2013年11月27日水曜日

ローリー・マクドナルド「僕は負ける必要があった」

ローリー・マクドナルド:「僕は負ける必要があった」



MMA fightingより



2013年のローリー・マクドナルドは、UFCでの最初の数年間にウェルター級を荒々しく駆け抜けた若者からはかけ離れた人物である。彼の凶暴性は慎重な抑制された観念に取って代わられ、マクドナルドはとうとうUFC167で彼自身の進化の犠牲となったのだ、その大会で彼はロビー・ローラーに痛恨のスプリット・デシジョンで敗北した。

しかしそれは痛手ではあったかもしれないが、その敗北は究極的にはその24歳にとって最良の出来事となるだろう。

「僕はそれを必要としていた。」とマクドナルドはThe MMA Hourの月曜版において率直に認めた。

「僕が思うに、それは物事の積み重ねの結果だ、それは(これに)通じていたんだ。それはまさに自分の精神状態、私が試合に至るまでに考えてきた過程なんだと私は思う。私は試合後のほうがずっと関心があった、試合に臨む時よりもね。」

「僕の試合は以前は、」と彼は続けた。「僕にとって一番エキサイティングなのは実際試合に臨む時だったんだ。僕はハングリーだった。僕は自分の対戦相手を破壊したかった、そして僕はハングリーだった。僕は戦うために己の内にそういう情熱を持っていた。僕が思うにそれは今年の自分の両方のパフォーマンスに表れていたと思う、そこで僕はあの情熱を持っていなかったんだ。」

マクドナルドが彼の浅いキャリアでわずか2度目の挫折に苦しんでいるかもしれない一方で、振り返ってみれば彼の無関心の兆候は7月下旬、ジェイク・エレンバーガーへの勝利の中でさえ明らかだったのだ、その試合はFOXで中継されてファンからは大きな批判を浴び、UFC社長デイナ・ホワイトも同様だった。

「僕は自分が関心を持っていたとはまったく思わない。」とマクドナルドは認めた。「僕は自分のエレンバーガー戦をこう感じた、僕は本当にいい試合をしたと思う、僕は技術的には完璧だったし、僕にはキレがあった、そしてその試合を見て僕はがっかりしなかった。だけど僕は結局のところ楽しくなかったし、それは僕がこれをやったためだ。僕はそこに上がった時に自身を表現したいんだ、アーティストが絵を描くようにね。それが僕にとって基本的な自己表現だ、そして今年のこれら2試合の中でそれをしていたとは、僕は思わないんだ。」

「僕はそれらを楽しめていなかったんだ。僕は自分が楽しんだことを理解しつつケージから去ることはなかった。普段なら、勝とうが負けようが、過去の自分の試合の中では、僕はいつも楽しんでいたんだ。私はいつも自分の戦いの時間を満喫していたし。今年僕は戦うことを楽しめなかった。」

それは負けた選手にとって経験をポジティブなものに正当化するための決まり文句となってきた、それは彼らをやる気の復活した状態に立ち戻らせてくれたと言うのだ。しかしマクドナルドの場合、それが彼が話した驚くべき本音であろうと、もしくは彼の喉に詰まったわずかな怒りであったとしても、その感想は本当に事実なものに見える。

「カーロス(コンディット)への敗北からここ3年間は、僕にとって全てがとても容易いものとなっていた。試合はとてもスムーズだったし、僕はちょうどこう感じていた、ワオ、とても簡単になっているぞってね。だから僕は何だか自分のガードを少しばかり下ろし気味だったんだ。」

「僕は負ける必要があった。僕はハードな試合を経験する必要があった。僕はとてもやる気になっている、これまでよりもずっとね。僕はとてもハングリーだ。僕は自分があの情熱を取り戻したと感じているんだ。」

マクドナルドは、ローラーとの激突は僅差の試合でどちらにも転びえたと思った一方で、結局のところそれは大した問題ではなかったことを認めた、なぜなら彼はジャッジのスコアカードが異なって読み上げられた場合でさえ、同様の失望を感じていただろうからだ。

彼は繰り返し自分のパフォーマンスを「つまらないもの」であり「バツの悪い」ものと見なした、そして彼はすでにUFCに対して新しい試合を組むように頼み、彼らはそれを喜んで受け入れたことを明らかにした。

「それはきっとすぐに発表されるだろう、僕はそう思ってる。」とマクドナルドは言った、2014年中に行われるだろうということより他に、対戦相手や日時ついて詳細に述べることはなかった。

「悪い試合にはならないよ、それは確かさ。とてもやる気が起こっているからね。」

腫れた足首と叩き潰されたプライドは別として、マクドナルドは相対的には無傷でどうにかUFC167から逃げおおせた。彼は通常は試合の後にある程度オフの時間を取る、しかし今回、決意したマクドナルドは1週間後にトライスターの屋根の下に戻った、そのことはインタビュー中に彼の左目の下に、斑点となった黒アザがくっきりと残っていたことからも明らかだった。

物事がどんな結末になったとしても、マクドナルドのゴールは同じままだ。彼はUFCウェルター級王者になるつもりだ。彼に我が道があるのならば、今この瞬間は単なる価値あるつまづきとなるだろう。

「僕は本当にそう思うよ。僕はあの情熱を取り戻したし、それがいい感じなんだ。」とマクドナルドは誓った。「僕が戦いについて考える時、僕は進み出たいし誰かをぶん殴りたいんだ。僕は次の対戦相手には控室で泣いていて欲しいと思う。僕は彼らが自分を恐れるようになって欲しい。僕はただ誰かを傷つけたいんだ、そしてそれが自分がいるべき大まかな心の枠組みなんだ。2013年は自分にとってそうじゃなかった。だけど今はそうだ。」

--------------
というわけで、先日ロビー・ローラーに敗北を喫したローリー・マクドナルドの試合後コメントでした。これは期待できそうです。

ローラー戦は感想でも書きましたが、勝てない試合ではないのに作戦ミスして負けたというのが私の印象です。そしてその敗北を招いたのは、彼がペン戦あたりから見せていた間違った慎重さ、将来に悪影響を与えるであろう消極的な戦い方でした。相手を完全に倒しに行かない、自分から仕掛けていかないという戦い方は、絶対に選手の可能性を奪い、その進化を止めてしまいます。アレスはケージに新しい戦略を持ち込む必要に迫られていました。

しかし本人は想像以上にそのことを把握しており、どうやらすっかり立ち直っていたようです。24歳という若さで敗戦後すぐにこう考えられるのは驚きです。やはり彼は才能があると思います。自分の考え方、やってきたことの積み重ねの結果があの敗戦だったのだ、と冷静に分析しています。

彼は言うには、今年に入ってからというもの、どうも昔感じていた情熱が薄れ、ケージに入るときのワクワク感が無くなっていたようです。原因はわかりません。ただ試合を楽しめなくなっていたのは間違いないようで、そのために以前彼が見せていた凶暴性は鳴りを潜めていました。

だから彼はこの敗北は必要なことだったのだと言います。彼が絶好調になったのは、「ナチュラル・ボーン・キラー」カーロス・コンディットに人生初のTKO負けを奪われてからでした。彼は敗北後にハングリーになり、そしてあらゆることが簡単に運んだようです。もしかしたら順調に進み過ぎた時に、彼はその状態に飽きてしまうのかもしれませんね。なので今回も、この敗北によって彼はハングリー精神を取り戻して、今はとてもいい感じとのことです。

確かにこういう発言は負けた選手の負け惜しみや敗戦の正当化によく使われる陳腐な言葉です。しかしあのマクドナルドがこういう発言をすると、他の選手が言うよりもなんだか説得力を感じます。しおらしく真面目になると余計狂気度が増した印象を受けるからでしょうか。

皆さんの期待通り、殊勝になったかと思いきやその後の発言は相変わらずキレてます。次の対戦相手には、楽屋で泣いてもらいたいそうです。他の選手には自分を恐れて震え上がってほしいそうです。相手を叩きのめしたい!とかはまだ可愛げがありますが、相手選手に楽屋で泣いてもらいたい、この表現にこの男の全てが現れています。これでこそローリー・マクドナルドです。

つまらないと大きな批判を受けたエレンバーガー戦も自分で見直したようです。彼曰く技術的には勝っていたし、がっかりはしなかったようです。彼が言うようにキレや技術は実際素晴らしかったでしょう。しかしやっぱり面白くはなかったし、自分が表現したいものではなかったとのことです。彼は試合では、基本的に芸術家が絵を描くように自分を表現したいのだと言い、この試合ではそれができていなかったと認めています。

気持ち悪いという人もいるでしょうが、この美意識はトップ選手には欠かせないものだと私は思っています。ファンタジスタとなるにはこの美学が必須です。そしてマクドナルドからはこの才能を感じます。ナルシシズムは傲慢さと紙一重ですが、一対一のメンタル・ゲームの要素が強いMMAではこの美意識が他者を圧倒する大事な才能です。これが相手選手を圧倒し、幻想を生み出し、そして相手を畏怖させて魔法にかけてしまうのです。一番の魔法使いはご存じアンデウソン・シウバです。

マクドナルドは自分が戦いのことについて考える時、やはり前に出て相手をぶちのめしたいんだということを思い出しました。そして次の試合では相手をズタズタにしてやるつもりのようです。彼の決意は固く、いつもは試合後に少し休むそうですが、今回はわずか1週間でジムに戻っています。

また試合をしたばかり、それもあれだけのハード・ヒットを受けてダウンまでしていながら、マクドナルドはすでにUFCには次の試合を組んでくれとお願いをしており、UFC側はそれを快諾したそうです。あのクレイジー・カナディアンがやる気を取り戻したとなれば、当然マッチメーカーは大喜びで対戦相手を探すでしょう。もうすぐ発表されるだろうとのことですが楽しみですね。カンプマンとかどうでしょうか?現在ベラトールからフリーとなったベン・アスクレンがマクドナルドと対戦を希望してもいますし、誰と対戦しても面白そうです。シールズあたりでもいいかもしれませんね。

「アレス」ローリー・マクドナルドは2013年、本来の自分の凶暴性を抑え、どこか情熱を失って戦っていました。そのことは本人も自覚していたようです。そしてローラーの熱い拳によって、彼はいよいよはっきりと目が覚めました。これは期待していいでしょう。私はマクドナルドの残忍さを愛しています。小賢しく戦う軍神に用はありません。彼には十分な武器があります。必要なのは積極性と、創造的な戦略のみです。美学を持つ軍神ならば、きっとケージに新たな戦い方を持ち込んでくれるでしょう。2014年のマクドナルドの試合が今からとても楽しみです。早く勝利を重ねて、復讐者リストに載っているコンディット、ローラーと再戦してほしいですね。

もっとも私の愛するカーロス・コンディットには勝てないでしょうし、またボコられて楽屋で泣く羽目になると思いますが。

2 件のコメント:

  1. 試合後の腫れもひいてない内からトレーニングを再開というのは凄いですね
    やっぱその位のKitschguyでないとUFCのコンテンダークラスにはなれないんですかね

    コンテンダーといえば自分は
    「GSP兄貴が引退するまで安全第一で」
    とか言われてるなり無意識の計算があってなんかなーと勘ぐってましたが…

    そういえばロリマクも格闘家らしくないきれいな顔ですね
    ナードぽくもありますが
    体と顔があってないのも若かりし頃の兄貴ぽいですw

    返信削除
    返信
    1. マクドナルドは結構鼻血出したりしてるんですけど、あんまり顔に傷が残ってないですね。顔に傷が増えても精悍になるよりは狂気じみるだけだと思いますがw

      まだ24歳ですし、彼の顔がケージになじむにはまだ数年かかりそうです。それまでは不気味なままでしょうねw

      削除