2013年5月15日水曜日

パット・ヒーリー、マリファナに陽性反応が出る

パット・ヒーリーはUFC159後のテストでマリファナに陽性が出た
ことを認める声明をリリースした

NEWARK, NJ - APRIL 27:  Pat Healy celebrates defeating Jim Miller by Technical Submission (Rear-Naked Choke) in their lightweight bout during the UFC 159 event at the Prudential Center on April 27, 2013 in Newark, New Jersey.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

MMAjunkey.comより
画像はUFC公式より

UFCライト級のパット・ヒーリー(MMA30勝16敗、UFC1勝0敗)は
今日MMAjunkie.comに声明を出した、その中で彼はUFC159で
のジム・ミラー(MMA22勝5敗、UFC11勝4敗)へのアップセット後
のテストでマリファナに陽性だったことを謝罪した。

UFCはその問題に対するコメントを辞退し、ニュージャージー州
アスレティック・コントロール・ボードというそのイベントを監督した
部署は、イベントにおいて禁止物質でテストに陽性だった選手の
名前を公表しない。しかしヒーリーの代理人はMMA.junkie.comに
選手はコミッションから90日間の出場停止を受け、彼の勝利は
ノーコンテストに修正されるだろうと語った。

彼の声明の中で、ヒーリーは陽性結果に対して全ての責任を負っ
ていた。

「私は謝罪を開始したいと思います、UFCに、ジム・ミラーに、M
MAコミュニティに、そのファンに、私の家族に、チームメイトに、
そしてコーチ達に、UFC159のジム・ミラーとの試合後のテストで
マリファナに陽性だったことを。」と彼は発表した。「私は完全に
UFCと州コミッションのドラッグ・ポリシーに注意していましたが、
お粗末な人生の選択をしてしまいました。」

「私はUFCと州コミッションの規定措置を支持します。私はMMA
(とスポーツ)をクリーンで、安全で、公正な競争の場にする努力
を支援します。」

「私は社交でマリファナを使用するという非常にお粗末な選択を
し、現在その選択の結果と直面しなければなりません。私は皆様
に請け合います、私はUFCと州コミッションが私とその他に要請す
る全てを実行することを。私はMMAコミュニティにおいてより模範
的人物となる理性的な努力を致します。」

ニュージャージー州アスレティック・コントロール・ボードに繰り返し
コンタクトを取ろうとしたが成功しなかった。しかしフィル・クラウド、
ポートランドのスポーツ・ラボでヒーリーのトレイナーをしている彼
は言った、選手は土曜日に彼のサスペンションと勝ち星の修正に
ついてニュージャージー州コミッションより告げられたのだと。

「私は長年コーチングをしてきたが、私はどのレベルであろうと検
査で陽性になったアスリートを抱えたことは一度もなかった。」とク
ラウドは言った。「私は多大な自己反省をしなければいけない。そ
れは私個人にも、そしてスポーツ・ラボにいる全てのアスリートにも
影響することだ。だが私は信じている、パットはミスをしたのだと。
私は信じている、私達はUFCのベスト・ファイターの一人を打ち倒し
たのだと;私は信じていない、マリファナがその試合の結果に何ら
かの影響を及ぼしていたことを。結局のところ、私はパットを信じ
ているんだ。私は自分の心に従って彼をサポートし続けるよ。」

クラウドは言った、ヒーリーが話すには彼は試合を遡ること一ヶ月
前、旧友達と時を過ごした時にドラッグを使ったのだと。

ヒーリー、29歳、彼が3Rにミラーを極めたあの試合はペイ・パー・
ビュー・メインカードとして提供された。UFC159はN.Jはニューアー
クのプルーデンシャル・センターで開催された。その感動的なパフ
ォーマンスは彼に二つのボーナスを齎した、「ファイト・オブ・ザ・ナ
イト」と「サブミッション・オブ・ザ・ナイト」であり、これにより彼のポ
ケットには別に13万ドルの公表されたペイがねじ込まれた。

NEWARK, NJ - APRIL 27:  Pat Healy (L) battles against Jim Miller (R) in their lightweight bout during the UFC 159 event at the Prudential Center on April 27, 2013 in Newark, New Jersey.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

UFCは最近になってそのポリシーを変更した、ドラッグ・テストの結
果が発表されるまでファイト-ナイト・ボーナスは保留するようにだ、
だからヒーリーのボーナスを撤回することは可能だ。

それはヒーリーの7連続勝利だったし、今は無きストライクフォース
での栄光ある活躍に続くものだった。

マイク・コンスタンティノ、ミラーのマネージャーである彼は、UFCが
サスペンションを追認するまではコメントを辞退するとした。

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というわけでお気の毒ニュースでした。コレは金銭的にものすごい
痛いですね・・・。13万ドルってちょいとあなた、ラスベガスに家が建
つ!って金額じゃないですか。

マリファナは近年テストステロンと並んで検査で引っかかる人が多い
薬物ですね。代表格はニック・ディアズです。最近だとマット・リドル
やらも引っかかっていました。

マリファナはパフォーマンス向上薬なのか?ということで、MMAに限
らずアメリカの各種スポーツでも使用の是非について議論が盛んに
なっています。スポーツ外でも合法ドラッグとして認可して欲しいとい
う活動が非常に盛んです。日本国内でも、同じようなことを主張する
人たちが結構いたりします。

テストステロンは明らかなパフォーマンス向上が認められます。摂取
することにより各種肉体的、精神的作用が起こります。まあアリスタ
ーの肥大化を見ればヤバイのはすぐにわかります。常人の10倍以
上の値をマークした状態でトレーニングをすれば新人類の誕生です。

しかし一方でマリファナはホルモンではありません。脳に作用する
化学物質によって、各種精神作用をもたらすものです。代表的なも
のは沈静、幻覚、多幸感でしょうか。肉体的な作用だと、一番代表
的な作用に鎮痛があるようですね。面白いのが、モルヒネやアスピ
リンなどで効果を見ない痛みにマリファナが作用するというケースが
あるみたいです。

肉体的な向上があるわけでないのだし、試合での攻撃性などを増
進させるものではない、さらに副作用や中毒性もタバコやアルコー
ルより低い、だから使用してもいいではないか、というのがよく見る
マリファナ肯定論です。

アメリカではかなり身近なドラッグであり、人間を壊してしまう覚せい
剤などに比べたら遥かにマシであり、こちらを認可したらそういうヤ
バイものに手を出す人間も減るではないか!という意見も散見しま
すね。

私の個人的な見解としては、やはり禁止にすべき物質だという考え
です。理由として、MMAでは肉体と同程度か、下手をしたらそれ以
上に精神面が重要になってくるからです。

精神面での充実というのは、何も試合の時だけではありません。む
しろ一番辛いのは試合に向けて練習している最中だと思っています。
果たして自分は勝てるのか?今自分は必要なことができているの
か?これだけ練習しても無駄だったら?負けてリリースされたら将来
どうやって家族を養えばいい?俺は生きてケージから帰ることがで
きるんだろうか?また無様にKOされて恥を晒してしまうんじゃない
か?試合が決定したその日から、選手はこの精神状態で何ヶ月も
過ごさなければならないのです。その苦痛は私のような平々凡々な
生活をしている自分にはまったく想像もつかないものです。

そして、このような状態で効果を間違いなく発揮するのがマリファナ
ではないでしょうか?マリファナの作用として、「トラウマの除去」とい
うものがあるそうです。トラウマを感じる部位に作用して、その嫌な
記憶を抑えるという効果は、恐らく敗戦経験、それもノック・アウトさ
れた選手などにとってはものすごく効果があると想像されます。とも
すれば敗戦の経験がフラッシュバックし、試合に向けて尻込みして
しまい練習に全く身が入らないような状態において使うことはあるの
ではないでしょうか?要はかなり効率のいい息抜きという感じですか
ね。

もう一つ自分が考えているのは鎮痛作用です。コンタクト・スポーツ
であるMMAでは選手の体のダメージは非常に大きく、多くの選手が
なんらかの怪我や慢性的な痛みを抱えて練習をしているだろうと思
います。この緩和にマリファナを使用している可能性は高そうですね。
痛みに耐えろと言う側は気楽ですが、言われるほうとしてはたまった
ものじゃないでしょう。四六時中痛みにのたうつ状態で、そのような
ドラッグに手を出してしまうことは人間としてやむを得ないところがあ
るのかもしれません。

もちろん上記は想像であり、実際の選手の環境を知らない以上は
ヒーリーの言い分を信じるしかありませんが、自分はマリファナをそ
うやって使ってるのではないかな?と思っています。

そしてスポーツの基本的な考えというのは「可能な限り自然な状態の
心身で競争を行う」という公正な競争の理念に基づいています。上記
のヒーリーの声明のなかでも同じ文言が見受けられますね。マリファ
ナもこの「自然な状態」を害する以上(それが選手にとってプラスであ
れマイナスであれ)禁止するべきという考えです。陽性結果が出るとい
うことは体内にその物質が残留しているということであり、当然ながら
試合時にもなんらかの影響が残っていると考えるべきです。もちろん
試合において残留したマリファナがどの程度の精神作用、鎮痛作用
を持っているのかは知りませんが、それは「ナチュラルなヒーリー」で
はないのです。人間はコーヒー程度のカフェインでも精神的に影響が
出る生き物です。だからこそ、そこを可能な限り厳密にやることが必
須だと思います。

加えてMMAはメンタルゲームの要素が強いです。練習の時からすで
に試合は始まっているのです。そこに耐えるのもまた強さの一つであ
り、MMAの一部と考えるならば、精神を安定させ落ち着かせるという
作業を補助するマリファナはやはり不公正でしょう。そこを独力で必
死に耐え、試合に向けて自分の恐怖を克服した選手からすれば卑怯
な手段と映って当然の行為です。GSPなどは自分の恐怖心を必死に
コントロールし、試合に向けてのモチベーションに転嫁させています。
アンデウソンは宮本武蔵のように試合前から佐々木小次郎を焦らせ、
精神的に追い詰める術を使って優位に立ちます。そこからすでに勝負
が始まっているのです。

MMAに限らずスポーツは過酷です。選手は孤独で、誰も知らない夜
に痛みや恐怖に苦しみ、己の未来を見据えて怯え、たった一人泣き叫
んでいるのかもしれません。しかし、それを乗り越えて己の足で、己の
力のみで戦いの場に赴くからこそスポーツには価値があるのであり、
その姿が人々に勇気を与えてくれるのです。私は薬物に手を出す選
手に同情的であり、またそういう失敗は誰にでもありうることだと思っ
ています。そしてその失敗から立ち直ることこそが一番大事なのです。
アリスターが陽性後に試合に出たことを評価したのもそういうことです。

今回ヒーリーはとても真摯で迅速な対応でした。コミッションやUFCが
公表していないものを自分から発表するというのも、もちろん打算は
あるにしても中々できることではありません。何よりも対戦相手のミ
ーにきちんと謝罪しているのはとても好感触です。

人は弱いですし、もしかしたら強い人なんていないのかもしれません。
だからこそ強くなろうという意思を持つ人を尊敬し、重圧に負けてしま
った選手に同情し、そこから這い上がろうと足掻く選手を応援してあげ
たいと思っています。