2013年5月7日火曜日

クリス・ワイドマン、シウバ戦について語る

クリス・ワイドマンは言う、数年に渡りシウバのための練習をしてきたし、「彼の弱点を見つけた」と。

Chris Weidman vs Jesse Bongfeldt

記者 Matt Erickson
MMAjunkie.comより
画像はUFC公式より

SAN JOSE, CA - JULY 10:   Chris Weidman makes weight during the UFC on Fuel TV weigh in at HP Pavilion on July 10, 2012 in San Jose, California.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

クリス・ワイドマンの自信は不足してはいない、それは確かだ。

そして歴史上最高のファイターと世界的に見なされている男と対峙するに当たって、その余裕は無い。

ワイドマン(MMA9勝0敗、UFC5勝0敗)は7月、UFC162のメインイベントにおいて、ミドル級タイトルを賭けてアンデウソン・シウバ(MMA33勝4敗、UFC16勝0敗)に挑戦する。7月6日、場所はラスベガスのMGMグランドガーデンにおいて開催される。

先週、ニューアークのN.Jにおいて開催されたUFC159の計量に先駆けて行われたUFCファイトクラブ・ファンのためのQ&Aセッションの最中、ワイドマンは言った、シウバとのタイトル戦は彼がMMAを最初に始めた時から準備し続けてきたことだと。

「4年前に私がMMAを始めたとき、私は世界のチャンピオンを倒せると信じなければならなかったし、そうでなければ自分にとってMMAをやる理由など何もない。」とワイドマンは言った。「戦いのリングに上がったとき、私は対戦相手のためにだけトレーニングしてたわけではなく-私はアンデウソン・シウバのために練習していた。」

シウバ、UFCにおいて今だ敗北したことがなく、全ての試合を連続勝利で飾り、そして連続タイトル防衛を記録した彼は、その試合において3対1のオッズで優位である。

しかしワイドマン、ホフストラ大学で傑出したレスラーであった彼は信じている、自分はシウバの座を奪う男になるための完璧な打開策を持っているかもしれないと-それはチェール・ソネンが為しえなかったことであり(二度)、ヴィトー・ベウフォート、デミアン・マイア、そしてその他多くの男達が為しえなかったことだ。

ワイドマンは言った、UFC117におけるソネンの打開策を見て、ソネンが全ラウンドでテイクダウンを取った時にいくつかのヒントを得たと。しかし最終的には5ラウンドの半ばを過ぎたところでアームバー・トライアングル・チョーク(三角絞め)によって捕まってしまった。リマッチでは、ソネンは1ラウンドで再びシウバをグラウンドに持ち込むことに成功したが、その後2ラウンドにおいてTKOで敗れてしまった。

「私はチェールが彼にやったことを見てきた。」とワイドマンは言った。「私は彼の弱点を見てきた、そして思うに私は再び彼の弱点を露にすることができるし、フィニッシュか素晴らしいパフォーマンスができると期待している。たとえば君にちょうど自信が出てきたとする。試合前には言いたいことを何だって言える、だがいざグローブを合わせる時になって、まだ自信を持っているだろうか?私は自分がすることを確かめるつもりだ。」

ワイドマンは言った、その自信は彼をまったく別物に変えてしまうだろうと。彼は信じている、シウバは試合の前に対戦相手を自惚れさせ、さらにはミスに感謝し始めさえするのだ。

ワイドマンはそれが自分に起こらない様にしようと決意している。

「私が最も優先して考えていることは、アンデウソン・シウバは彼と一緒にケージに入る前に、皆を精神的に破壊してしまうということだ。」と彼は言った。「それからひとたび彼と一緒にケージに入ったら、彼はすばらしい仕事を成し遂げて相手にまるでこう感じさせるんだ、『お前はケージの中では俺と釣り合う奴じゃない。お前はひどいもんだ。俺は最高だ。お前はこの試合の活路を見出そうとしているんだ。』と。私が最も大きいと考えているのは私がとても自信を持っているということだ。私は自分のスキルが準備万端なのを把握している。」

そしてその準備されたスキルとは、ワイドマンが言うには、なんと彼のレスリングではない-柔術だ。シウバはブラジリアン柔術の黒帯だ。しかしワイドマンは黒帯によって鍛えられた、その男とは-元UFCチャンピオンのマット・セラだ。

「理論上は、アンデウソンにとって自分は悪夢の対戦相手だろう。」とワイドマンは言った。「理論上はそれを否定できないはずだ。私は明らかにより優れたレスリングがあるし、そして私は信じている、改善を重ね自分はより優れた柔術を身につけたと。私にはカーディオ(心肺機能)と強いフィジカルがあると考えている。この試合では、自分に有利なものがたくさんあると考えている。」

そして今だ相当な差でアンダードッグとなっているにも関わらず、ワイドマンは少なくともオッドメーカーには賛同してもらえるかもしれない。シウバがUFC82でダン・ヘンダーソンと対戦したとき以来、僅差の数字となった対戦相手はいない。

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シウバ戦への意気込みを語るクリス・ワイドマンでした。クリス・ワイドマンはUFCデビュー以来無敗のファイターで、レスリングがベースの体格とフィジカルに優れた選手です。身長は187cmとミドルでは大きく、また力も強いためにテイクダウンにとても秀でています。レスリングの実績においてはフィル・デイビス、ライアン・ベイダーをカレッジレスリングで破っているようです。

彼はデビュー時からアンデウソン・シウバとの対戦を念頭に置いており、そしてこれまでずっと研究してきたようです。特に同じレスリングエリートであり、アンデウソンを過去最も苦しめたチェール・ソネンにヒントを得たとの事です。

アンデウソン・シウバがレスリングが弱点なのは周知の事実です。彼の次の世代であるブラジル人ファイターのジョゼ・アルドやジュニオール・ドス・サントスなどは、アンデウソンに比べてそのレスリングスキルにおいてかなりの進歩が見られています。彼らはそもそもテイクダウンされないことに重点を置いて鍛えています。またテイクダウンをされたとしてもすぐにスタンドに戻す技術にも優れています。この二つはアンデウソンにはないものです。それではなぜ、アンデウソンはいまだに無敗なのでしょうか?

理由は、アンデウソン・シウバは柔術にとても優れているからです。そのためにテイクダウンしただけでは優位に立てず、まともにダメージを与えられないということです。そしてその柔術を最大限に機能させてきたのが「スパイダー」というニックネームどおりの長い手足です。

シウバは上をとられても、その長い手足で巧みにディフェンスをして相手にパウンドを打たせないようにするだけでなく、常に下から肘やパンチを打ち、頭を抱え込んで押さえ込み、そして隙あらば三角締めに絡めとろうと狙ってきます。結果、上に乗って攻めているほうが消耗してしまう、ということになります。そしてスタンドに戻ったときに、スタミナをすっかり使ってしまいディフェンスがあまり機能しなくなった相手に毒蜘蛛の牙を突きたてて一瞬で動けなくしてしまうのです。

つまり、テイクダウンでは相手を完全に行動不能にできない以上、レスリングだけではアンデウソン相手に有利とはいえないのです。チェール・ソネンの敗因はここにありました。彼はテイクダウンをするものの、そこからフィニッシュに行くだけの極めもパウンドも持たなかったために敗れてしまいました。一発で試合を終わらせる武器を持つ相手は危険です。長期戦になってスタミナで上回れなくなれば、その隙を突いて必殺の一撃を食らう可能性が高いからです。

またアンデウソンの戦い方は狡猾で、人の心理を揺さぶる極めて恐ろしいトリックを使ってきます。彼はわざと相手を誘い込み、焦らせ、必死で攻めるように仕向けてきます。焦って攻めればスタミナはあっという間に底をつき、呼吸は上がり視野も狭くなります。つい感情が先走って無理な体勢で攻撃を仕掛けることも増えます。カウンターを得意とするシウバは、この瞬間を待ち望んでいるのです。

ひどく焦って前のめりのパンチを打って体が泳いだフォレスト・グリフィンは、パンチの打ち終わりを軽いジャブのようなパンチで打たれて地面を転げまわりました。ソネンさんは距離を詰めようと無理をしたところを軽く打たれて効いてしまい、焦ってバックハンドブローを空振りしたところに強烈なニー・ストンピングをボディに打ち込まれ、風穴を開けられてしまいました。

ワイドマンが一番気に掛けている点はこの心理戦のようです。試合前の妙に腰の低い、慇懃無礼な態度こそがそのトリックの要であることを看破しています。誰よりも丁寧で誠実そうに見せながら、ケージでは別人のような顔を見せて襲い掛かる。ボクシングコーチのフレディ・ローチも、そのことに非常に驚いていました。このギャップで人は面くらい、動揺し、そして隙を産むのでしょう。さすがワイドマンは大学で心理学を専攻していただけあって、極めて素晴らしい洞察だと思います。

そしてワイドマンがシウバ戦に備えてきた技術とは、レスリングではなく柔術とのことです。これは間違いなく正解だと自分は考えています。理由は先に述べたとおり、グラウンドに置いてレスリングだけではシウバを攻めきれないからです。ソネンに並ぶだけのレスリング力があり、さらにグラウンドで長い手足に対抗できるだけの体格があり、スパイダーの柔術を無効化するか、それを上回る柔術スキルがあれば、理論上はスパイダーを相手に負けないからです。ソネンさんは柔術はからっきし、体格的にも劣るためにガードから一切身動きができずパウンドもまともに打てない状態でした。確かにワイドマンのほうがソネンさんより勝機はありそうです。

しかし、問題はワイドマンが本当にMMAレスリングでソネンさんより優れているのか?という点と、スタンド技術でどこまで対抗できるかという点です。そもそもテイクダウンに行くにしても、そこに至るまではスタンドの状態ですから、果たしてここで凌ぎきれるのか?というのがポイントになります。ワイドマンのMMAキャリアはまだ浅く、残念ながらトップレベルのストライカーとはやっていませんのでここがかなり懸念されるところです。恐らくシウバはひたすらに下がり続けながらカウンターを狙い続けるいつもの作戦でしょう。ワイドマンがどうやってテイクダウンまで行くのかが注目です。ワイドマンはムエタイがかなり巧いので、スタンドでもシウバ相手にそこそこやれるのであれば勝機は十分あるでしょう。

この試合も非常に期待していている一戦です。自分としてはそろそろ王者交代が見たいところです。ワイドマンはまだ若いですがその力はかなりのものと見ています。特にレスラー出身でありながらサブミッションに優れているところと、マーク・ムニョスのパンチに肘打ちでカウンターを取るなどのムエタイ技術には中々に目を見張るものがあります。蹴りもかなりいいものを持っています。昔はアンデウソンは好きでしたが、ソネンさんへの計量前肩パンチとトランクス掴みですっかり嫌いになったので、是非ともワイドマンには頑張って欲しいと思いますw

余談ですが、トップの画像はUFCでは珍しいフロント・スープレックスの写真です。さすがワイドマンですね。投げ技大好きの自分としてはたまらない写真ですw

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