2013年10月26日土曜日

MMA版あの人は今!孤高の虎ヒカルド・アローナ編

彼らは今どこに:PRIDEのヒカルド・アローナ



MMA Fightingより

ブラジルはニテロイ-ヒカルド・アローナはPRIDE史上最高のファイターの一人だった。2007年に日本のプロモーションが崩壊した後、彼はビッグ・スター達に追随してUFCに行くことはなかった、そしてその時から彼のことはあまり聞こえてこなかった。

アローナ、彼は自身のプロデビューを2000年にリングスで、アンドレイ・コピロフへの勝利で飾った。その同じ年、彼はADCCワールド・サブミッション・レスリング・チャンピオンシップでティト・オーティスとジェフ・モンソンを破って彼の三度のタイトルの内最初のを勝ち取った。

その翌年、そのブラジル人はジェレミー・ホーンを破り、議論を呼ぶ判定でフョードル・エメリヤーエンコに敗れた、だがPRIDEと契約を果たした。「ザ・ブラジリアン・タイガー」は一か月後にデビューした、ジェレミー・ホーンとグスタボ・マシャドに同じ夜に2勝を挙げてリングスのミドル級王者になった後のことだ、そしてUFCライトヘビー級トーナメント勝者のガイ・メッツァーは日本のプロモーションにおける彼の最初の犠牲者だった。

アローナはPRIDEでの12戦中8勝した、それはヴァンダレイ・シウバ、アリスター・オーヴァリーム、ダン・ヘンダーソン、そして桜庭和志などへの勝利を含む。不可解なことに、彼はズッファがPRIDEを買収した後にUFC選手名簿に追加された選手の一人ではなかった。

アローナのPRIDEでの最後の試合、2007年のラモー・ティエリ・ソクジュへのノックアウト負けから6年が経ち、そして彼はその時からたったの一度しか戦ってこなかった。

「PRIDEが終わった時、私はUFCと交渉しなかったんだ。」とアローナはイタコアティアラでMMAFighting.comに語った、そこはリオデジャネイロのニテロイにある美しいビーチだ。「私はオフの時間が作りたかった。私は1年間に5度戦っていたしいくらか休養が必要だった。私が復帰を決意したとき、私は膝を怪我してすべてが変わった。」

「私は15歳の時からプロとして競ってきたし、私が30歳になった時に私は立ち止まる必要があった。」と彼は続けた。「プライドは終わってしまったし、私は立ち止まる決定をしてMMA市場を見ていた、私に適した所を探しながらね。私は2年後に再び戦った、Bitetti Combatでだ、だが私はファースト・ラウンドで前十字靭帯を断裂した。私はもう2ラウンド戦ったが、そのせいで治療にほぼ2年近くかかった。」

彼がリオデジャネイロで開催されたBitetti Combat4でUFCのベテラン、マーヴィン・イーストマンと戦うことを承諾して判定で勝利したときに、世界中のファンは彼がいつか再び戦うのだろうかとずっと訝しんでいた。

それは彼のキャリアにおけるベストのパフォーマンスではなかった、だがそれは彼が1ラウンドで膝を怪我したことを考えれば素晴らしい勝利だった、怪我をした時彼の足はマットとフェンスの間で動かなくなっていたのだ。

「私は日本で18回戦ってプレッシャーを感じたことはなかった、私がリオデジャネイロで戦う時に感じてきたようなものはね。」と彼は言った。「私はそれまでケージの中で戦ったことはなかったし、私はそこをとても居心地よく感じた。多くの選手が(プライドの後の)その変化を感じた、だが私はそれを愛していた。私はケージの中を我が家のように感じていたんだ。」

負傷した膝を抱えて、アローナは彼の友人であるホジェリオ・「ミノタウロ」・ノゲイラ、2010年5月にUFC114でジェイソン・ブリッツと戦う予定だった彼と共にラスベガスに行った、デイナ・ホワイトに会うためだ。

アローナによれば、UFC社長は彼らが彼と契約する前にもう一勝するように彼に告げたと言う、だがそれが起こることはなかった。あの日から3年が過ぎている、そして彼は再び戦うチャンスを得ていた、彼がストライクフォースのようなメジャー・プロモーションからオファーを受けていた時のことだ、だが彼は絶対に受けなかった。

「私が再び戦う決意をした時、私は友人のパウロ・フィリオと練習し始めた、だが私はもう一方の膝を怪我したんだ。」と彼は言った。「私はもう一方の膝の靭帯が裂けているんだ、そして私は再び外科手術を受けなければならないだろう。私は今年の終わりに手術をするつもりで、だから私は今一度100%になるためにいくらかオフの時間を取る必要があるだろうね。それが私が未だに戦っていない理由さ。私は復帰するためにすべてを治療しなければならない。」

アローナは7年間でたったの一試合しか勝利してこなかった、だが彼は今もなお頂点と競うことを望んでいる。

「UFCはすべてのファイターのゴールだ、そしてそれは私のゴールだ。」と彼は言った。「私がそこに至るためにあと1、2試合必要なのかはわからない、だが私は心配していない。UFCはゴールだ、そして私はそこに行く準備はできているだろう。私が再び戦うことがないのは、私の体がこれ以上何も出来なくなった場合だけだ。だが私は以前膝の手術をしてずっと良くなった、だから私はもう一方の膝が100パーセントになるだろうと信じている。時の流れが早いことはわかっている、だが私は自分の経験を信じてもいるんだ。全部がうまく行くさ。」

「私はそれについては過去にたくさん語ってきた、つまり私は復帰に期限を設けないことに決めたんだ、なぜなら私は復帰のために試合のあらゆる面をしっかりと固める必要があるからだ、それに私は今もやらねばならない膝の手術があるしね。」と彼は続けた。「私は自分の回復に1年を要するだろうと思っているし、少なくとも2014年の終わりには次に何をするのかを決められるようになるべきだと思っている。私は復帰したら柔術、サブミッションの試合をするか、それともまっすぐにMMAに行くだろうか?私は手術した後に1年以内で戦う準備が整うだろうと予期している、だがもし1年以上かかるとしても、それもまたオーケーだ。急ぐことはないさ。私は100パーセントで復帰するために準備する必要があるし、それが大事なことなのさ。」

だがファイターは金が必要だ、そして6年間にたった1度だけ試合した程度ではイタコアティアラで家を持つ余裕はない。

「全てのアスリートは、彼らがスポンサーと賞金から得た金で生活している。」とアローナは言った。「そして私は最近試合をしてこなかった、だが私はクイックシルバーとモスコヴァをスポンサーとして持っているし、彼らは私に甚大なサポートをしてくれる。」

(訳者注 クイックシルバーはボード・ライディング・スポーツのブランドで、スノーボードやサーフィン・ボードを取り扱っています。モスコヴァはフランスのアンダーウェア・ブランドで、サーファー系ファッションのようです。パンツがどれもピッチピチです。)

「ザ・ブラジリアン・タイガー」は彼の自宅内に少しずつジムを建設している、そしてそれが最終的に完成した暁には、彼は最高のチームメイト達に囲まれるだろうと予期している。

「私は教えるのが好きだし、皆がファイターとして学び、成長していくのを見るのが好きなんだ、だが私はあまりにも競争的すぎる。」と彼は言った。「私は自分が練習して競争する準備を整えられる建物を建てている。私は選手が必要とするすべてを自分の家に置きたいんだ、イタコアティアラを去ることなく最も高い水準で競うことができるようになるためにね。私はここに必要とする全てを持っている。私は心安らかに、自分の計画について考えている。私は健康を維持できる、自然を利用してね、例えばその山々やその海をだ。都市の中でやるよりもずっといいだろうさ、そして私がここに住むことを愛しているのはそういう理由からだ。」

「私は自分が必要とする設備をすべて備えた建物を建てようとしている、だが私は最高のスパーリング・パートナーも得るだろう。」と彼は続けた。「私はここで自分を助けてくれる良い奴らをたくさん持っている、だが私はまた、私を助けてくれる友人たちも必要としているんだ、アンデウソン・シウバ、ホドリゴ・「ミノタウロ」、アマウリー・ビテッティ、ホジェリオ・「ミノタウロ」、パウロ・フィリオ、他大勢のようなね。私は彼らと練習するためにリオデジャネイロにも行くだろう、だが私が過去に必要としていたのと同じような、練習のためにそこに行く必要性がある状態を望んではいないんだ。」

アローナは今日ではよりスリムになったように見える、だが彼は今もなお、彼が日本で競っていた頃の体重と同じままだ。

「私の体重は10年間同じだ。」と彼は言った。「私は205ポンドだし常にその重さだった。私は試合の夜にはいつも209ポンド前後だった、私の相手が220、225ポンドだった一方でね。私は選手たちは試合と同じ日に計量すべきだと信じている。前日に計量するのはばかげているよ。それは君の本当の体重じゃないんだから。もし君が戦うために25ポンド落とす必要があるのなら、君はとんだ臆病者さ。もし君が本当に良い状態ならば、余分な重量はないんだ。君は君の本当の階級で戦う必要があるんだよ。」

アローナが最終的に膝の怪我から復帰した時には(2015年度のどこかを計画している)、彼は36歳のファイターとなるだろう、だが彼は信じている、UFCで誰だろうと倒す準備ができているだろうと-そしてそれはジョン・ジョーンズも含んでいる。

「ジョン・ジョーンズはこの階級を治めている、だが彼の直近の試合は本当に接戦だった。」とアローナは言った。「皆は彼の身長とリーチ、彼のスタイルに対処する際にトラブルを抱えている、だが彼は難攻不落じゃない。君はまさにスマートになる必要がある。」

「彼の最近の試合の後に、我々は全員彼が皆が信じていたような怪物ではないことを目の当たりにした。」と彼は続けた。「私がアリスター・オーヴァリームと戦った時、彼はジョーンズと同じくらい大きい怪物だった、そして私は勝つために正しい戦略を使ったんだ。君はジョーンズを倒すために正しい戦略を必要としている。グローバー・ティシェイラはスタンドでアグレッシブな選手だが、彼はジョーンズに自分のファイト・ゲームをさせることは出来ないだろう。」

「私はあらゆる選手を倒す能力がある。私はそれをすでに証明してきた。私はそれをするために100パーセントになる必要があるだけだ。今は、私は彼らの誰も倒すことができない。それが真実さ。だが私は自分自身に絶大なる信頼を寄せている。私はあらゆる階級から来た選手と戦ってきた。正しいことをすれば、私は彼らの誰に対してもチャンスがあるんだ。今日日の(UFCの)ファイターの殆どは彼らがミスを犯すせいで負けるんだ、もし彼らよりも優れているのなら他の理由のせいではない。」

彼の車で家に戻る前のことだ、車は1990年代中頃のシルバーのBMWだった、そのプライドのベテランは世界中にいる彼のファンへメッセージを送ることを頼んだ、彼はヒカルド・アローナが再び戦うだろうということを彼らに思い出せるのを望んだ。

「私はリングに戻って再びベストを尽くすために必要な全てをやっている。」とアローナは言った。「私は自分が市場が必要とする選手のタイプであることをわかっている、そして私は再び戦争に赴く準備をするために、この時間が必要なのだ。」

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というわけでMMA版あの人は今!第2回は私の愛するブラジルの孤高の虎、ヒカルド・アローナについてでした。復帰する気満々のようでこんなに嬉しいことはありません。

ヒカルド・アローナはご存じの方も多いでしょう。PRIDE全盛期に日本のリングで活躍し、桜庭和志選手に血の凍るような凄惨な攻めをして一躍有名になった選手です。バックボーンに柔術を持ち、その小柄な体型ながら無差別級優勝などの輝かしい実績があります。顔は濃い目の端正な顔立ちで、体は理想的な筋肉の付き方で均整がとれていてとても美しく、当時でもその姿は強く印象に残りました。柔術家でありながらタックルをはじめとしたレスリングにも優れ、特にポジショニングの巧さには定評があります。

そして一番の魅力が勝ちに徹したその競争性にありました。PRIDE全盛期ですら彼はひたすらに勝ちを追求し、決して熱くならずに常に冷静に堅実に勝利を探る戦い方には批判もありましたが、当時からよりスポーツを望んでいた私は彼の戦い方が好きでした。一つ一つ積み上げるように試合を組み立てるそのスタイルは、彼の深い知性を感じさせます。一方で、勝つためならばどんなに凄惨になろうと手を緩めない徹底した所があり、それが憎まれてヒール的に扱われもしましたが、私は彼のそういうところを愛していました。彼が試合がつまらないと桜庭選手に言われた際の、「面白い試合をする必要はない。試合は生きるか死ぬかだ。」というセリフは今も私の胸に深く刻まれています。

入場の際にいつもガウンを目深にかぶって、たった一人足元を見つめながら花道を歩いてくる彼の姿はまさに孤高の戦士であり、とても勇壮に見えたものです。こけおどしや派手なパフォーマンスも一切ない、その求道者としての姿勢こそ私がもっとも憧れていたものでした。セコンドも引き連れずに静かにリングに向かう彼を見て、恐らく果し合いに向かう侍とはこういうものだったのだろうと思ったりしたものです。

しかし彼はPRIDE消滅後にその消息が途絶えがちになり、私をはじめとしたファンが世界中にいたにもかかわらず、彼は表舞台に出てくることはありませんでした。皆様の中にも彼がケージに登場するのを待ち望んでいた人も多いのではないかと思います。多いですよね?ね?

その理由もわからずにファンは置いてけぼりにされました。私はつい最近まで彼の動向が知りたくてたまに調べてもいたのです。なのでこの記事を見て椅子から飛び上がるくらいに驚きました。彼がかなり長く話しているのもさることながら、彼が復帰を決めていたからです。

そして彼の口から明かされた真実は衝撃的でした。彼の体は、もはや引退してもおかしくないほどに大きな怪我を負っていたのです。

彼はPRIDEが消滅したとき、15歳から始めたMMAがすでに15年目に突入し、一度休もうと決意します。その前には1年間に5試合というハイペースで試合をしていたようです。今のMMAでは平均して年に3回ですから、かなりの負担であることは間違いありません。肉体は相当に疲弊していたのでしょう。そして復帰を決意した2年後にブラジルのローカル大会に出場した彼は、そこで膝十字靭帯を断裂してしまいます。原因はケージとマットの間に足を挟んでしまったことでした。1Rにその大怪我を負いながら、彼は辛うじて判定で勝利します。しかしそれによって彼の復帰プランは大きく変更を迫られます。

余談ですが、ローカル団体のケージで変な隙間があるという話をたまに見かけます。以前足の親指を怪我してへし折れてしまった写真を上げていたファイターがいましたが、彼も練習中にマットの隙間に足を挟んだことが原因でした。特にケージは金網際に押し付ける攻防が多いので、そういう場所に隙間があるのは選手生命を奪ってしまう可能性があります。ローカルMMAが盛んなのはいいことですが、安全面での管理が不十分な団体も多い気がするので、そろそろMMA全体である程度の安全指針みたいなものが欲しいですね。せめてMMAを統括するコミッションがあればいいんでしょうが、現状ではローカル団体において安全面の不備というリスクが一定以上存在しているように思います。

本題に戻ります。膝十字靭帯断裂はMMA選手にとても多い怪我です。マイケル・ビスピン曰くレスリングの練習がかなり危険なようです。ウェルター級王者のGSP、そしてバンタム級王者のドミニク・クルーズなども同じ怪我です。GSPは靭帯再建手術が成功しましたが、ドミニク・クルーズは手術後のリハビリで怪我をして2年近く戦線離脱する羽目になっています。この怪我は下手をしたら選手が引退せざるを得ないものの一つです。仮に復帰しても、そのパフォーマンスが大きく落ちてしまう可能性があります。

そして2010年、いまだ怪我したままの足で彼は友人のホジェリオ・ノゲイラと共にデイナ・ホワイトに会いに行きます。UFCに参戦するためでした。しかしデイナは彼に「他団体であと一勝するように」告げたと言います。私は実績的に十分な気がしますが、やはりPRIDE消滅から3年近く経っていたこと、そして2007年の怪我をした試合のパフォーマンスが響いたのかもしれません。

そして膝も回復し、UFCを目指してトレーニングを開始した矢先に、彼は今度はもう片方の膝を怪我してしまいます。こちらも靱帯断裂だそうです。あまりにも運が無さ過ぎます。彼はそのためにストライクフォースのオファーも断り、完治するまでは戦わないと決めたようです。

つまり、彼が表舞台に出てこなかったのは復帰しようとするたびに大けがを負っていたからでした。両膝の靭帯の怪我というのは選手にとって致命的です。彼は今年末に手術をし、そしてさらにリハビリや練習で1年間を必要とするため、彼が戦線に復帰するのは早くても2015年以降になります。彼はその時すでに36歳です。しかし彼はまったくそれを気に病むところはありません。復帰を目指して治療をする一方で、彼はいくつものことに着手しています。

まず一つはジムの建設です。彼は今住んでいる自然豊かなイタコアティアラをとても気に入っているようで、そこを離れたくないために全てが自宅で済むような設備を整える気でいます。それも、世界最高峰の戦いに備えることのできる設備を、です。これはかなり興味があります。彼が望む完璧な設備とは何か、特にアローナはウェイトをしないということでも有名ですので、ジムではどのような器具を使うのか見てみたいですね。

スパーリング・パートナーもなんとかするそうです。意外なことに彼はノゲイラ兄弟やアンデウソン・シウバと仲が良いようで、昔からリオまで出かけてスパーリングはしていたようですね。ただイタコアティアラを愛する彼は、リオの都市部にまで出向くのも嫌なようです。パートナーもなんとかなるというニュアンスなので、充実のジムを作って逆に彼らを自分の所に招待するつもりなのでしょうか。これで彼らがイタコアティアラに来てくれるようなら、いよいよ彼のジムがどんな設備か気になりますね。

二つ目は後進の指導です。元々柔術の超がつくエリートです。柔術の指導だけでも相当な人が来るでしょう。確か彼はブラジルの貧しい若者に格闘技を教えることで、道を外れる若者たちを救いたいとも言っていたはずですので、その熱意は本物です。彼は試合では孤高ですが、プライベートはすごい情に厚い感じですね。皆を指導して、彼らが成長するのを見るのが好きなんだ、というセリフは早々言えるものではありません。他人の成長や成功を喜べるかどうかというのが、その人間の本質を見抜く一つの指標のようにも思います。きっとアローナはとても素敵な人なのでしょう。

そんな彼ですが、試合は6年間に1回だけ、気になるのはその収入源です。いくらブラジルの物価が安かったとしても、6年間もそのファイトマネーだけで生活するのは不可能です。私はコーチをやって金を稼いでるのだと思っていましたが、なんと彼にはいまだにスポンサーがついていて、彼らが援助してくれていたようです。ついているスポンサーはモスコヴァとクイックシルバーだそうです。アローナはサーフィンでも相当な腕前らしいので、そちらのほうのスポンサーかもしれませんね。イケメンでちょっと胴が長いけどスタイルがよくて、さらに柔術の使い手でMMAでも実績があるとなれば、モデルとしてはうってつけです。ちなみにモスコヴァは調べたらアンダーウェアの会社で、トップの写真でアローナが着てるTシャツがモスコヴァのものです。値段はものすごい良心的でした。アローナファンとして、今度ピッチンピッチンのパンツとTシャツを買ってみようと思います。

こうやって選手が落ち目に入ってもスポンサーを継続してくれる企業はとても好感が持てます。まあ負けてあっさり見捨てるのでは企業イメージが最悪なのもあるでしょうが。ただこうやって企業が選手に投資してくれるおかげでスポーツが成り立っていますので、ファンとしてもこういうのはとてもありがたいことです。

そして色々な人に支えられてきた彼は、二度の大怪我と現在35歳と高齢なこと、そして何年もブランクがあることなどをすべて踏まえたうえで、何一つ自分の夢を諦めていません。彼は今も、MMA最高峰であるUFCの頂点に立つことを目指しており、そしてすべての選手を倒すことを考え続けています。それは現ライトヘビー級王者、防衛記録を更新し続ける若き怪物ジョン・ジョーンズも例外ではありません。

彼は今も熱心に試合を見て、そして分析に勤しんでいるようです。そして彼はリーチ差と体格差に攻めあぐねている選手達は戦い方を間違っていると見ており、どうも何らかの対応策を持っているようです。そしてそのことから考えて、グローバー・ティシェイラはジョーンズに勝てないだろうとも判断しているようですね。彼は具体策については語りませんでしたが、何やら思うところがあるようです。うーん、ものすごい気になります。

ケージに関してですが、彼は怪我をした試合で一度ケージを体験していますが、リングと違ってかなりのプレッシャーを受けたようです。しかし彼としてはその重圧が性に合うようで、ケージの中をまるで我が家のように感じたと言っています。私ならそんな家は即引っ越します。たぶん緊張状態が続いて満足に食事もとれないでしょう。しかしブラジリアン・タイガーは猛獣だけに檻との相性がすこぶるいいようです。彼はファイト・スタイル的にケージのほうが適しているというのもあるでしょう。あのタックルを使うならば金網のほうがずっと有効なはずです。クリンチでの攻防なども彼は長けてそうです。

世捨て人かと思いきや、ちゃんと彼は最先端のMMAを研究しているしUFCファイターたちとも交流があるようですので、たぶんブランクや技術差というものはないでしょう。これはかなり心強いですね。山に籠って誰とも関わらないような生活をし、UFCの試合もろくに見ていないんじゃないかと心配してました。むしろ試合を見てあれこれと作戦を考えることを楽しんでいたようです。

また彼の体重に関する意見も注目に値します。最近減量での死亡事故があったこともあり、計量についての議論が再燃している最中でした。そんな中、彼は当日計量支持派のようです。元々ウェイトを嫌ったり大自然に身を委ねることを好んだりとナチュラルであることを好む人のようですが、そんな彼からすれば試合時の体重から10キロ以上も減量して下の階級で試合するような奴は「臆病者」だそうです。同じ体重で試合するために計量があるんだから、試合時と同じ体重で計量しろよ、馬鹿じゃないのというのが彼の意見です。虎は生まれながらに強いのだ、というある漫画のセリフを思い出してしまいます。彼のいうことはごもっともですし、またこの人は体重差を覆して勝ってきた人でもありますので、なおさらそういうことを軽んじているのかもしれません。加えて彼はとても競技志向が強い人ですので、そういうところでの平等性というのをとても大事にしているのかもしれませんね。

しかも彼はここ10年間、見た目が変わっても体重はほとんど変化がないそうで、常にライトヘビー級の体重を維持し続けているようです。それもすごい話です。途中で30歳に突入しているのでホルモン・バランスも変化しているはずなのですが、むしろ彼は以前よりもスリムになった上に相変わらずいい身体をしています。今すぐにでも試合に出れそうな感じです。

ちなみに体重がどれくらい試合に影響するかという点に関して、先日のジョン・フィッチの発言を引用したいと思います。ケイン・ヴェラスケスとダニエル・コーミエのどちらが強いのかという意見に対して彼は言いました、もし全ての技術が同じでフィジカル的にも同等であるのならば、体重差が試合を決定するのだと。つまり、本来ヘビーの体重ではないダニエル・コーミエよりもケイン・ヴェラスケスに金を賭けるべきだ、とのことです。

ヒカルド・アローナは顕在でした。そして今もMMAの頂点を目指して静かに己の爪を研いでいます。彼は言いました、UFCはすべてのファイターのゴールだと。彼がMMA選手である以上、彼の目指すものはただ一つ、世界中でベストの人間になることだけです。彼は今自分が必要だと思うものを一つ一つ、確実にこなしてその目をUFC王者ジョン・ジョーンズにぴたりと据えています。

年齢のこと、怪我のこと、金のこと、UFC参戦までの道のりのこと、考えれば考えるほど彼の目標は不可能なように見えます。しかし彼はそんなことには目もくれません。彼は格闘技が好きだし、試合が好きだから今も現役を続けるだけですし、そして彼は自分の体がもうこれ以上どうにもしようがない、という時が来るまで戦うことをやめる気はないようです。

どんな世界に生きようと、人間が生きることは戦うことです。相手、舞台、ルール、そのすべてが違うだけで戦っていることには変わりがありません。そして戦う以上、最も高みを目指して戦うべきだと私は思っています。それが自分の限界を突き破る唯一の方法です。

先日川尻選手がUFCへの参戦を表明しました。彼もまた現在35歳と高齢で、ここ数年は怪我によって試合をできない日々が続いていたそうです。世界中が彼の参戦を遅いと言い、そしてUFCの王座は無理だろうと思っています。

しかし彼はそれでも構わないのだ、と言いました。たとえ躓いてボロボロになっても、前に進まないよりはマシなのだと。格闘家である以上世界最高峰の舞台で戦いたい、彼は己の夢のためにその一歩を踏み出しました。彼はツイッター上で家族のため、日本のMMAのためではなく自分のことを優先した、と申し訳なさそうに言っています。しかしそれは間違っていることをはっきりと指摘させていただきます。

彼が自分の夢のために世界の頂点を目指して戦うこと、それが結果的に家族のため、ひいては日本のMMAのためになるのだと私は思っています。川尻選手の戦う背中を、今大勢の人が見ています。彼が前に突き進んで道を切り開けば、その道を彼の後進たちが続いていきます。彼がUFCでその爪跡を残せば、それを目印に若いファイターたちが進むべき道を見出していくのです。だから決して後ろを振り向かないでほしいと思います。ひたすらに前に向かって走り続け、そして前のめりに倒れてください。貴方の戦う背中が日本のMMAを奮い立たせ、そして挑戦する気概を与えるのです。

ギャンブルというのはハイリスク・ハイリターンに賭けるのが基本です。そしてMMA選手という職業はギャンブル要素が極めて強いものです。彼らは勝てば勝つほどに莫大な金を得られますが、負ければ何も得られません。つまり格闘技とは、選手が自身の命をベットして行うギャンブルです。スポーツ選手は基本同じです。

そしてそんな中でも、究極のハイリスクは一番競争の激しい場所に行って、一番強い奴と戦うことです。つまり現状ではUFC王者を目指すことです。確かにそれはハイリスクです。強豪だらけということは、それだけ勝率が低いからです。しかしそれは結果的にリターンが一番大きいものでもあります。

たとえば川尻選手はツイッターでカブ・スワンソンとの対戦を希望しましたが、海外の記者はそれに対して「勝てばランキング5位以内になる」と言っていますね。確かに川尻選手には厳しいですが、勝てばチャンス、名誉、金を一気に手に入れられるわけです。しかし負ければこれまでの評価を失います。しかし、このリスクは十分にリターンに見合ったものです。

逆にもし15位以下の選手と肩慣らしの試合をした場合、勝っても大した評価も金も得られませんが、もし負ければ彼は凄まじいまでの評価の失墜を招きます。実は格闘技では、ローリスクの試合を受けた場合のほうが、結果のリスクははるかに大きいのです。

なので格闘家になった以上、アローナのようにたとえ自分がどんな状況だろうと頂点を目指すのが一番リターンが大きいのだろうし、強い奴を望んだ方が結果的にリスクも低く抑えられるように思います。確かに勝率は下がりますが、評価の失墜は少ないでしょう。アローナは感覚的にその辺を理解しているのか、当たり前のようにハイリスクを望みます。

そしてそれは同時に、自分を最も成長させる方法です。モチベーションも高まりますし、周囲のレベルが高いので否が応でも自分の実力も伸びていきます。失敗する確率が高いと言うのは、それだけ学ぶ機会が多いということでもあります。そうやって壁にぶつかるたびに足掻いた経験は、その後に間違いなく役に立つはずです。決して無駄なことではないのです。

そしてギャンブルが一番面白いのもハイリスク・ハイリターンの時です。王座戦が一番興奮することからもそれは明白です。互いに失うものがあり、そして勝って得られるリターンが莫大なために私たちはそれにのめり込むのです。危険な賭けに興奮するのは人間の本能です。だから基本的に好かれる選手というのは、究極のギャンブルに挑む人たちです。常に挑戦してでかいリスクを負って戦うほどに、その試合はエキサイティングになるからです。トーナメントも勝ち進むほどにハイリスク・ハイリターンになるから面白いのです。

かつて世界を切り開いた人間は、すべてギャンブラーたちです。未知の大海原に船出したもの、神のものだった空に飛び立ったもの、この星の外を目指して打ち上げられたもの、そういう圧倒的に低い勝率のギャンブルに挑む大馬鹿野郎達が世界を広げていきます。そして彼らの陰には、ギャンブルに負けて消えていった大勢の敗者がいます。しかし全員がギャンブルを忌避していけば、世界はそれ以上広がらないのです。格闘技でも同様です。たとえどんなに厳しかろうと、頂点を目指して飛び込む奴が日本のMMAの未来を切り拓きます。

「ザ・ブラジリアン・タイガー」ヒカルド・アローナは、絶望的な状況でもなお世界の頂点に立つことを考えています。夢見るのではなく、できることをすべてやって考えているのです。私は彼が再びケージに戻ってくる日を今も待ち続けています。たとえ彼が戻ってこれなくても、私は彼が戦い続けたことを決して忘れないでいようと思います。ブラジルの孤高の虎は世界の潮流から外れてなお、今もその輝く獣の瞳を世界の頂点に据えつづけ、そして日本の裏側で今日も戦い続けているのです。

2 件のコメント:

  1. アローナ・・・!!以前、サーフィンに夢中で格闘技への熱意が切れたという話を耳にしましたが、そんな心配無用でしたね。
    ランペイジやショーグンとの激戦に加え、イケメン&冷徹という濃いキャラなので私もずっと記憶に残ってました。そんな彼がまた格闘技の舞台で、しかもUFCで見られるかもしれないと思うと居ても立ってもいられないですww

    復帰への道筋を冷静に考え、持ち前の牙と爪を研ぐ虎・・・痺れます
    私もピッチピチのアンダーウェア着てアローナの復帰に期待します!

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    1. 希少なアローナファンの方からコメントいただけるとは!ありがとうございます。彼は絶対にケージで映えます。

      カッコいいですよね。ちゃんと地に足をつけて復帰の可能性を考えているところがいいです。無理かどうかなんてのは自分が決める、と言わんばかりの自信に溢れたところが痺れます。

      それでは一緒にモスコヴァのアンダーウェアを購入して、復帰まで下半身をグイグイ締め付けながら待ちましょう。あのパンツを履きこなせる自信は皆無ですがw

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