2013年3月13日水曜日

UFCJapan2013 感想と分析part3 岡見vsロンバート他

メイン2試合以外の寸評です。
以下は個人的な意見ですので参考程度にどうぞ。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Yushin Okami punches Hector Lombard in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

写真はUFC公式より

ミドル級 5分3R
WIN 岡見 勇信 vs ヘクター・ロンバート
(スプリット・デシジョンによる判定勝利)
fightmetricによるデータはこちら

サンダー、ライトニングの良さを掻き消して勝利

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Yushin Okami punches Hector Lombard in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

岡見の実力がきちんと発揮された試合だった。
1,2Rの展開は完璧な運び方だと思う。距離が少し
近いと感じたものの、打撃でも打ち負けることはないし
ディフェンスもきちんと出来ていた。特にジャブが
素晴らしく、ヘクターの動きを完全に抑えることが
出来ていた。またクリンチでの膝も素早く、身長の
ある岡見にはうってつけの武器だ。ローも織り交ぜて
きちんと削っていた。この右ジャブが打てるのは
日本人では稀有だと思う。天田とのボクシング
練習の成果は間違いなく出ており、これまで
以上にパンチがシャープでよく当たっていた。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (R-L) Yushin Okami knees Hector Lombard in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

またクリンチでの攻防ではさらに圧倒。柔道出身で
フィジカルの強いヘクター相手にTDを何度も取り、
トップキープをし続けることができたのは岡見の
クエストでの練習の賜物だろう。数は少ないものの
パウンドへのトライはベルチャー戦よりも積極的で、
パウンドのキレも前回の試合よりよさそうに見えた。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Yushin Okami takes down Hector Lombard in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

しかし3R、もはや恒例行事となりつつあるピンチが
訪れる。開始直後のロンバードのラッシュに下がり
ながら対処するものの明らかに慌てており、結局
テンプルあたりに一発いいのを貰ってダウンを
喫しかけていた。それでもギリギリ持ちこたえて
立て直せたのは1,2Rでロンバートをきっちり削り、
スタミナをロスさせていた部分が大きいだろう。

タイトルショットの前に改善すべき問題点

気になったのは岡見のスタミナ面だ。フィジカルの
強さはあの筋肉ダルマ相手に組み負けない時点で
相当なものだとは思うが、一方で3Rに必ずピンチに
なるのはスタミナ不足で集中力を欠いてるからでは
ないかと思った。3R開始時には汗が吹き出て口を
開けて息をしていた。攻めている側であるにも関わらず
あそこまでスタミナをロスするのは、相手をきちんと
漬けて勝つ戦略を取る以上問題なのではないだろうか。
5Rフルにあの戦い方をできるような体作りをして
こなければこれからもスタミナ切れの時点で
ラッシュをかけられて負ける可能性が捨てきれない。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Hector Lombard punches Yushin Okami in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

また、ラッシュをかけられたときの対処がやはり
まずい。メンタルの問題だろうが、一気に詰められると
見てわかるほど慌てだし、ひたすら下がるだけというのは
相手に最高の一撃を加える隙を与えてしまう。
結局ラッシュを凌ぐために残りのスタミナを全て
使い尽くしてしまい、その後のクリンチでの攻防に
耐えられずにすぐに倒れこんでトップを許していた。
下がりながらでも打てる打撃を習得するか、
ラッシュに来ると判断したらカウンタータックルを
狙ってグラウンドに持ち込むなどの対処をしたほうが
安全だろう。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (R-L) Hector Lombard punches Yushin Okami in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

またスタンドでジャブは素晴らしいがコンビネーションが
イマイチなのと、もう少し頭の位置を動かすディフェンスを
したほうがいいと思う。ボディワークがよくない印象だ。
頭の位置がほとんど変わらないので、ボクシングが
巧い選手相手だとステップインしたときにカウンターを
あわせられたりしやすいと思う。このあたりで何らかの
改善が無ければ、アンデウソンとの再戦で勝つのは
至難なのではないだろうかと思う。

とりあえずこれからも漬けて判定で勝つならば
さらなるスタミナ強化を、もしそれが無理ならば圧倒的
有利な1,2Rでフィニッシュを狙う戦略をとるのが
いいのではないかと思った。ともあれこれで
念願のホームで大金星を飾り、ミドル級ランクを
3位まで上げることが出来た。この試合を乗り越えた
ことは岡見にとって最高の自信となっただろう。
この勝利をキッカケに一気に飛躍することを
願っている。

一方で敗れたロンバートは、案の定リーチの差で
かなりの不利に立たされた。自慢のフックも岡見の
深い懐に入れないまま奮う機会は中々訪れず、
岡見のジャブで顔面をハードに打たれてすっかり
タイミングを逃していた。岡見のパンチに完全に
面食らっているようだった。またクリンチでもグラウンド
でも岡見に大分遅れを取っており、やはりボーシュに
判定負けというのが相応の実力ということだろう。
スタミナのある1Rのうちに3Rのラッシュをやっておく
べきだったかもしれない。年齢も36歳と高齢だ。
これから先タイトルへの道は少し厳しいと思う。
ウェルターに落としたほうがよりいい成績を残せる
のではないかと感じた。

またこの試合、判定がスプリットになったのは
理解に苦しむところだろう。1,2RはWOWOWの映像で
確認しても岡見が明らかに有利なラウンドで、ラウンド
マストの採点方式ならば岡見勝利、3Rダウンとして
2ポイント差でも最悪ドローの判定になるはずだ。
ファイトメトリックではロンバートのスタンドがかなり
多く当たっていたと出ているが、3R以外ではそこまで
被弾していたようにも見えないのでこれは納得の
できないところだ。

ライト級 5分3R
WIN ディエゴ・サンチェス vs 五味 隆典
(スプリット・デシジョンによる判定勝利)
fightmetricによるデータはこちら

ファイアボール・キッド 意地と可能性を見せた敗戦

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  Takanori Gomi prepares to enter the Octagon before his lightweight fight against Diego Sanchez during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

五味のUFCデビュー以来最もいい仕上がりでの
試合だった。計量でもバッキバキとは言わないまでも
バキ、くらいはあり、これまでより遥かにシェイプがよく、
表情も気合が漲って素晴らしいものだった。
会場で思わず大声で五味コールをしてしまったほどの
期待感を漂わせる顔つきだった。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Takanori Gomi and Diego Sanchez trade punches in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

試合内容で驚くべきはパンチの打ち合いで五味が
遥かに勝っていたことだ。元々パンチを当てるのが
日本人では破格に巧い選手だったが、この試合では
足を使っての伸びるステップ・ジャブ、そして
コンビネーションでのボディフックと素晴らしい
攻撃を見せた。自分から前に出てどんどんと手数を
出していくのも非常に好印象だった。組み合わせて
出すローキックも速くて威力があり、これはもっと
多用してもいいくらいの武器だろう。五味の鋭い
ジャブで、サンチェスの顔面はズタズタになっていた。
それにしても破壊力のある拳である。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Takanori Gomi punches Diego Sanchez in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

また懸念されていたTDディフェンスも大幅に改善を
見せており、クリーンTDは一回だけで一つの
タックルには膝を、そのほかのタックルはきちんと
切って対処できていたのは完璧に近い出来だ。
グラウンドでも研究されていたであろう足関節を
慌てずに対応して回避していたし、グラウンドで
無理にやりあわなかったのもいい判断だった。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Takanori Gomi punches Diego Sanchez in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

フィジカルも向上しており、タックルへの反応も
よくパンチも走っており、体のキレは十分だった。
スタミナ面でもあまり不安は無く、3Rに入っても
まだタックルを切れていたし足も動いていた。
木口道場での鍛錬の成果だろうか。
これまでのような失速はあまり見られなかった。

ただ広いオクタゴンでサンチェスをどうしても
捕まえきれなかったのは研究不足が露呈した
とも言えるだろう。せっかく相手に金網を背負わせて
いても、そのまま中央に戻ったりと現代MMAでの
有利な戦い方を単純に知らないところが散見された
のも気になるところだ。ハードパンチャーでしかも
ボディが得意ならば、金網に追い込んでから
磔にするようにボディ打ちをして追い込んだり、
サイドに逃げるところにフックを引っ掛けたり
するなどの横に逃げさせずに嵌める技術が
欲しいところだ。ライトでは元々体格的には
不利なところがある。フットワークで一定
以上の向上が見込めないのであれば
フェザー転向も視野に入れるほうがいいと
思う。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Diego Sanchez kicks Takanori Gomi in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

またサンチェスのミドルキックを何度かまともに
食らっていたのは痛恨のミスだった。スタミナを根こそぎ
奪われてしまうのであのあたりは反応するか距離を
潰してディフェンスをしておきたいところだ。

判定では手数と有効打で五味が勝っていたと
思ったが結果はスプリットでの判定負けだった。
サンチェスは下がりながらいい蹴りを出しては
いたが、手数でそこまで上回っていたとも
思えないし足関節も惜しいというほど極まって
いない。TDも一回の成功だ。1Rは少なくとも
そのTDを上回る優勢を五味が取っていたと
思うのだが・・・。ファイトメトリックでのデータは
五味の手数が勝っていたと出ている。デイナ
社長も五味の勝利であるとし審判を批判しており、
かなり微妙な判定だったのは間違いない。

試合後、五味は右拳を粉砕骨折する大怪我を
試合中に負っていたことが判明した。レントゲンを
見る限りはっきりとコナゴナになっており、よく
この状態で最後まで試合が出来たと感心した。
1Rで中に入りながら頭を下げたサンチェスの
額にパンチが当たったシーンがあったがあれが
原因だろうか。せっかく進歩を見せてくれたところでの
長期の戦線離脱は非常にもったいないところだ。

かなり僅差の判定での敗北となったが、当の
本人は「この競技じゃそんなこともある。」ととても
あっけらかんとしており、こういうところが五味が
ファンを惹き付けてやまないところだろう。五味の
口ぶりからは「KOできない自分が悪い。」とでも
言いたげな印象を受けた。さすがスカ勝ちを標榜
する男、この潔さや勝負への考え方は本当に
カッコイイと思う。早く次の試合が見たいので
体はバッキバキに、拳はバッキバキを治して
オクタゴンに戻ってきて欲しい。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Takanori Gomi punches Diego Sanchez in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

対するサンチェスはジャクソンズに行って危ない
メンタルを多少改善させてきた。試合運びはこれ
までのものよりだいぶ安定していた。無理をせずに
距離を維持して五味の距離で打ち合わない、という
徹底した戦略に基づくものだった。ひたすらに足を
使って距離を取るのもベタ足前傾姿勢の五味の
パンチを無効化し消耗させるものだったのだろう。
誤算だったのはサンチェスよりも五味のパンチの
ほうが上だったことだろうか。判定で勝利をあげた
ものの内容はかなり微妙であり、ライトで上位を
目指すにしてもあまり期待できないところだ。

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  Diego Sanchez (R) reacts after defeating Takanori Gomi (L) in their lightweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

バンタム級 5分3R
WIN 水垣 偉弥 vs ブライアン・キャラウェイ
(スプリット・デシジョンによる判定勝利)
fightmetricによるデータはこちら

泣き虫スナイパー、悲願の日本大会勝利!

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (R-L) Takeya Mizugaki punches Bryan Caraway in their bantamweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

ガッキーのスタンドが光った試合だった。素晴らしい
ボクシングテクニックで打撃ではかなり優勢だった。
2Rにカウンターを貰ってダウンを喫するもダメージは
浅く、3Rも体のキレが落ちることなくスタンドでは
有利に運べていた。特にボディをしっかり混ぜて
キャラウェイのスタミナを削ったのは3Rになって
かなり活きて来た。キャラウェイは3R明らかに
スタミナが切れて失速し、スタンドを嫌ってやたらと
組み付いてばかりいたのでも明らかだろう。

2Rを落としたとしても1,3Rは水垣が取っており、
全体を通しても水垣が優勢だったと思うのだが
判定はなぜかスプリット。これも微妙なところだと
思う。そんなに割れるほど接戦だったろうか。
1Rにキャラウェイがそこまで優勢だったとは
思えなかった。しかし勝利は勝利だ。判定結果を
聞いて泣き崩れる水垣。完全に泣き虫キャラを
確立してしまった。

これで水垣もまた悲願の日本大会勝利を飾った。
フィジカルもボクシングも向上していて確実に
努力の成果が実っているといえる。ただ一方で
フィニッシュが見えてこなかったのは残念なところだ。
前回見せたパウンドが今回見ることが出来なかった
のもすこし物足りなかった。だが成長株の若手を
抑えて勝ち星を一つ積み重ねただけでも十分だ。
次は恐らくランキング上位に入っている選手との
対戦になるだろうと思う。次が正念場だろう。
さらなる進化を期待したいところだ。


SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  Takeya Mizugaki reacts after defeating Bryan Caraway in their bantamweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

ミドル級 5分3R
WIN ブラッド・タヴァレス vs 福田 力
(ユナニマス・デシジョンによる判定勝利)
fightmetricによるデータはこちら

福田、パンチ技術の差で完敗

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Brad Tavares punches Riki Fukuda in their middleweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

この試合では残念ながらジャブではっきりとした
差がついてしまった。タヴァレスのジャブがかなりの
精度と威力で福田の顔面を削り続け、福田は遠い
間合いでの戦いを強いられて有効打で明らかに
負けていた。1Rでスタンドに分がないと判断して
もっと積極的にTDトライをするか、蹴りを多用した
ほうがよかったかもしれない。逆にタヴァレスは
恵まれた体格に優れたパンチ技術、そしてスピード
もあり年齢も若く、これからの成長が見込める
いい選手だと思う。

フェザー級 5分3R
WIN ロニ・ヤーヤ vs 廣田瑞人
fightmetricによるデータはこちら

廣田、TDディフェンスの悪さ改善されず

SAITAMA, JAPAN - MARCH 03:  (L-R) Rani Yahya takes down Mizuto Hirota in their featherweight fight during the UFC on FUEL TV event at Saitama Super Arena on March 3, 2013 in Saitama, Japan.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

フェザーに階級を落としてきた廣田、シェイプは
素晴らしい出来でかなりの期待感を漂わせていた。
しかし序盤からヤーヤは完全にスタンドを捨てて
グラウンド一辺倒。露骨なまでのタックル狙いにも
対応できず、クラッチを切れないままずるずると
グラウンドの展開が続いてしまった。スタンドでの
パンチはいいもののその状態を維持するための
技術が無かったのが致命的だった。それでも
グラウンドでは良く凌ぎ、もう完全に極まったかと
思われた肩固めも謎の動きで外して判定まで
持ち込めたのは素晴らしいがんばりだったと
思う。

3Rに入り、攻め疲れで完全にガス欠を起こした
ヤーヤを仕留めるところまで行って欲しかったが
廣田のガスもあいにくほぼ空になっており、KOを
取れるほどのパンチを当てきることができずに
判定で敗れてしまった。試合後にはヤーヤが
疲労で立ち上がることが出来ず、その光景だけを
見れば廣田の勝ちにも見えたが当然ながら
ユナニマス・デシジョンにより敗北した。

正直ちゃんと対策をしてれば十分に勝てる
相手だったと思う。フィジカルでは廣田に相当な
アドバンテージがあったのは間違いない。
日本人選手に多い傾向の一つだが、廣田も
また自分の得意な土俵にどうやって相手を
引きずりこむかという戦略が乏しいと感じた。
ヤーヤのように、とにかく相手を自分が勝って
いる領域に引きずりこむために何をするかが
大事だ。廣田であればまず絶対にTDをさせない
くらいの技術が必要になる。ましてやヤーヤは
そこまでの打撃のプレッシャーも無く、明らかに
タックルを狙っていたのだからあれを序盤で
切れないのではこれから誰と対戦しても
あの弱点を狙われるのは明白だ。ケージの
経験が不足しているのもあるのだろうが、
ここが改善されない限り上位に食い込むのは
難しいだろう。

大会総評

タイトルマッチが行われた去年から1年ぶりの
UFC大会だった。今回はタイトルマッチがない
Fuel大会だったが、それでも破格の豪華さの
カードが並んだ大会だったと思う。ラスト2試合の
おかげで大会は大成功となった。また水垣と
岡見という有望な日本人選手が勝利できたのも
嬉しい。特に岡見はこの試合を乗り越えたことで
またしてもタイトルがはっきりと見えてきた。次は
ビスピンとの対戦を希望しているという岡見だが、
これはかなり楽しみだ。

自分はUFC初観戦となった。S席での観戦
だったがかなり楽しめた。会場の雰囲気は
WOWOWで見るものと違い、聞こえてくる歓声も
桁違いで驚いた。逆にWOWOWはもっと会場の
音声を忠実に再現するようにしないと、テレビ
では会場の盛り上がりやノリが伝わらずに微妙に
実際の試合とズレのようなものが生じてしまう
ような気がすると思う。あの歓声は少なからず
判定や試合展開に影響を与えていると思う
からだ。

ただ、S席の値段に見合うかというとそこまでの
お得感はなかった。もちろん世界規模のイベントで、
この試合を見たいがために日本に旅行に来てる
ような人たちも見受けられたのでこれが価格と
しては適正かもしれないが、少し会場が大き
すぎるような気もする。一番適正なのはやはり
8000人~1万2千人くらいの規模じゃないかと
思った。たぶん一番客が満足する会場規模は
6000~8000人くらいじゃないだろうか。
UFCでは今後数大会を日本でやるかもしれないと
いうことだが、可能であればもう少し小さい会場で
やっているときに見に行きたいと思う。
海外でも1万5千人はかなり多い観客数であり、
日本だからと無理に埼玉スーパーアリーナを
使うことも無いだろう。むしろ本当に観戦イベントと
して根付かせるならもっと小さい会場で数を
こなしたほうがいいと感じた。もちろんアメリカとの
時差などもあるのでそう簡単にはいかないだろうとは
思うが。

いずれにしろ、今回の大会はまずまずの成功
だろう。ファンはいささか懐古主義的なノリが
強い人が多かったような気もするが、それは
日本の格闘技の歴史を考えたらしょうがない
ところだろう。ここから過去の人気を踏まえつつ、
どれだけUFCの面白さをファンに伝え、新規の
ファンを獲得していけるか注目だ。解説の福山氏
などはスポーツとしてのMMAへの理解が非常に
深く、解説も試合をよく見てると思わせる素晴らしい
もので、こういう芸能人の人が情報をどんどん
発信してこのスポーツはどう見るのか、どこが
面白いのか、という視点を知らない人に与えて
いってくれるとさらに根付いていくだろう。
福山氏はちゃんと競技としてのMMAの醍醐味を
理解していて、こういう人がファンでいてくれるのは
とても頼もしい限りだ。これからも彼のような
素晴らしいファンが一人でも増えてくれたら
嬉しいと思う。