2013年10月3日木曜日

マイク・ドルチェ、減量について語る

マイク・ドルチェ、先日の減量中の死亡事故について:「私は心を痛めている」



MMA Fightingより

ブラジル人ファイターのレンドロ・ソウザの死はこのスポーツの周辺で繰り返し語られ続けている。

ソウザに関する最終的な医学的決定は今だ下されていない、彼はリオデジャネイロで金曜に予定されていたShooto43に向けた減量中に死亡し、その後大会はキャンセルとなった。近代MMAの歴史において、それは初めての減量に関連した死と思われる。

それはこのスポーツで最も尊敬を集めている栄養士の一人、マイク・ドルチェ、彼が長年聞くのを恐れていた類のニュースだ。ドルチェ、彼のドルチェ・ダイエットの支持者はここ数年でチェール・ソネンからビトー・ベウフォート、そしてクイントン・「ランペイジ」・ジャクソンまでに及ぶ選手を含んでいる、そんな彼が月曜版The MMA Hourに登場してその悲劇について議論した。



「私はその若者に、彼の家族に、そしてこのスポーツに対して心を痛めていた。」とドルチェは言った。「私たちがしていること、それは皆兄弟であり仲間ということだ。そして我々の一人が病に伏せたり傷ついたりするときはいつだって、我々は皆それを世界的に感じていると私は思う。私はそのことについてはまさにそれくらい深く感じている、少なくとも、私は減量中のアスリートとそれくらいに親密なシチュエーションにいた。」

先の医者によるレポートは、ソウザの死因を卒中と報告している。

「何が起こったのかについてはっきりと話すのは難しい、なぜなら我々には毒物に関する報告がないからだ。」とドルチェは言った。「我々は恐らく卒中だろうというより他の、何が起こったのかに関する正しい医学的な最新情報がないままなのだ。それはああいうことの一つであり、百万とあることの一つであり、何百万とあることの一つなんだ、たとえ君がアスリートたちが減量するの何度見ていようとね。その過程について判断を下すのは本当に難しい、起こった事に関する事件の断片を読めば、それは不健康なように思えるということより他に言いようがないんだ。」

MMAFighting.comが金曜に報道したのは、ソウザ、ジョゼ・アルドとヘナン・バラオもいるノヴァ・ユニオン・キャンプのメンバーである彼は、悲劇に先立つ数時間前にいくつかの利尿剤を摂取しており、それはドルチェが推奨しない悪習だ。

「利尿剤はひどいものだ、あれは減量失敗の元になる。」とドルチェは言った。「薬物は全部そうだ。そういう理由から私は錠剤なし、粉薬なし、飲み薬なし、あの汚染物質を体から追い出せと言うんだ。あんなものは必要ない。完璧に健康的な体というのはなんだってできるんだ。私はそれを証明してきた、私のアスリートたちがそれを証明してきた。私のアスリートたちはこの星で一番健康だ、彼らは秤の上で素晴らしく見える・・・諸君がああいう錠剤を摂取している時、ああいう薬物を摂取している時、利尿剤は完全に最悪の行為なんだ、それはアスリートの健康を生物学的なレベルで破壊する。」

実際に、あなたはドルチェと共に働いている時に計量に失敗した選手の名前をたくさん挙げようとすれば困り果ててしまうだろう。ドルチェは言う、彼のゲーム・プランは年間を通した選手の食事管理のアプローチを変えることを基本としており、彼らが試合が近づくにつれて行う食事制限を単にぶち壊すのではないという。

「減量は健康的ではないんだ、私はまず最初にそのことを言う。」とドルチェは言った。「もし私と関われば、アスリートは彼らの寝起きの体重で試合をすることになるだろう。それは君が目を開けた時だ、その朝に最初にすることは、彼らは自分の足を地に着け、彼らはお手洗いを使い、そしてそれから彼らは秤に足を乗せるんだ。それは寝起きの体重さ。それが君が負うべき体重なんだ。」

「私のアスリートたちは典型的には試合の3週間前に体脂肪率が7%の状態だ。」とドルチェは続けた。「それが我々が競技前の三週間に狙うものだ。さあ我々は試合が近づくにつれてカロリーを増やし始めることができる、だから我々はもっとたくさん食べることができるんだ。誰もそれはしていない。皆が反対の方向に進んでいる、彼らは試合が近づくにつれてカロリーを減らしているんだ。」

サントスはショート・ノーティスでフライ級の試合を受けており、報道によれば試合をするためには一週間で33ポンド落とさねばならなかったという。彼が卒中になった時、サントスはサウナの中で残り2ポンドを落とそうとしていたようだ。

「ミックスド・マーシャル・アーティストは全体的にはより健康的な集団だ(一般的な人々よりも)、しかしやりすぎる傾向がある。」とドルチェは言った。「サントス氏のようなやりすぎは、おそらく利尿剤を摂取したであろうことについては、我々はまだ確かなことはわからないが、君は健康を維持しなければならない、もし君が健康を維持できないのなら、君は自身のベストの状態で競争していないんだ。」

ドルチェは、もちろんのことだが、大抵はハイレベルの選手と仕事をしているし、それに応じて顧客達から支払いを受けている。だが彼は言う、若い、上り調子のファイターは必ずしも彼の手助けを必要としないのだ、もし彼らがどうやって彼らの食事と栄養を管理するかについて知識があるのならば。

「それはダイエットじゃない、ライフスタイルなんだ。」とドルチェは言った。「もし君が競技前一週間か、三週間、六週間だろうと減量をしているのならば、君はすでに失敗したのだ。1年は52週間だ、これらアスリートというものは、アマチュアであろうとプロフェッショナルであろうと、彼らはプロフェッショナルのように1年365日考えるべきなんだ。彼らが食べるもの全て、彼らが飲むもの全て、彼らが見るもの全て、彼らが置かれている状況全てについてだ。それはより良くなり続けるか、より悪くなり続けるかのどちらかなんだ・・・。」

「若い連中なんかは、私のような奴に金を払わなくたっていいのさ。」とドルチェは続けた。「私は十年間これをタダでやっていた、金が全くなかった昔のNHB(初期MMAの時代)の頃だ。私は2000年、2001年、2002年の間もまだこれをやっていた。私はこんな金を生まない奴だったが、私はそれを正確に同じやり方でやったんだ。もちろん科学と経験は進化した、だが方針は絶対に変わらなかったんだ。」

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というわけで、MMAの世界で名高い栄養士、マイク・ドルチェ氏の減量事故に対するコメントでした。やっぱり原因を断定的に書いてはいけないですね。ドルチェ氏はものすごく慎重にコメントしています。まあ商売に関係することですから当然ではありますが。

ドルチェ氏はソウザの死亡事故について原因は不明で、わかることは健康に良くないことをしていたくらいだ、としています。理由として、毒物に関するレポートがあがってこないからだとしています。このあたりはもうさすがプロフェッショナルとしか言いようがありませんね。どこのボンクラか知りませんが、まだ不明の原因を決めつけて記事を書くとかとんでもないことですよ、まったく。

そしてドルチェが語る減量のアプローチというものは非常にユニークです。私も名前だけで具体的に何をやるのかは知りませんでしたが、彼の語るやり方はおよそ一般的な減量の考え方とは大きく違っています。

まず彼が語るのは、利尿剤を始めとしたあらゆる薬物の否定です。それは生物学的なレベルで健康を損ねるといいます。そして彼は肉体作りの過程で、そういうものは体外に追い出すことを考えるようです。

次に、彼が体重作りで最初にやることは「減量は体に悪い」というのをアスリートに伝えることからだそうです。彼が手掛けた選手は、計量の日の寝起きの体重が試合に臨む体重であり、それがあるべき体重だと言います。

そしてこれが一番面白いところですが、彼はアスリートを計量3週間前に体脂肪率7%くらいにもっていき、そこからカロリーを増やしていくのだそうです。通常の減量ではここから試合に向けて食事制限をしていくところ、ドルチェ・ダイエットは増やしていくのですから、これはもうまったく逆です。健康にどちらがいいかといえば、それはもちろんキチンと食事ができるほうがいいに決まっています。精神的にも負担が軽いのは間違いないでしょう。ちょっとドルチェ・ダイエットに関しては具体的なやり方がどこかにないか探してみたいところです。試合時の体脂肪率がどれくらいになっているのかが気になりますね。

加えて彼は言います。期間に関わらず、試合前に減量をしているのならば、それはもう失敗なのだ、と。彼の基本的な方針は1年間365日、常にすべてに気を配って健康と体重を作り上げて維持することに主眼が置かれています。体重作りはダイエットではなく、ライフスタイルだ、というのです。確かにこれはその通りで、常に試合に臨む体重を維持できているのならば試合前に減量をして健康を損ねる必要はありません。彼は一年を「52週間」と表現しましたが、これを見てドキッとしてしまいました。確かにこうやって考えると、体重作りに6週間かけたりというのはあまり合理的には思えないからです(そして1年というのは思っている以上に短いと感じます)。

最後に彼が言うのは、若い奴にドルチェ・ダイエットは必要ないということです。若いうちは苦労しなくても栄養学と食事管理の知識があれば自力でなんとかできるようです。かつてベンソン・ヘンダーソンの減量記事を訳しましたが、そこでも同じようなことが言われていました。30歳を超えると、アスリートは途端に体重を作るのがシビアになり、これまでできてたことが全て倍難しくなるのだそうです。彼はそうならないように今から賢く食べて可能な限り現役を長く続けようとしていますが、その姿勢はドルチェに通じるものがあります。

もちろん全容を把握していませんから、もろ手を挙げて彼のやり方を称賛するわけにはいきません。しかしもしドルチェのダイエット方法がその理念通りであるならば、これはとても理想的です。選手は体にさほど負担をかけなくてもよくなりますし、一年を通して概ね試合に臨む体重を維持できているならば、より試合を組みやすくなるからです。減量失敗が減れば試合のクオリティも上がりますし、今回のような悲劇は回避することができます。臓器にかかる負担も少ないでしょうし、健康的な体を維持すれば高齢になっても試合を続けることができるでしょう。

唯一にして最大の問題は、人間にとってこういう生活は非常に難しいということです。人は好きなものを食べたいと思いますし、深酒をしたくなる時がありますし、不健康な生活リズムにおぼれたくなる時もあります。しかしこれらはすべて自分の体重に悪影響になるから考えろ、プロアマ問わず365日常によく考えろよというのがドルチェ・ダイエットの神髄です。その「ちょっとくらいいいじゃん」がだめなのだというのがドルチェの言わんとすることでしょう。あしたのジョーでマンモス西が夜中にうどんを食って丈に腹パンチされていましたが、要はああいうことです。

まあドルチェがソネンやランペイジに腹パンチをしているとは思いませんが、そういうのを管理するというのはなかなかに難しいものです。特にランペイジの生活を管理するとか絶望的な気がします。彼は冒頭でダイエット中のアスリートとものすごく親密な関係になると言っていますが、腹パンチをせずに生活を管理するならばそういう姿勢が必要なのかもしれません。人間の本能を抑え込むのは並大抵のことではないからです。ベンソン・ヘンダーソンなどは敬虔なクリスチャンであり、彼は驚異の精神力でストイックな生活を維持し、数年かけてあの驚くべき肉体を作り上げ維持していました。しかしそれは彼が修行僧並みのメンタルを持っているからで、普通の人間は自力であの域に達するのは困難な気がします。

そういうわけで今回のはとても勉強になりました。今度機会があればドルチェのダイエット方法を具体的に調べてみたいですね。特に計量前3週間からカロリーを摂取して選手の体重がどう遷移していくのかが気になります。ドルチェも言うように、減量そのものが体に負担をかける行為です。この事故を機に、薬物や無理な減量のない、健康的な計量が一般的になってMMAがより健全なスポーツになることを願っています。

ただ、ドルチェの顧客の顔ぶれに何か共通点が見えるのが気になります。取り上げたMMA Fightingの記者が意図したのかは知りませんが、ビトー、ソネン、ランペイジ、彼らに共通する要素というと・・・いや、私には彼らが人間の男であるという以上の共通点は見出せませんね、きっと気のせいです、気のせい。

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