニング・セッションを予約したんだ。それは私にとって本当に良かったよ、私は自分の戦い方を改善するための細かい点を学べた。」

ローチ、マニー・パッキャオやアミール・カーンのようなエリート・ボクサーと仕事をしてきた彼は、現UFCウェルター級チャンピオン、ジョルジュ・サン・ピエールのようなMMAファイターにも協力してきた。

そのトップ・トレイナーはフアについてと、同様に彼の急速な向上についても素晴らしい発言をした。

「私達が始めたとき、彼はどうやってピボットをするのか、どうやってパンチに全体重を乗せるのかなどを本当に知らなかったんだ、だが私達はそういうのを練習してきた。彼は偉大なるパンチャー、偉大なるストライカーであり、わずかな時間で彼は長い道のりを来てしまった。彼が始めてここに来た時、彼の技巧はわずかだった。私が彼に何がしか教えるとき、彼は私が言わんとすることを理解する。彼が学習するのに長くはかからない。才能ある連中はああいう物を即座に身につける。とてもたのしい時間だった。」

フアはまた自身のジャブを磨くことにかなりの時間を割いたことにも言及した、それは恐らくチェール・ソネンを立った状態にし続け、試合での適切な距離を掴む手助けになるだろう。

「ショーグン」はすでにUFCのキャリアを通じて印象的なノックアウトを獲得している、チャック・リデル、リョート・マチダ、フォレスト・グリフィンのような選手たちを相手にだ、最近ではブランドン・ヴェラをノックアウトしている、しかしローチと練習した後に、彼は完全に新たな男になったように感じている。

「彼が与えたコーチングによって改善した私のパンチを、彼は本当によく見てくれた。だから今、私はスーパーマンのようなパンチが打てるんだ!」

もし元ライトヘビー級王者が真っ直ぐに立った状態でいられるならば、スーパーマンのようなパンチが打てる能力は害にはならないだろう。

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というわけでソネン戦を控えたショーグン・フアのトレーニングでした。これはマネージャー良い仕事しましたね。踏みつけ大将軍はこやつに褒美を取らせるべきです。

マウリシオ・ショーグン・フアはムエタイと柔術をベースにした典型的なブラジル人ファイターでした。どちらかというとストライカーよりで、きちんとローとパンチから出していってガリガリと相手を削るムエタイのスタイルは恐ろしく、多くの選手が削り負けた後に一撃を貰ってノックアウトされてきました。ディフェンスに長けたリョート・マチダをカウンターで沈めた実績もあります。

リョート・マチダをKOした試合では、とにかく強烈なローでマチダの足を狙い、下がるリョートの想像を超える突進でパンチを放っていきました。差しあいでは不利で何度も投げられましたが、すぐに起き上がります。そして1R終盤に差し掛かるくらいの時、前に出ようとしたショーグンのボディにマチダの得意武器である膝蹴りが当たります。ショーグンが突き放して当たりは浅かったように見えましたが、効いたと判断したマチダが追撃の突きを放って前に出たところに、今度はショーグンが常軌を逸した反応速度で右のオーバーハンドのカウンターを叩き込み、リョートはそのまま崩れ落ちてしまいました。

参考動画 ショーグンvsマチダ2

これだけのパンチがありながら、ローチ曰く彼はなんと「パンチに体重を乗せるやり方をしらなかった」というのです。ピボットすら知らなかったと。では彼がボクシングの技術を学んだら一体どうなってしまうのでしょうか。

ショーグンのパンチがあまり巧くない、特にフットワークとジャブがないことは以前から明らかでしたが、それはムエタイの蹴りを重視するためであり、そちらで補えていたためにこれまでは問題がありませんでした。特にPRIDEのリングではそれで十分でした。しかしリングよりも広く逃げ場があり、体格と技術がどんどん向上していくUFCにおいて、ショーグンはボクシング技術とレスリング技術の無さによって次第に負けが混んでいきます。UFCに来てからは勝ったり負けたりを繰り返し続け、成績はあまり芳しくはありません。

特にジョン・ジョーンズとアレクサンダー・グスタフソンの二人にはほぼ一方的にやられる結果となってしまいました。ショーグンはフットワークが無いためにリーチ差をどうにもできず、レスリング技術がないためにテイクダウンを防ぐ術がなかったのです。グスタフソン戦では無理やりに殴ろうとするも足がついていかずに身体が泳いでしまいました。

これらのことからショーグンはもう浮上の目が無いように思われがちですが、彼はまだ31歳と若く、引退を考えなければいけない歳ではありません。彼は若くしてMMAの世界に身を投じたために高齢のような印象があるかもしれませんが、決してそんなことはありません。むしろ今くらいが最もいい時期です。岡見勇信選手と同い年であり、アンデウソン・シウバがUFCに登場したのと同じ歳です。

ショーグンの才能はだれも疑いようがありません。動物的な身のこなし、常軌を逸した反応速度、自分から前に出て攻めるアグレッシブなスタイル、そして築いてきたKOの山を見れば当然です。パンチの技術がほとんどないにも関わらずあれだけパンチで相手にダメージを与えられるのですから、才能の塊のような人でしょう。しかしそれでなんとかなってしまったせいで、新しい技術の習得が遅れてしまった面もあるような気がします。

フィジカルもまだまだシェイプする余地があります。最近のショーグンはスタミナ切れすることが非常に多かったように思います。原因は身体の作りこみ不足と、ボディを狙われると対処できないことです。

ムエタイの構えはフットワークが使えなくなり、ボディに対してガードが甘くなるという欠点があり、MMAでは致命的なものになるようです。このことは以前紹介したカブ・スワンソンの記事に詳しく書いてありますので是非読んでみてください。参考:カブ・スワンソンの打撃テクニック分析

またライトヘビーで体格的にそこまで優れているわけではないショーグンは、リーチ差を埋める武器が必要になります。蹴りという優秀な武器がありますが、その蹴りの間合いよりさらに遠いところから攻撃できる反則的な化け物が出てきた以上、それだけでは対処できません。彼は最先端のMMA技術を学び、フットワークを習得する必要がありました。そして白羽の矢が立ったのが、GSPのボクシング・コーチとして名高いフレディ・ローチです。

GSPのジャブを見れば、これは相当に期待していいのではないでしょうか。GSPのステップ・ジャブに完全に対応できた選手は殆どいませんでした。ボクシングが巧いニック・ディアズも、スタンドでの被弾が極端に少ないカーロス・コンディットをも捕えたあのジャブをショーグンが使えるようになれば鬼に金棒、将軍に幕府、アリスターにドーピングです。あのジャブを使えれば、チェール・ソネン戦で ソネン教授の突進を止める有効なツールとなります。

しかし問題が二つあります。一つはフットワークによってムエタイの蹴りがどうなるのかという点が一つ、そしてもう一つはレスリング技術です。

ムエタイの構えは蹴りを使うのに特化しており、その蹴りは速く破壊力抜群です。ショーグンの勝利にはこのムエタイの蹴りがかなり貢献していました。特にローキックです。彼の強烈なローで意識が下に向かうからこそ彼のパンチがよく当たっていたのだと思います。パンチとキックのコンビネーションがキックボクシングの真髄です。

ボクシングのフットワークを習得することで、この蹴りがどうなるのかが一つ注目です。前足をとんとんと上げて少し後ろ重心気味の構えはジャブを使うなら捨てる必要があると思うからです。もっとも今の王者クラスはボクシングよりの構えからでも蹴りをバンバン打ちますし、ケイン・ヴェラスケスやGSPを見ればこれはさほど心配無いかもしれません。何よりもMMAファイターにこれまで指導して成功してきたローチですから、まず大丈夫そうです。

二つ目が一番の懸念ですが、ショーグンのレスリング技術はどうなっているのでしょうか?ジャブで距離を制して接近を許さなければTDを回避できる可能性は高まりますが、相手はあのチェール・ソネンです。オーバーハンドを振り回してガードをさせたところにクリンチを仕掛ける彼の接近技術は凄まじく、TDまでは行かずとも差しあいにまでは誰を相手にも確実に持っていきます。あのアンデウソン・シウバをテイクダウンし、圧倒的な間合いを持つジョン・ジョーンズですらその技術でクリンチまでは持ち込んでいますから、果たしてショーグンがこれを回避できるかに注目です。クリンチに持ち込まれたら、まずテイクダウンされてしまうような気がします。クリンチすらも許さないというのは至難の技でしょう。フィジカルが改善されていなければ、2Rも漬けられればガスは完全に空っぽになってしまうでしょう。

実はこの試合はかなり楽しみな一戦です。自分はソネン教授も好きですが、ここらでショーグンに一皮向けてもらい、王座を狙えるコンテンダーに返り咲いて欲しいとも思っています。ソネン教授の試合は勝ち負けはもはやどうでもいいというか、彼の試合そのものが好きなので結果はあまり気にしていません。彼の試合は多くの人にとっては睡眠導入剤かもしれませんが、自分にとっては興奮剤です。そしてここでショーグンが新たな技術を身につけてソネンに完封勝利すれば、ショーグンにはまだまだ王座を狙える可能性があると思っています。ローチ曰く飲み込みが信じられないくらいに早いということですので、伸び代は十分でしょう。新しく生まれ変わったショーグンが楽しみですね。

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