MMA Fightingより
プロのミックスド・マーシャル・アーツ内ではレフェリーはその試合のルールを順守させ、選手の安全を確保する仕事を有する。それはしばしば、彼ら自身から彼らを保護することを意味する。しかし時折、その仕事は負傷したファイターの情け深い対戦相手に降り懸かることがあるのだ。
8月のUFC164のメイン・イベントだったアンソニー・ペティス対ベンソン・ヘンダーソンの試合はそういうケースだ。
我々全員が今ご存じのとおり、ペティスはヘンダーソンからタイトルを奪い去ることができた、センセーショナルなファースト・ラウンドのアームバーによってだ、だがその試合の終了を告げたのはハーブ・ディーンレフェリーその人ではなかった。その試合を終わらせるという決定は競技者彼ら自身によってなされたのだ。
「私がストップした理由は、私は二度音が鳴るのを感じたからだ。」とペティスはアリエル・ヘルワニに月曜のThe MMA Hourで語った。「私は彼の腕が二度鳴るのを感じた、そして私は顔が下になって、ヘンダーソンも私の足の間で顔が下になった。だから、そのせいでハーブ・ディーンはたぶんそれが聞こえなかったんだ、だが私は二度音がするのを感じた。」
「私は最初の音が鳴るのを感じて、私はそれでは彼にやめさせるのに十分ではないのだろうとわかった、そして一度彼の腹が下になって私にくっつき、私はそれにさらに深く体重をかけた、そして私は二度目の音が鳴るのを感じたんだ、彼はパニック・モードに入って言った、『タップ、タップ、タップ!』と二回ね。わかるだろ、私はすぐにそれを解放してそこですべてが終わったんだ。」
ペティスはヘンダーソンの腕が「すでに終わっていた」し、その試合を続行しなかったことは皆が一番興味を持っていることだと信じている。もし彼らがどこかの時点でスタンドになっていたら、その新しいUFCライト級王者は確信している、ヘンダーソンはその腕を蹴りとパンチをブロックすることや、あらゆる攻撃に使うことができなかっただろうと。
皆が見ていたとおり、それがすべて完了したときに、ヘンダーソンのキャンプからは何の抗議もなかった。ペティスは信じている、こうなったのはヘンダーソンが彼は負けたのだということを理解していたからだけでなく、彼らがお互いに十分に敬意を抱いているからだと。
「私とベン、私たちは二人ともお互いを尊敬しているのさ。」とペティスは言う。「私たちは友人じゃない。私たちはたぶん絶対に友達にはならないだろう。私たちは多分また互いに戦うだろう、だが私たちは二人ともお互いを尊敬しているから互いに信頼しているし、そこから信頼が生まれているんだ。」
事実、ヘンダーソンはその後そのタフなファースト・ラウンドのサブミッションについて彼が思ったことを伝えるに至ったのだ。
「良いアームバーだった。」
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というわけで、アンソニー・ペティスがベンソン・ヘンダーソンを極めた時にレフェリーが制止する前に技を解いた理由でした。ちょうど前から訳そうと思っていたところにホジマールの件があったので、あえて一緒に紹介しちゃいました。ホジマールはこれを1万回読むように。
たとえ王座がかかっていようと、冷静に相手の状態を把握し、相手が口頭でタップを告げたらレフェリーがストップをかけずともそれ以上の負傷をしないようにすぐ技を解く、これが本当の格闘家です。当然ヘンダーソンから抗議はありませんでしたし、何よりもヘンダーソン自身が試合後に歩み寄ってそのサブミッションを褒め称えたのです。
そしてなぜそれができたかといえば、二人は戦士として互いを尊敬し合あっており、その尊敬がこの崇高な信頼関係を生みだしたからです。これはある意味では友人関係をはるかに超えた強い絆です。
王者になる器の男は、タップしたのにいつまでも離さずに壊しに行くようなケツの穴の小さい真似はしないのです。相手を傷つけながらも、相手を誰よりも、レフェリーよりも気遣える、これこそがまさに戦士の矜持です。同様の美学は戦士の血脈、「スーパー・サモアン」マーク・ハントも持っていましたね。私はこういう選手同志の絆をものすごく尊いものだと思っています。
最初に音がしたときに、ペティスはギブアップしないヘンダーソンを見てさらに技を強め、その後に再び音が鳴り、そこでヘンダーソンは口頭タップをしました。結果的に負傷させてはしまいましたが、それはヘンダーソンがギリギリまで耐えてタップをしなかったから仕方がありません。ペティスはあの大一番でも、ちゃんと相手の様子を見て可能な限り壊さないように気を使っています。いきなりぶっ壊しにかかった挙句、レフェリーの制止も無視して1秒近く捻り上げるのと、どちらがより格闘家としてふさわしいでしょうか?答えは聞くまでもありません。
繰り返しますが、技をかけられた選手が粘ってギブアップしないせいで負傷するのは仕方ありません。しかしそれを免罪符にすれば何をしてもいいわけではない、と私は思います。すべての格闘家にはこの二人のように、掛け替えのないライバル関係を築き上げてほしいと願っています。互いに怪我をする辛さは誰よりもわかっているはずです。彼らは互いに敵であると同時にMMAを共に作り上げる仲間なのだ、という意識が必要なのではないかと思います。
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改めて「ぺティスさんカッケー」としかいいようがないすね
返信削除彼は今後何回これを言わすつもりでしょうか
フルコンタクトの試合において解くと不利になるポジションでレフリーが割って入る前に技を解くというのは凄いストレスかと
トキーニョは心が試合に出るレベルに達してないですよね
フライにあからさまなサミング仕掛けたアイブルや中井を失明させたゴルドーと同類で試合に出しちゃいけない人です
でも寝技系でこの手の人は珍しいですね
寝技は相手がいないと話にならないんで矯正されそうなもんですが
おそらくこれからも何度も「ペティス△」ということになるでしょう。
削除レフェリーの制止がない内は危険でも技を解かない、というのは普通だと思います。しかし今回のトキーニョはレフェリーが上に乗っかって制止してから捻ってますので論外です。
まあゴルドーほどではないにしろ、試合に出しちゃいけない人間です。
たしかに、人生がかかったタイトル戦でレフェリーが止める前に自分から離すって、本当に相手のことをリスペクトしてないとできないことですよね。
返信削除にしてもトキーニョのリリースはめちゃくちゃスッキリしました。
自分もスッキリしました。ドーピング検査にも引っかかっていますし、やっぱりちょっと危険な選手な気がします。
削除レフェリーの制止前に解いたせいで勝ちを逃すケースもあるでしょうから、必ずしもここまでやれとは言いません。実際甘タップで技を緩めようとする小賢しい奴もいますしね。
ただ基本的には皆こういう精神であってほしいとは思います。
ペティスはこのベンヘン戦に限った話ではなく、WEC時代も相手がタップしたらすぐに離していましたよね。
返信削除特に、デビュー戦のマイク・キャンベル戦と、シェーン・ローラー戦はレフェリーが止める前に解除していたと思います。
ペティスのWECデビュー戦が2009年の6月、対してトキーニョが出場停止処分を食らったのが2010年の3月の試合であることを考えると、トキーニョは極めることの危険性をまるで分かろうとしていなかったんじゃないかと感じます。
トキーニョはペティスより7つも年上なのにこういうことをやらかすのには、ただただ『バカだな』としか思えませんね。
情報ありがとうございます。ペティスは昔からそうだったんですね。それできちんと勝ち上がって来てるんだからやっぱり凄まじいです。どこまでイケメンなんでしょうか。胸に入れた子供の入れ墨が怖いということ以外にもはや欠点はない気がします。
削除一方のトキーニョはああいう真似して勝ったり負けたり、挙句の果てに追放ではなんだかなって感じですね。
ペティスはWEC時代から最終ラウンド最後の1秒まで目が離せない貴重な選手ですね。厳しい世界で戦うほど心身ともに強くなる人だと思います。
返信削除トキーニョの行為に頭の血管がプチプチ切れていたので癒されました(笑)ありがとうございます。血管が修復されていくー!
格闘家は相手がいるから勝つことができ、共に強くなるために犠牲を払っているからこそ人の心を震わせることができる。
「相手の才能と努力に敬意を表し」「全力で叩き潰しに行く」この二つの要素が共存し作用し合えるのが格闘技の魅力だと思いますし、だからこそ選手にもお互いをリスペクトし合う関係でいてほしいですね。
私もこの記事には本当に癒されました。最後の「Good armbar.」ではかなりグッと来てしまいました。私もだいぶ血圧が上がっていたのでこれがなかったら危ないところだったと思います。一緒にあのイケメンに癒されましょう。
削除>「相手の才能と努力に敬意を表し」「全力で叩き潰しに行く」この二つの要素が共存し作用し合えるのが格闘技の魅力
本当にその矛盾した要素の共存こそが一番の魅力ですし、一番カッコいいですよね。やはりペティスは過去に父親を失うという大きな苦難がありましたから、それを乗り越えたおかげであれほどに深い優しさを備えるようになったんでしょう。強くて優しくて子煩悩で家族思い、しかも世界王者とか少女漫画の主人公でもいないレベルです。一人でも多くのファイターがこうあってほしいと思います。