2013年11月9日土曜日

GSP、MMAのラウンド制廃止を提案する

ジョルジュ・サンピエールは再びMMAにおけるラウンド間休憩の廃止を求める

MONTREAL, QC - MARCH 16:  (L-R) Georges St-Pierre punches Nick Diaz in their welterweight championship bout during the UFC 158 event at Bell Centre on March 16, 2013 in Montreal, Quebec, Canada.  (Photo by Jonathan Ferrey/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

MMAjunkie.comより
画像はGeorges St-Pierre - Official UFC® Fighter Profile | UFC ® - Fighter Galleryより

UFC167において、ウェルター級王者ジョルジュ・サンピエールはNo.1コンテンダーのジョニー・ヘンドリクスと5分間のラウンドを5回戦うだろう、MMAというスポーツを支配するユニファイド・ルールが定めるところに従って。

だがもし彼が全ての重要な基準を制定していたら、タイトル戦での25分の戦いの合間には一切の休憩が無かっただろう。その王者は古式の戦いに立ち戻りたいのだ。

「私はMMAにはラウンドがあるべきではないと信じている。」とサンピエールはMMAjunkie.comに語った、11月16日、ラスベガスはMGMグランド・ガーデン・アリーナでの彼のペイ・パー・ビューにおける大一番に先駆けてのことだ。「通常の試合では、例えば、15分間ノンストップにするべきだ、そして王座戦は25分間ノンストップにすべきだ。」

彼の構想が現実だった時から十年以上が経っている。制限時間がラウンドに取って代わられたのはUFC21でのことだ、その大会は1999年、MMAが底辺のスポーツとして深刻な政治的反対によって叩きのめされている真っ最中に行われたものだった。2000年に入って、ユニファイド・ルールがニュージャージー・アスレティック・コントロール・ボードによって運用された、それはアスレティック・コミッションが初めてMMAに認可するものだった。

それらの中では、ノンタイトル戦は5分間のラウンドを3回、一方でタイトル戦は5分間のラウンドを5回行うことを要求していた。

追加されたルールと規約は敵対者達を宥め、そのスポーツがメインストリームに参加することを許した、けれどもそれらのいくつか、たとえば採点のための10ポイント・マスト・システムや倒れた状態の相手への膝の禁止のようなものは、熱狂的なファンの間に苛立ちを引き起こす元となりつづけている。

サンピエールのレスリング主体のスタイルはしばしばMMA信者から同じような反応を受けることがある、しかしその王者は信じている、彼が現在その範囲内で働いているシステムが、興奮を生み出すことを難しくしているのだと。

「私が思うにラウンドをやることによって、私たちは試合の勢いを殺してしまっているし、試合を違うものに変えてしまっているんだ。」と彼は言った。「私が思うにラウンドが過去に加えられたのは、彼らがそれをよりボクシングに似た物にしたいからだ、だが私はMMAを信じているし、私たちには私たち自身のスポーツがある。私達は他のどんなスポーツもコピーしようとするべきじゃないんだ。」

「もし君が二人の男が互いに戦っているのが見たくて、誰がベストな男なのかを見たいのなら、彼らを戦わせてやってくれ。フィニッシュまで試合を止めないでくれ。もし一切のラウンドがなかったら、より多くのフィニッシュに繋がるだろうと私は信じている。」

サンピエール(MMA24勝2敗、UFC18勝2敗)、4月に初めて時間制限試合を要求した彼は、アスリートに一律で実施されるより精密なドラッグ・テストを見たいとも思っている。彼は現在ボランタリー・アンチ-ドーピング・エージェンシーに登録されており、そこは競技から外れた試験を実施している、もっともその舞台裏ではヘンドリックス(MMA15勝1敗、UFC10勝1敗)とのドタバタがあり、そして彼の代表者は彼の参加を拒否したのだが。

長きに渡りウェルター級王者である彼の「ビッグ・リッグ」との試合は、彼の9度目のタイトル防衛となるであろうものだ、その彼は言った、強化されたテストがMMAをさらに大きな主流のスポーツに近づけてくれるだろうと。主要スポーツのほとんどは試合の区切りか休憩を採用している。だが彼はその自然な終りに至る流れを見たいし、それか少なくとも可能な限りそれに近いものが見たいと思っている。

「その戦いはよりファンタスティックものへと繋がるだろう、そしてそのショーはより良くなるはずだよ。」とサンピエールは言った。「私がルールで変えるとしたらそこだね。」

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というわけでウェルター級長期王者のGSPが語る、ルール改善案でした。これは私には盲点だった考えです。

世間ではフィニッシュが無いだのずっと同じ展開だのと批判され、そのスタイルがやり玉にあがることも多いGSPですが、彼がフィニッシュを増やすアイディアは「ラウンド制の廃止」ということです。

現在のUFCはご存じのとおり1R5分のラウンドがノンタイトル戦で3回、王座戦で5回となっています。特にそれ以外で区別はありません。ボクシングでは1R3分で、勝ち上がるごとにラウンド数が増えていき、タイトル戦では12Rとなっています。アマチュアの場合は現在は3分3Rで統一されているようです。PRIDEでは1R10分、2R5分、3R5分という変則3R制を採用していました。そして私は覚えていませんが、初期UFCではラウンドはなかったそうです。

そしてUFCは、ラウンド制の採用を始めとしたルール改正によってスポーツとして許されるようになったのだ、としています。

しかしそのラウンド制に問題があるのだとGSPは言います。まず一つが、試合の流れが変わってしまう事です。これはその通りでしょう。これまでもゴングに選手が救われた試合は数多いです。このシーンであと30秒あればフィニッシュしていたのに、と思った経験がある人は多いでしょう。選手としても、せっかく追い詰めたところでラウンド終了となってそのチャンスを逃し、さらにはインターバルで持ち直されて負けた場合には、悔やんでも悔やみきれないところです。ラウンド制の廃止によって、これが解消されます。

そしてこのシステムになれば、確かにGSPのフィニッシュは増えそうです。私は以前、9RくらいあればGSPは全部の試合をフィニッシュしているだろうと書きましたが、それと同じことになるでしょう。ラウンド間の休憩なしで、10分ほどGSPにあれをやられたら殆どの選手は疲弊しきってしまうでしょう。そうなれば、GSPはようやく安全に試合をフィニッシュすることができるにちがいありません。インターバルによって選手は結構回復しますので、それがなければグラインダーはもっとフィニッシュできると思います。

次に判定が大きく変わります。今はラウンド・マストを採用しています。各ラウンドごとに優劣をつけて、その集計で勝敗を決める判定方式ですが、これには批判も多くあります。特にラウンド数が少ないMMAでは序盤の採点で差が開きにくいこと、そして後半盛り返して明らかに片方がより優勢に立っても、その前のラウンドで落としていれば敗北してしまうことが問題になります。これがラウンド制を無くすことで、試合全体を俯瞰しての判定になります。ノンストップで試合をすれば、恐らくはより明確に優劣はついているでしょう。一度崩れたほうは盛り返すのがより難しくなるからです。

試合自体も変化するでしょう。選手たちは皆さらにスタミナ重視に変わるでしょうし、セコンドの助力もこれまでほどに借りることができなくなりますので、メンタル面でも負担が大きくなっていきます。

ただ、これはメリットばかりではありません。当然デメリットも増えると思われます。

まず安全面です。インターバルは選手が回復を計りますが、それだけでなくセコンドからの指示を受けたり、セコンドが選手の状態を確認したり、また負傷した場合にはカットマンが止血等をおこないます。しかしインターバルがなければ、パッと見ではわからないダメージがあってもそのまま続行してしまうために、より危険な状態で殴られ続けたりする可能性があるでしょう。そうなればよりレフェリーの負担が増しますし、もしこれで事故が増えたらMMAはせっかく主流に入りかけたのにまた流れの外に放り出されてしまうかもしれません。

判定でも、ラウンド・マストとは別の不満も出てくるかもしれません。後半失速する選手が判定では不利になるだろうからです。後半に追い込まれたら、どんなに前半優勢だったとしてもそのことが考慮から外れてしまう気がします。そうなれば、選手は全員序盤を抑えて後半にギアを上げるスタイルに変化していくでしょう。

そしてそうなった場合、絶対に選手のファイトスタイルは変化します。よりスタミナ重視になっていくでしょうし、より消耗戦を望む選手が増えていくのではないでしょうか。その結果、かえってフィニッシュが減る可能性だってあります。

フィニッシュが増えるかというのも難しいところです。ストライカーなどは、インターバルでエネルギーを取り戻すことでフィニッシュする爆発力を取り戻しているところがあります。あれが無くなれば、スタミナ切れのまま互いに泥仕合をして最後まで行ってしまう展開が増える可能性も心配されます。そしてその退屈さは、今のラウンド制を遥かに凌ぐものとなるでしょう。それを見せられて観客が耐えられるかは難しいところです。フィニッシュが増えたとして、GSPのようなスタイルを休みなく見せる展開が大増加した場合に、それがエキサイティングとなるかは甚だ疑問です。

また興行的にも、ラウンドがあることでメリハリが出ます。ずっと休みなく続けることで試合がだれてしまうのもそうですが、観客側が見ていてだれてしまう可能性があります。それこそ目の覚めるような展開ばかりならいいですが、ノンストップの試合で選手が双方スタミナを使い尽くした場合、その後の展開は恐らく目も当てられないことになります。フィニッシュが生まれ完全決着が増えるのを、この泥仕合の増加が上回った場合にMMAはまた主流から遠のいていくことになるでしょう。

アイディアとしては面白いと思いますし、私はPRIDEの10分ラウンドが結構好きでしたので悪くはなさそうです。私はむしろ1R3分にしてラウンド数を増やしたらテンポがよくなっていいかと思いましたが、そうなるとグラウンドで攻めたい選手が不利になるというのもありますし、何よりもまんまボクシングです。GSPの、自分がやっている競技への誇りというのはとても素晴らしいと思います。メジャースポーツになるために、ボクシングに似ているように見せかけたのは事実でしょう。それによって社会的な認知を得ようとしたのです。しかしGSPの言うように、MMAは独自の競技として他におもねることなどないのだ、というのもその通りです。それが差別化にもなります。実際にGSPのフィニッシュは増えるでしょうし、私はPRIDEの「ドントムーブ」なるものが大嫌いでした。試合の流れが台無しになり、選手のセッティングが台無しになるからです。そういう意味でも、ラウンド制廃止は実験してみてほしいところがあります。

MMAは新興スポーツです。まだ競技としてようやく固まり始めた段階であり、王座戦が5Rになったのも2011年からのことです。これが正解というのはないでしょうから、こういうアイディアを王者が出すというのはいいことだと思います。もっとも、GSPは自分が最強になるからこう言ってる面もあるでしょうが、そういうところもこの人の強さの理由です。

皆さんは、ラウンド制廃止というアイディアはどう思いますか?

9 件のコメント:

  1. んん・・・我らがGSP、かっこいいですね
    果し合いのような、両者が認め合った時にのみノンストップルールを行うというのは面白そうな気がします。
    漫画的、映画的で安全面やエンターテイメント性からはかけ離れてしまうのでしょうがw

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    1. GSPはかっこいいですし面白そうですが、やはり実現は難しいでしょうね。果し合いっていうのはいい表現ですね、ほんとそんな感じです。元々GSPは初期UFCに感動してMMAに入った人ですから、なおさら最初のルールにこだわりがあるのかもしれません。

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  2. ダナハー2013/11/09 22:20

    個人的には寝技の攻防が好きなので、非ラウンド制には魅力を感じなくもないのですが、一方で紆余曲折を経て米国に定着し、世界的にも広まりつつあるユニファイド・ルールを、簡単に変えてしまって良いのかという疑問はあります。この問題に限らず、安易なルール変更自体には賛成出来ません。
    よく見かける意見でグラウンド状態での蹴りを認めろというのがありますが、ルールを制定するのはズッファではなくコミッションで、それぞれが州毎に独立した組織です。全米各地でMMAが行われるようになった昨今、ルールを変えるのなら一つの州だけでは意味は無い訳で、当然その変更は各コミッションを納得させるだけの論拠が必要なはずです。
    安全面や米国での慣習を軽視した変更が通るとは思えませんし、もしそういう変更の直後に死亡事故などが起きれば、ただでさえ敵視する勢力の絶えないジャンルである以上、相当なバッシングが予想されます。歴史の浅い競技であるが故に、そういう点には慎重であって欲しいです。


    以前、ボブ・サップブームが吹き荒れた際に、K-1がWGPの開催期間中にも関わらずホールディングからのパンチを認める変更をして、余りの志の低さに呆れさせられた記憶があります。私的にはK-1没落の主因は、一時のブームの為に競技の核の部分を叩き売るような節操の無さだと思うので、MMAには決してその轍を踏まないよう願いたいです。

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    1. 実はですね、今回のコラムで言おうと思ってたのを書き忘れたので追加しようとしていたんですが、全部ダナハーさんが言ってくれたので割愛しますw実は私もK-1のその場でのルール変更を死ぬほど嫌っていたんです。あれはひどかったですよね。マサトの時に突然採点基準変えたりもありましたし。K-1没落の原因は間違いなくそれです。人気のためならルールすらも質に入れるような真似は、スポーツの何たるかを理解していないクソ馬鹿野郎のやることでした。思い出しても腹が立ちます。

      実際ダナハーさんの指摘通り、たぶんこのルールを納得させるのはかなり難しいです。そして今はまだ、そういうのを押し切れるだけの地位はMMAにありません。迂闊な真似をすればまた底辺スポーツに逆戻りです。

      そして私も、実は安易なルール変更は好きじゃないです。ユニファイド・ルールはコミッションからお墨付きをもらった証でもありますから、マイナー団体ならいざしらずUFCがおいそれとは変更できないでしょう。よく金網を狭くしろ、4点解禁しろという意見もありますが、自分はそれにも結構慎重だったりします。デイナも「4点はありにしてほしい」と願望を述べるにとどまるのも、それが行政のやることであまり強弁できないことを把握しているからだと思います。

      ただ、一つのアイディアとしてこういうのを提示することは良いことだとも思いますので、検証はしてほしいですね。

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  3. ラウンド制の廃止はより本質的だと思いますが、敢えてスポーツライクに構築したほうがMMAが繁栄しそうな気がします。

    本文の趣旨から多少ずれますが、リングの方がエキサイティングな試合は増えそうな気がします。

    確率論的に、空間が広いほうが二選手のコンタクトの機会は少ないということになります。

    また、空間を存分に利用できるスタミナにプライオリティが偏重している気もします。

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    1. 私は本文で書き忘れたのですが、実は「インターバル」が好きでもあります。ゴングに救われるのも好きです。それもスポーツとしての面白さであると思います。特に選手がセコンドとあれこれ相談して「よし、行くぞ」という顔で立ち上が瞬間がすごい好きです。

      やっぱりスポーツライクというのは大事です。今のUFCの発展を見ても、イメージというのはかなり左右します。UFCがアングラの雰囲気を捨てた事、そしてそれはコミッションのお墨付きをもらったからということは大きいです。

      リングは立ち技ではいいですが、グラップリングがあるMMAでは自分はあまり向きではないような気がします。タックルをするとあっという間に端まで行ってしまいますし、すぐに体が落っこちてしまうのが気になります。

      空間が狭いとそこまでのフットワークは使えませんし、四角だと横に逃げにくいからコンタクトは増えると思いますが、エキサイティングになるかは私はいまだに判断がついていないところです。

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  4. 自分はラウンド制支持派です
    理由はエディ様の言われる通りだからです
    やはりやる側だけでなく見る側にも負担を強いる事になるというのは興業上よろしくないかと

    加えていうならグラウンド状態の相手への蹴りが禁止されてる等制限事項はグラップラー有利なんだから
    ラウンド制はバランスを取る為にも必須かなと

    ドントムーブ…今思い返すとちょっとですよねw
    そういえばシュートとか今でもリングでやってる総合の興業はどうしてるんでしょうか?

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    1. 1R3分でラウンド数を増やすことを考えていた自分は、実は今の5分でも少し長いと感じていたのですwその理由は5分でもちょっとだれるからでした。5分は、よほどの激闘でなければ見る側は耐えられませんし、また選手にとっても結構負担です。なのでもっと細かく区切って休みを増やし、スピーディな展開にしたほうがいいのかなあと思ってました。そこにGSPのこの提案でしたので、正直びっくりです。単純な完全決着を目指すと言う動機なら、GSPの案のほうがいいのでしょう。でも総合的にはラウンド制のほうがいいと思いますし、結局そこに落ち着くでしょう。

      いっそ長くなるなら一切休みなしなら、それはそれでだれないのかなとは思います。どっちかでしょう。極端に長くしてテニスみたいになるか、もっと細かく区切ってラウンドを増やしてボクシングみたいになるかです。中途半端だと苦痛になる気がします。

      グラウンドの膝を解禁にしたらいよいよレスラー最強になりそうです。現状でもGSPやジョーンズなんかはグラウンドでボディに膝入れてかなり効かせてますし、あれが顔面に入るかと思うと背筋が凍ります。

      ドントムーブもさることながら、私はあのアクション大魔王が嫌いなのだと思いますwアクションアクションうるせー、ちゃんと仕事しろよといつも思ってました。

      今もリングのところだと当然ありそうですね。どうなってるんでしょう?私も気になると事です。

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    2. グラウンド状態の相手への蹴りを解禁
      >確かに一概にグラップラー不利とはならないと思いますが
      やはり切られた時のリスクが跳ね上がるので
      ストライカー有利が持論です

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