画像はUFC 174 大会フォトギャラリー | UFC ® - Media他より
UFC Fight Night Munoz vs. Mousasi
ミドル級5分5R
WIN ゲガール・ムサシ vs マーク・ムニョス
(1R リアネイキッド・チョーク)
ザ・ドリームキャッチャーが魅せた驚異の進化スピード
この試合には驚いた人も多いでしょう。ゲガール・ムサシはすでにケージで長年闘ったベテランのような落ち着きと風格を見せてくれました。彼は金網の中で何をすればいいのかを的確に把握していたように思います。彼のキャリアを考えれば、その進化速度はダーウィンもドン引きするほどの早さでしょう。
彼の一番の魅力は肉体的な強さとバランスの良さです。とにかく組みでの力の強さは圧巻でした。レスラーであるムニョスのタックルをがぶり、それを上から腕で無理やりにねじ伏せるとムニョスは体の自由をあっさり奪われ、あっという間に不利な体勢に追いやられていきました。
そしてバランスの良さも脅威です。冒頭リフトされてスラムを受けるも、彼は空中で巧みに体を捻って地面に着くころにはムニョスが下になっていました。同様にその後の投げでも相手の力を利用してそのまま反転して上を取り、そこから殴りつけて一瞬で首を取って極めてしまいました。ネコ科動物のようにしなやかで粘りのある肉体です。
次にケージやルールを活かした攻撃手段も多彩で効果的な物ばかりでした。自分が注目したのは肘の使い方とクリンチでのボディ打ちです。
ムサシは上をとって、その機会を一切無駄にしませんでした。恐ろしい膂力で相手を抑えつけてすぐに良い体勢を作ると、ムニョスに対処を考える猶予を与えずに素早く打撃で削っていきました。そして相手の防御姿勢を見て、効果的な打撃を瞬時に判断して切り替えていくのです。中でも反則ギリギリの横からの打ちおろしの肘は強烈でした。あわよくばあれでKOも取れるでしょう。ムサシは短時間で次々に使える武器を身に着けつつあるようです。こういうギラついた、緊張感のあるグラウンドであれば何時間続いてくれても私は一向に構いません。
クリンチでも彼は自分が一番効果的に使える武器は何かをすでに把握したようです。首相撲を仕掛けたムニョスのがら空きになった腹を、ムサシは金網際に押し付けてから拳でしこたま殴りつけました。パンチが強いムサシには最高の武器です。ムニョスは耐えかねてあっさり手を解いてしまいました。この技はディアズ兄弟の十八番ですが、彼ら同様打たれ強くパンチが重いムサシにはうってつけでしょう。
また常に相手を仕留めようと狙い続ける姿勢も素晴らしい限りです。これはマチダ戦でも感じましたが、ムサシは最短距離で相手の息の根を止めることだけを考えているのは間違いないと思います。だから彼はチャンスでどんどん攻めていけます。フロントチョーク、ネッククランク、そして最後はリアネイキッド・チョークと彼はわずか一分足らずでこれらを狙い、そしてどれもが鋭さを持った仕掛けでした。相手に立て直す余裕すら与えない、これこそが理想的な強さの在り方です。
ムニョスを相手に組みとグラップリングで圧勝し、そしてサブミッションできっちり極めたことで、ムサシはかなりの完成度のオールラウンダーであることをはっきりと証明しました。現在ランキング7位ですが、恐らくケネディやロックホールド、ジャカレイあたりにはそこそこ勝算があるのではないかと見ています。まだ伸び代もありそうです。もっともムニョスが最近落ち目であることは考慮するべきですが、それでも及第点ではあると思います。問題があるとすれば、TDディフェンスがまだそこまでではないかもしれないということでしょう。打撃で五分に持ち込まれ、相手にTDの選択肢がある場合には苦しくなりそうです。また下になってからどれだけできるかも未知数なところも気になります。そういう意味でケネディは少し厄介でしょう。そして現状、ワイドマンにはまだ少し届かないかもしれないとも思います。
しかし彼は急速に力を付けつつあります。夢を手にするのは、そう遠い未来の事ではないかもしれません。次戦は8月にホナウド・ソウザと決定しています。これに勝てば次は確実にタイトルマッチです。ソウザは蹴りがあるので少し厄介ですが、パンチでは打ち勝つ可能性もあるのではないかと思っています。タックルも打ち負けなければそこまで怖くはないでしょう。蹴りに気をつけつつジャブを当てられるのであればムサシに十分勝機はあります。ソウザに勝てるようであればこれはもう王座も夢ではありません。この試合はここ最近では抜群にワクワクするマッチメイクの一つですね。夏を一際熱くしてくれそうで、今から楽しみで仕方ありません。
一方ムニョスはいよいよ厳しくなってきました。ボッシュとのグラップリングマッチを制して敗戦から立ち直ったかと思いきや、マチダ、そしてムサシに2連続で完敗してしまいました。ミドル級のゲートキーパーの地位をいよいよ不動のものにしつつあり、試金石としては優秀ですが王座を狙えるコンテンダーではなくなっています。恐らく次に敗北したらリリースの可能性はかなり高いでしょう。やはり打撃がいまいちであることが大きく影を落としており、残念ながら改善の見込みはあまりなさそうです。
UFC Fight Night Miocic vs. Maldonado
ヘビー級(笑)5分5R
WIN スティペ・ミオシッチ vs ファビオ・マルドナド
(1R 右ストレート→パウンドによるTKO)
NOと言えないブラジル人?
マルドナドさんは「嫌なものはイヤ」とはっきり言う事の大事さを私たちに教えてくれました。誰が悪いかといえば組んだ奴が悪いんです。
UFCでは2013年、欠場による大会クラッシュが続出して大問題になったことは皆様の記憶にも新しいかと思います。今年に入ってから若干良くなったものの、それでも欠場はそれなりに発生しており、この試合も本来は「シガーノ」ジュニオール・ドス・サントスが出場するはずでした。他のメインならいざしらず、ヘッドライナーの欠場は致命的です。しかもこの大会はブラジル大会というシガーノのホームで、そのうえこの試合以外は知名度のないTUFブラジルのファイターばかりでした。したがってシガーノが欠場したら大会中止もやむなしのものだったのです。
しかしブラジルは大事なマーケットです。そしてもう時間もありませんでした。ズッファは何としても中止にはしたくなかったのでしょう。結果的に階級が一つ下のマルドナドさんが、恐らく熱い打ち合いをするだろうくらいの期待をかけられて準備期間わずか2週間ほどで出場することになりました。そしてわかったのは「ヘビー級のパンチやべぇ」ということだけでした。出てきて早々に変な下がり方をしたマルドナドさんは、ミオシッチのお手本のようなストレートを綺麗に貰ってそのまま三途の川に短いバカンスに出かけてしまったのです。当然の結末でしょう。
そしてマルドナドさんははした金のために脳に無駄なダメージを負って3連勝を台無しにし(もっともさすがにこの試合は考慮されないとは思いますが)、ミオシッチはタイトルマッチに繋がらない試合をして時間を浪費し、そして観客はつまらなすぎて大ブーイングという誰も得しない結果になりました。せめてヘビーで誰か用意するべきだったでしょう。理想を言えば中止するべきだったと思いますが、そのあたりはそうそう決断もできないでしょうから仕方がないのかもしれません。しかしせめて、マルドナドさんは勇気を持ってオファーを断るべきだったはずです。何しろ試合まで2週間ほどしかなく、さらには一か月半前にも試合をしたばかりだったのですから。加えて長らくライトヘビーでやってきたマルドナドさんは、計量時の体重でミオシッチと10ポンド近く差がありました。
このあたり、MMAというスポーツの興業面での危うさが未だに解決されていないなと痛感しました。最近ナンバーシリーズではダブルタイトルマッチを始め、看板となり得るビッグカードを複数揃えることでリスクを回避していますが、ファイトナイトではやはりそこまで豪華にするのは難しいようです。とりあえず皆様も、どんなプレッシャーが掛かろうと嫌なことはイヤ!とはっきり言うほうが結果的に損害は少ないんだということをマルドナドさんが体を張って教えてくれたので、決してこの犠牲を無駄にしてはいけませんよ!
マルドナドさんは試合前に「彼らがオファーしてきたから、自分はチャンスを掴んだのさ!」なんて言ってましたが、果たして掴んだのはチャンスだったんでしょうか?彼はその握りしめた手を広げてよくよく確認しなければいけませんでした。その手に握られていたのはチャンスなどではなく、地獄行きの特急切符だったのですから。
UFCはこういう時にオファーを蹴る奴を冷遇するという噂がありましたが、もしそれが事実であるならこれはちょっといただけないと思います。これまでヘビーでやったことのない選手をショートノーティスで上げさせてKOさせるというのは安全面においても最悪だからです。責任は受けたマルドナドさんにありますが、圧力があって受けざるを得なかった、もしくはそれに近い状態だったのであれば責任はUFC側にもあります。そして私が選手ならば、例え冷遇されても「だが断る!」と言っているでしょう。断っておいて、冷遇された後に良い試合をして見返すほうがずっと得が多いと私は思うからです。このあたりは選手のマネージメントをする人などがきちんとソロバンを弾いてあげるべきだろうと思います。
いずれにしろ、組んだ人は罰としてロレンゾ・フェティータと準備期間2週間で5Rマッチをやって反省してほしいものです。
UFC174
フライ級タイトルマッチ 5分5R
WIN ディミトリアス・ジョンソン vs アリ・バガウティノフ
(ユナニマス・デシジョンによる判定勝利)
垣間見せる素質と致命的な戦略の不足
最近ロシア勢がUFCにも増えてきましたが、彼らは皆共通の問題を抱えているように私は思います。それは戦略の不足、ケージでの経験の無さです。
この試合はジョンソンの組みの巧さによって、バガウティノフが有効な攻撃ができずに削り負けた試合でした。打撃数は大差であり、ジョンソンの強さが光る試合だったと思います。しかし素質的な物、単純な組みの強さやフィジカル、打撃ではバガウティノフがそこまで劣っていたようには見えませんでした。むしろバガウティノフに目立ったのは不利な土俵で無駄に粘る判断の悪さです。それが彼に無駄なダメージを負わせ、無為な時間を過ごさせました。これは先日ベンソン・ヘンダーソンと対戦したルスタン・ハビロフとまったく同じ展開だったと思います。
バガウティノフはTDに固執しました。おそらく自信があったのでしょうし、実際TD出来ています。その力の強さは誰が見てもはっきりわかるものでした。あのマイティマウスに真っ向勝負のTDを仕掛けて成功するのですからこれは相当なものです。
ただMMAはTDの数を競うものではありません。執拗なTDトライはバガウティノフからスタミナを奪い、そして組みに失敗した後にはマイティマウスのクリンチ打撃を大量に被弾して次第に彼は弱っていきました。スタミナを浪費してからはスタンドでも一方的に打たれる場面が増え、KOされてもおかしくないような蹴りなどもありました。あれだけの被弾をしながら終盤でもそれなりに動けていたものの、ポイント勝負ではもはや勝ち目がなかったのは明らかです。
スタンドでも、蹴りでは一方的に負けてますが単純なパンチだけなら負けていたとは思いませんし、一発の威力もありそうでした。若干スピードと距離では劣るかもしれませんが、一発狙いを仕掛けてもそこまで分が悪い賭けだったとは思いません。
だから戦略としては、自分も相手も体力があるうちはなるべくディフェンスを徹底しながら打撃戦を行い、自分が有効打を当てて優位に立つか、もしくは被弾が増えて相手が深く踏み込んで来たあたりでTD狙いに切り替えるべきだったでしょう。バガウティノフが打撃と連携したタックルがあまり出来ていないのも問題でした。それがあるだけでもっと違った展開になったでしょう。対戦相手の研究と勝ちまでの明確な道筋、これをバガウティノフからは感じませんでした。
またTDしても後が続きませんでした。彼は相手を寝かせ続けること、そしてポジションを奪いながら削る技術に慣れていない印象を受けました。これではTDをしたところで莫大なスタミナと引き換えにわずかなポイントを稼いだだけで、取引としてはぼったくりもいいところです。まったく割に合っていません。このあたりの計算はロシア出身だけに弱いのでしょうか?あまり優れたソロバン勘定ではないでしょう。にもかかわらずバガウティノフは同じ取引を繰り返してポイントとスタミナを全部巻き上げられて素寒貧になってしまった、という感じです。
こういった状況判断の悪さ、引き出しの少なさ、対応できないケースの多さは単純に彼の経験不足からくるものでしょう。彼はサンボ、レスリング、ボクシングと豊富なバックボーンを持ちますが、それらのMMAへの変換作業がまだ終わっていないのだと私は推測しています。逆に言えばそれが済んだ時に、彼をはじめとしたロシア勢は間違いなくこれからのタイトル争いでかなりの脅威になっていくでしょう。今の時点であれだけできるのですから、その伸び代は相当なものがあるはずです。
ジョンソンの強さに関しては今更なのでいう事もありません。今回も非常に安定した試合運びでした。彼は自分の優位な土俵を維持する知恵と技術、そしてフィジカルが十分にあります。やっぱりマイティマウスは強いなぁ、という感想です。相手が苦手と見るや、最後まで徹底して首相撲を使って膝で削り続けるいやらしさには感服しました。以前も述べましたがスポーツは基本どれだけ相手が嫌がることをするかの勝負だと私は思っています。1対1のMMAでは特にその要素が強いです。相手がこれが嫌なのだということを察したら、あとはそれをどれだけ徹底できるかでしょう。今回のマイティマウスくらいに徹底的にやれる人間はやはり強いのです。
マイティマウスの強さを再確認するとともに、ロシア勢のポテンシャルの高さもしっかりと感じることのできるタイトルマッチでした。練習環境さえ十分であれば彼らは間違いなくアメリカ、ブラジルに次ぐ第三の勢力となっていくでしょう。是非ともタイトル争いにどんどん絡んできて、MMAを盛り上げて欲しいところです。
>気が付いたらヴェウドゥムvsブロウニとかもう遥か昔
返信削除自分は恥ずかしながらカード自体忘れてました
最近のUFCのハイペース過ぎる興業は今までの総合格闘技のW杯≒UFCから
総合格闘技≒UFCにしたいのかと勘ぐってしまいます
もしそれを目指してるのなら岡見やアスクレンの処遇は如何なものかなですが
ヌルオタとしてはUFCのケージに入るアスクレンを見たかった・・・
ヒョードルと並んで「全盛期に出てれば・・・」という選手が出てしまうのは本当セクハラ入道の罪は重いです
りんちゃんは可愛いお顔が崩れない程度に頑張ってほしいです
FIGHT PASSというサービスで金を取ろうと思えばあれくらいの大会数が必要なのかもしれません。実際今の大会数ならFIGHT PASSは素晴らしいコストパフォーマンスです。ただやりすぎるとほんと他の興業が全部食われちゃいますね。その是非に関してはまだ判断しかねるところです。
削除アスクレンのケースは岡見さんとはちょっと違う感じですね。ライバル会社の見え透いた挑発には乗らなかったというところで、アスクレンはまあしょうがないかなと思います。たぶんそのうち来ることになると私は思ってますw
セクハラ入道はあれでもかなりよくやってるほうでしょう。ジョーンズとグスタフソンのラバーマッチをプッシュしてたのはちょっとセンスないなと思いましたが。ヒョードルはもうどうしようもないです。あれはデイナでもヒョードルでもなく、ヒョードルの取り巻きが悪いと思います。
中井りんさん、会見の衣装すごかったですねwあれに誰も触れない記者にはがっかりしました。最近ラウジーも明らかに顔が変わって来てる気がしますし、顔の変化は避けられないかもしれませんね。他の日本人女性アスリートにももっと参戦してほしいです。