2013年7月24日水曜日

アンソニー・ペティス、ベンドは「ルールを駆使しているだけ」と語る

アンソニー・ペティス:ベンソン・ヘンダーソンは「ルールを駆使して」UFCタイトルを保持しようとするだろう

CHICAGO, IL - JANUARY 23:  Anthony Pettis (R) conducts an open workout session for media on January 23, 2013 at UFC Gym in Chicago, Illinois. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

MMAjukie.comより

画像はAnthony "Showtime" Pettis - Official UFC® Fighter Profile | UFC ® - Fighter Galleryより

アンソニー・ペティスが負った膝の怪我は比較的大したことはなかった。

ジムで少し捻ったんだ、と彼は言った。「ああいう変な事は誰にだって起こることさ。」と彼のコーチ、デューク・ルーファスは説明した。

全体から見れば大した事件ではなかった、そのせいでUFCフェザー級王者ジョゼ・アルドと予定されていたタイトル戦から離脱させられたことを除けば。

そしてそれは、今度はペティスを落胆と自信喪失の渦に投げ込み、大したことはないどころではなかった。

「私はこのせいで本当に落ち込んでいて、抜け出すことができなかったんだ、」とペティスはMMAjunkie.comに語った。「私は全てを疑った。自分のキャリアでの選択を疑った、自分はいずれチャンピオンになるのだろうか、自分はチャンピオンになれるのだろうかと。それはまるで、私がタイトル・ショットを得ることになるといつも何かが起きて、私はそれを得られないという感じだった。」

その文脈の中でこの件について考えるとき、すでにTJ・グラントが約束されていたUFCライト級タイトル・ショットについても、たぶんペティスはその理屈で語ることを許されるだろう。その試合は数週間後にあるはずだった-ちょうど彼の膝を癒すには十分な時間だ、とペティスは強調した-そしてそれは、彼のホームタウンであるミルウォーキーで行われるUFC164での試合だった、そこで彼はすでに一度破り、そして再び衝突するのが定めであるかのように見えるファイターと対峙する。

ベンソン・ヘンダーソンとのリマッチに挑戦すらしないなんてあり得ないことだ、と彼は考えた。彼がはまり込んだ暗いムードから彼を引っ張り出してくれるものだ。

ルーファスはそれを見ていた。もちろん彼も経験したことだ。彼は数年間に渡りペティスのトレイナーであり友だった、そして自身のキックボクサーとしての経験が彼に教えてくれたことは、二度と取り戻せないかもしれない大きな機会というものは、そのまま失われがちだということだった。

「ああいう状況の中で起こる最もハードな出来事は、時折人をポジティブにしてくれるんだ。」とルーファスは言った。「私が思うに、アンソニーのやること為すことがとても良いのは、彼がこのスポーツと感情的に強く繋がっているからだ。彼はMMAを愛している。彼は出来うる限りべストになろうと挑戦することを愛している。そういうものが彼から失われることは、彼の人生において大きな損失となる。彼は26歳だ、だが彼にはまだそういう気持ちがある、時計の針は動き続けている。」

だから柔術のトレーニング中に見舞われた脳震盪によって、最終的にグラントがヘンダーソンとのタイトル戦から外れざるを得なくなった時、現実にしてはあまりにも都合が良すぎるように見えた。実際、最初にそのニュースを聞いたのはルーファスだったのだが、その後ペティスに、これは性質の悪いジョークとかじゃないんだと納得させるのに酷く苦労する羽目になった。

「彼は実際、私を全く信じなかったんだ。」とルーファスは言った。「彼は自分がおちょくられていると思ったんだ。」

実際の状況はペティスが彼らから聞いたものよりももう少しおかしなものだったようだが、ペティスは言った、「私は何も尋ねなかったんだ、自分はこんな感じだった、『彼が外れて自分が入るって?決まりだ。』」

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Anthony Pettis celebrates defeating Donald Cerrone during their Lightweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Al Bello/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

だがこの特価品には裏がある。ここ数ヶ月がペティスの目線からはそう見えたのに反して、UFCではタイトル・ショットは次々と与えられるものではないのだ。もしショットを手に入れて失えば-たと えそれがショート・ノーティスであった場合でさえ-もう一度手に入れるまでに数年間待つかもしれないのだ。そしてペティスが8月31日、ミルウォーキーはブラッドリー・センターで対面するヘンダーソンは2010年のWECで彼が倒した奴とは大きく異なっているように見える。

今度の奴についてペティスが認めたのは、彼がアリゾナの夜に「ショータイム・キック」で捉えた奴よりもずっとスマートであるということだ。今度の奴は知っている、どうやってラウンドを勝ち取るのかを、そしてラウンドを勝ち取ることがすなわちチャンピオンシップで勝つことなのだと。

「私は彼が5ラウンドの試合を予期していると確信している。」とペティスは言った。「彼は王者だ、そして彼はベルトを保持するためには5ラウンドを勝つ必要があることを知っている。GSPもそれを同じ方法でやる。こいつらは知的なファイターで、彼らはベルトを保持するためにはラウンドを取らねばならないことを知っているんだ。私は彼がこれまでしてきたことをするだろうと予期している。彼は出てきて、ラウンドを取るに足るだけのことをやり、そしてベルトを持ち続けるんだ。それが彼のゲーム・プランさ、そしてそれは絶対に私のゲーム・プランではない。私はいつだってフィニッシュを見据えている。」

疑問に思うべきことは、ヘンダーソンのようなファイターと対峙したときにフィニッシュを見据えることで、彼のチャンスは増大するのだろうか?それともそのせいで彼はラウンドごとのスコアを度外視する結果になり、試合が経過するにつれてチャンピオンが大きなリードを築きあげるのが容易くなるだけなのだろうか?

ペティスのキャンプはその方針をこう見ている、相手がより長くケージに留まるほどに、より危険が増していくのだと。もしあなたが5ラウンドの間そこにいようと計画しているのならば、それは単にあなたの対戦相手にはあなたを片付けるチャンスが25分間あるということを意味するだけなのだ。

「はっきり言って、私はそのやり方はアンソニーのスタイルにはまっていると思うんだ。」とルーファスは言った。「ベンはチャンピオンシップを防衛するという信じがたい仕事を成し遂げてきたと思う、そしてアンソニーは勝つための攻撃をするというファンタスティックな仕事を成し遂げてきたと思っている。そこには二つの戦略がある。あなたは勝ちに徹することが出来る、その先は数多の接戦を制することになるか、それとも物議を醸すような試合をするかだ、片やあなたは試合を終わらせることでそいつをジャッジの手から取り返すことができる、それがアンソニーが見据えてきたことだ。」

ここで彼らが分かち合った歴史を考察するのもまた価値がある。ペティスはヘンダーソンへの勝利で一つ判定があるが、彼にはハイライトとなるキックもあり、ヘンダーソンはそのキックを何度も何度も何度も何度も繰り返し見せられてきたのだ。UFCのイベントに現チャンプが姿を見せるときはいつだって、彼はでかいスクリーンでそのシーンをもう一度見るチャンスが保証されているのだ。

ペティスのハイライトを彼自身の何かと置き換えようとする時、その瞬間の精神的なインパクトは彼にガラにも無いようなことをしでかさせるかもしれない、とルーファスは言った。それか致命的な瞬間が訪れたとき、そのことが彼を疑心暗鬼にさせるかもしれない。

「君はもう一度膝を食らうことが心配かい?アンソニーが彼を膝で蹴り上げたように。」とルーファスは言った。「君は神と皆の前で『ショータイム・キック』を食らうことが心配かい?頭の上の方に蹴りを食らわされるのが心配かい?そいつはアンソニーにとって大きなアドバンテージとなる、だが彼は前回の勝利の上に胡坐をかかないように必死で練習してきた。誰かを二度倒すというのはとてもしんどいことなんだ、そしてあの時以来、ベンはずっとバッド・エンドのハイライト・テープに接し続けてきた。彼はそのことに感情的にならざるを得なかっただろうし、だから彼はとてもよく準備してくるだろう。あの(MMA)ラボと彼のコーチは非常に優れた戦略家だ、そしてアンソニーを倒すための最も安全な方法を提示しようとするだろう。」

それはペティスが予想していることであり、ヘンダーソンが最近見せたパフォーマンスである、しかしそれは彼が見習いたいと思わないことだ、と彼は言った。

「私はあのスタイルのファンじゃない、」とペティスは言った。「私はそれを試みようとさえしないだろう。あんなものは単にタイトルを保持するためにゲームのルールを駆使してるだけのことだ。もし本当にベストでありたいのなら、つまり、アンデウソン・シウバを見ろってことだ。彼はこの間の試合でノック・アウトされたけど、私は彼を本当にベストだと思っている、なぜなら彼はトップの連中を幾人もフィニッシュしてきたし、彼はそれをとても印象的な方法でやったんだ。彼は流れ作業をやって、相手のトップに居座ってラウンドを取ろうとはしないんだ。彼は試合を闘うことでそこから離れているんだ。私が尊敬しているのはそのことだ、そしてそれが私が成りたい人間なんだよ。」

CHICAGO, IL - JANUARY 26:  Anthony Pettis (L) kicks Donald Cerrone (R) during their Lightweight Bout part of UFC on FOX at United Center on January 26, 2013 in Chicago, Illinois.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC Via Getty Images)

彼はひたすらに望まねばならない、そんな闘士になることを、そしてミルウォーキーで全てが言い行われた時に、UFCのライト級ベルトを掲げていることを。今私達が知っていることがあるとすれば、
ヘンダーソンはあの金属類を紳士的に手放したりはしないだろうということだ。

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一ヵ月後にタイトルを賭けてベンソン・ヘンダーソンと再戦する予定のアンソニー・ペティスの近況でした。ペティスもやはりカッコイイですね。ペティス陣営の「相手が5Rを望むということは、KOするチャンスが25分間あるということだ」というのは痺れました。

ジョゼ・アルドとのフェザー級タイトルマッチが怪我で流れた後、今度はヘンダーソンと対戦する予定だったTJ・グラントが練習中の脳震盪で欠場したため、アンソニー・ペティスがその代役として王座挑戦することになりました。怪我を治すにはぴったりの期間、挙句開催場所はホームタウンとあまりにも都合が良すぎたために、TJ・グラントが金を貰って挑戦権をペティスに譲ったんじゃないかという陰謀論まで噴出しました。

しかし当の本人も、あまりにも都合が良すぎたためにその話を全然信用してなかったようです。笑えないドッキリを仕掛けられていると思ってむくれているペティスを前に、ルーファスさんが冷や汗を流しながら説明してる絵を想像すると笑ってしまいます。

そして現在のヘンダーソンについては、よりスマートになった、という評を下しています。小賢しくなった、というニュアンスを感じます。ヘンダーソンは勝つために必要なことしかやらないし、全ラウンド 判定を取りに来ているのだ、そしてそれは「ルールを駆使して」いるだけのことなのだ、と。「manupilating」ですので、小手先でという意味合いが強い気がします。先日のギルバート・メレンデス戦などはその最たるものでした。結果、彼は危うく判定を落としかける羽目になったのです。彼のフィニッシュを狙わない姿勢には、私もまたペティス同様の感想を抱きました。

記事中でJunkieの記者が指摘している通り、戦略としてヘンダーソンとペティスのどちらがいいのかはわかりません。どちらも基本的に一長一短であり、その選択もまたこのスポーツの重要な一要素でしょう。ここでどちらを選択するかで、スキル・セットもフィジカルの作り方も、微妙に異なってくるように思うからです。むしろ今あるフィジカルとスキル・セットから、より自分に適した戦略を選択するというほうが適切でしょうか。これはチェール・ソネンが指摘したとおり、別種のアスリートと言えるでしょう。片や様子を見ては瞬時に大爆発する短距離走者であり、片やずっと同じペースで最後まで運動量を落とさず動き続ける長距離走者です。

短距離走者には、一瞬で全てを片付ける可能性があります。これが最大の強みであり、ペティス陣営が言うように長引けば長引くほどに、KOできる可能性が残るわけです。これはアンデウソン・シウバがまさにその体現者でした。一方、長距離走者に対してスタミナで負けてしまえば、後はずるずるとペースを握られて負けることになります。スタミナをロスすれば、当然必殺の一撃も打てなくなっていきます。手数の少なさから、ビッグ・ヒットがなければ判定に置いては大差で敗れてしまう可能性も出てきます。

長距離走者には、ペースを奪って相手を支配できる可能性があります。スタミナを奪って相手の攻撃の芽をつめば、安全に最後まで試合を展開することが出来ます。その体現者こそがウェルター級王者GSPです。一方、短距離走者を相手にすれば、試合時間がそのまま自分にとっては危険な時間となりますので、自分のスタミナを消費しすぎたり、得意の場所で相手を捕らえることができなければ被KOの可能性が跳ね上がります。大きく差をつけられなかった場合、僅差の判定で敗れるようなことも起こるでしょう。

そしてペティスは短距離走者を選びました。彼はアンデウソン・シウバを尊敬しています。そしてその理由は「試合で闘うから」だとしています。勝つこととは相手を打ち倒すことであり、そしてそれが闘うということなのだ、と。私はどちらのスタイルも好きですが、どちらのスタイルであってもこの信念があるべきだと考えています。

GSPは長距離走者ではありますが、彼の判定にはあまり疑念の余地がありません。それくらいに彼は試合を支配しますし、それだけ攻め続けます。だから一発が無いだけで、彼は相手を倒しきることは考えているのだろうと思っています。彼のやり方では完全制圧には時間が足りないのでしょう。逆にスプリットになったり判定で議論を呼ぶヘンダーソンは消極的で、あまりフィニッシュを狙っていないのだと思います。ヘンダーソンの問題点は、長距離走ならばもっと攻めなければいけないという点です。レスリングを使うならば、完全制圧をしなければいつか判定で敗れる日がくるでしょう。

またルーファスが指摘している、「ショータイム・キック」のトラウマがヘンダーソンにどのように影響を与えるのかも注目です。ヘンダーソンは熱くなると無理に行き過ぎるところがあり、それが結果的に功を奏すことも多々ありますが、そこが彼にとって最大の弱点になることも多いです。相手は一撃必殺のノック・アウト・アーティストである「ショータイム」ですから、その一瞬だけで十分です。彼が過去の屈辱を晴らそうと熱くなった瞬間を、ペティス陣営は待ち望んでいます。そして彼が熱くなれば、ペティスは不利であるレスリングの攻防を遠ざけることができるのです。

ポイントは、ヘンダーソンがどこまでスタンドでやりあえるかでしょう。恐らくペティスは相当にテイクダウン・ディフェンスを鍛えてくるでしょうし、スタンドで全くやりあわずにTDばかりに執着すればペティスとしては対処がしやすくなります。ヘンダーソンはスタンドで、ある程度までプレッシャーを掛けれなければ自分のゲームプランに持ち込むことは難しくなるはずです。

一方でペティスは、どれだけスタンドを維持できるか、そしてTDされた後にどれだけ巧く対処できるかです。ペティスは柔術に秀でており下から攻めることもできますが、トップを取られて削られ続ければスタミナを大きく損ね、また判定ではまず間違いなく負けることになります。GSPvsコンディット戦は参考になるでしょう。下から攻めることはまず捨てるべき選択肢であり、いよいよ劣勢になった時のみ考えるべきだと思います。基本はとにかくTDを防ぐこと、倒されたらすぐに立つことを考える のがいいでしょう。ここでTDディフェンスをしっかりやれば、スタミナをよりロスするのはヘンダーソンになるはずです。

スタンド、それもパンチの攻防ならばまずペティスが負けることはないと見ています。ヘンダーソンはボクシングがそこまででもない上に、過去乱打戦をしては被弾してフラッシュ・ダウンを喫していますので、ここでペティスが一撃を当てられれば勝機は十分です。メレンデスはTDをほとんど捨てていた上に蹴りを使いませんでしたが、ペティスは蹴りの名手であるためにスタンドの間合いはヘンダーソンと五分です。削りあいでも負けることは無いでしょう。

この勝負はスタイルの勝負であり、ペティスの信念にはとても共感するものがあります。私はどちらの選手も好きですが、メレンデス戦でのスムースの戦い方が気に食わなかったので、今回は「ショータイム」アンソニー・ペティスを応援したいと思います。

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