2012年11月19日月曜日

UFC154感想と分析

またしても最高の勝負がMMAの歴史に一つ加わりましたね。
以下はあくまで個人的な意見ですので参考程度にどうぞ。
UFC154の結果はこちら 写真は公式より。


MONTREAL, QC - NOVEMBER 17:  Georges St-Pierre (L) fights against Carlos Condit in their welterweight title bout during UFC 154 on November 17, 2012  at the Bell Centre in Montreal, Canada.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

















WINジョルジュ・サンピエールVSカルロス・コンディット
(ユナニマス・デシジョン)

GSPについて

おかしい。怪我する前より遥かに強くなるという化け物が世の中には
いるらしい。怪我をしてこんなに強くなるなら自分もためしに十字靭帯を
ちぎってみようかしら。たぶん歩行不能になるだけだろう。

強さには色々あるけれど、GSPの強さは化け物じみたフィジカルと
ハート、前に出る意志の強さ、そして何よりMMAに対する好奇心と愛情、
探究心なんだとわかった。なぜなら怪我をしてなお進化を続けている
のだから。

パンチは明らかにハンドスピードが上がっている。速い。
何度もコンディットの頭がジャブで跳ね飛ばされていた。
これがフレディやパッキャオとの練習の成果だろうか。
単純なパンチの巧さでは明らかにGSPに分があった。
これからさらに向上するのかと思うと恐ろしい。
もっとボディショットを打つようになったらますます手がつけられなく
なりそうな気がする。コンディットの蹴りの間合いの外にいて、
コンディットが焦れて少しでも前に出すぎたらすかさず打撃か
テイクダウンという攻め方は非常に効果的にコンディットの
戦法を封じてしまった。

レスリングに関しては、膝の怪我というのは実は嘘で、ただ単に
長期休暇が取りたいがためにホラを吹いたのでは、と疑いたく
なるほどまったく劣化していなかった。もちろんコンディットが
TDディフェンスがあまりよくないというのがあるにしても、
8回のトライで7回の成功率はすさまじい。タックルもパンチと
連携させたり、ローをキャッチしたり、パンチに出てくるところに
カウンターであわせたりと多彩。まさにMMAレスリングの完成形と
いう感じだった。蹴りを使うストライカーには最悪の相手だろう。

それに加えて特筆すべきは、トップキープの巧さだ。
テイクダウンをしたら絶対に休まない。ガードからでも殴りながら
ズドン!と四股のようにパスガードしてハーフに持っていく。
コンディットはわかっていてかなり巧く対処していたが、GSPは
それよりもさらに巧かった。パウンドもKOを取るほど振らず、
かといって威力がないわけでもないという絶妙なところ。
思い切り振るとポジションを奪われるリスクが高まるからだが、
その見極めが素晴らしい。だからコンディットにサブミッションで
仕掛けられてもきちんと対処できていた。

精神面と試合運びも王者にふさわしいものだった。
ただがむしゃらに出るのではなく、慎重に、冷静に、そして
圧力をかけながら常に攻めるポイントを探り続ける。多くの人間は
それを待つことに耐えられずに無理に攻めたり、逆に逃げて
距離を取って消極的になったりする。そこをじっと耐えながら
常に前に出て攻めていたのはGSPだった。
コンディットの芸術的な蹴りで頭を蹴り飛ばされて、顔面に
KOレベルの肘やパウンドを落とされて顔面がズタズタになった
直後、脱出したGSPはそれでも休まずに前に出ていた。
あのときのGSPの表情は忘れられない。

結果的に、スタンドでもコンディットと互角に戦えるGSPが、
コンディットより圧倒的に優れているレスリングの部分で優位に立ち、
圧勝という試合だった。試合時間のかなりの部分をトップを取って
GSPが殴っていた。自分は3Rはダウンとその後の追撃を
ラウンド中に挽回できたとは思わないので49-46のポイント。
あとファイトスタイルはライト級の元王者エドガーにとても
似ていると思った。P4Pの1位にエドガーを挙げたGSPだが、
それもすこし納得するところ。



MONTREAL, QC - NOVEMBER 17:  Carlos Condit lands a left footed kick to the head of Georges St-Pierre in their welterweight title bout during UFC 154 on November 17, 2012  at the Bell Centre in Montreal, Canada.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

コンディットについて

最高の挑戦者だった。試合前の表情には胸が震えた。
その目は本当に闘志に溢れていた。ちなみに自分はコンディットが
かなり好きなので実はこっちを応援していた。でも試合後には
もうどっちが勝ったとかはどうでもよくて、二人とも褒めちぎりたかった。
危うく外に出てこの二人の素晴らしさを説いて回るところだった。

スタンドに関して、得意の蹴りが思い切り蹴れていなかった。
明らかに距離が合っていない間合いで蹴るから、前蹴りやローが
空を切ることが非常に多かった。原因は明らかにGSPのタックルと
鋭いジャブのせいだと思う。パンチでは明らかに負けていた。
少しでも踏み込みすぎれば一瞬で転がされる。これではニックを
封じたローも出せない。逆にGSPはかなりいいローを蹴っていた。
パンチではリーチに勝り、そこそこのいいパンチは何度も当ててたし
終盤でもいいのが当たっていたが、それ以上にGSPのパンチを
貰っていたように見える。コンディットはまだまだボクシングを
鍛える余地があるように思う。

しかし3Rに見せた、ワンツーのあと体を沈ませ、GSPが安全圏に逃げたと
思ってすこし気を抜いた瞬間に下から振り上げるような軌道で放った
左ハイは凄まじかった。GSPはまるで見えていなかった。奇麗に側頭部を
蹴りぬいた時には、もう立てないかと思った。ただ変則的な軌道のせいか、
すこし軽かったらしくGSPの意識を完全に刈り取ることはできなかった。
アートだと思う。勝負どころで閃く創造的で芸術的な攻撃のセンス。
アンデウソンさんに近いものを感じる。これもまたMMAの醍醐味だ。
追撃もよかったが、GSPが足を使ってコンディットに攻め切らせなかった。

またテイクダウンディフェンスが悪かったとはいえ、ボトムでかなり
健闘したと思う。下からにもかかわらずかなり有効なパンチや肘を繰り出して
明らかにGSPにダメージを与えていた。コンディットはサブミッションも
巧いため、ディアス兄弟と同じくあえてテイクダウンディフェンスは捨てて
いたところがあったのかもしれないが、さすがにGSP相手ではそれは
ただの弱点になってしまった。下からよく戦ったが、それ以上に
上から殴られては本末転倒だ。やはりレスリングの強化が避けて
通れないところだろう。他の選手ならあのボトムからの攻めを
嫌ったところを立てるのかもしれないが、GSP相手ではそれはさすがに
通用しなかった。

またフィジカルにおいてスタミナと体のキレ、スピードでも少しGSPに
見劣りするところがあった。5Rはすっかり消耗して手がまったく出なく
なっていたしスピードも落ちきっていた。まあGSPと比較したら
皆見劣りするような気もするが。

総じて、決してコンディットは悪くなかった。むしろ最高だった。
そして持てる全てを使い切って戦い抜いたと思う。それでも届かなかった
ということは完敗だろう。試合後にコンディットはものすごく悔しそうだった。
早々に次はもっとうまくやる、というようなことを言っていた。
この敗戦は間違いなくコンディットをさらに強くすると思う。
ウェルターにはまだまだ強い奴らがいるので、そいつらを倒して
次こそはGSPを倒して欲しいと思う。


WINジョニー・ヘンドリクスVSマルティン・カンプマン(左ストレートによるKO)

ああああああああああああああああもおおおおおおおおおおおお
カンプマンさん顎強くなったから大丈夫とか言ってたのに
それはねえよおおおおおおおおおおおおおおおお!
なんなの?バカなの?ハゲなの?ちくしょおおおおおおおお!



試合前、少しカンプマンさんが堅くなってたように見えた。
反対にヘンドリックスは手を合わせた後、半笑いだった。
案の定カンプマンさんは堅かった。明らかに力んでたと思う。
それに対してヘンドリクスは体を小さくユラユラ揺すりながら
フットワークを使ってリラックスしていた。
試合結果は、あの顔からは想像もつかないような素早いステップインから
コンパクトな左ストレート一撃。そんなに威力があるようにも見えない
打ち方だったが後ろに仰向けにぶっ倒れたカンプマンさんを見るに
相当な威力なんだろう。あれは速いフットワークによるものなんだろうか。
フィッチに続きカンプマンもワンパンチKO。これで決してフィッチ戦が
マグレじゃないことを証明した。

かなり遠い間合いから体を沈めて右フックを振りながら入り、
返しの左ストレートで一撃。カンプマンさんを見るに、明らかに
届くと思っていないような反応だった。フィッチさんの時もかなりの
遠い距離から入り込んでの一撃だったし、やっぱりフィッチさんも
見えてないというか当たると思っていなかったような貰い方を
してたような気がする。ヘンドリクス開眼したのか!?

これでジョニヘンは次期挑戦者の資格を手に入れた。
GSPにもこの見えないレフトハンドが炸裂するのか?
正直アンデウソン戦よりも先にヘンドリックスとやって欲しい。
敗れたカンプマンは実力をまったく出し切れずに負けてしまい
あまりにも気の毒。多分相当ショックだろう。
とりあえず次戦はコンディットとのリマッチがいいと思う。

今回はメイン2試合がとても対照的な結果だが面白かった。
後記憶に残っている試合というと、ローラーの試合が
ひどかったのと、ホーミニックさんが完全にイップス状態で
4連敗。連敗脱出を焦って無理に攻めすぎている。
これはダメな攻め方だと思う。いいのを当ててもそれ以上に
被弾がひどい。いっそ階級を下げてやり直したほうがいいかも。

以上です。今大会は大満足の内容でした。
MMAの醍醐味が全て詰まった、最高のタイトルマッチでした。