2013年2月21日木曜日
ジョン・フィッチ、本当に犠牲になる
UFCがジョン・フィッチ、ウラディミール・マチュシェンコ、
他14名をリリース
MMAJUNKIE.COMより
画像はUFC公式より
UFCのベテランであり元タイトル挑戦者であるジョン・フィッチと
ウラディミール・マチュシェンコらが、今週UFCがリリースした
ファイターリストの中に載っていた。
MMAFighting.comが最初にこのニュースを報告し、
UFC社長のデイナ・ホワイトに確認中である。
フィッチとマチュシェンコと共に、その解雇リストには
テリー・エティム、ユリッシーズ・ゴメス、ジョシュ・グリスピ、
チェ・ミルズ、ジョルジュ・サンチアゴ、ポール・サス、そして
手塚基伸らが並んでおり、彼らは先週末にロンドンで
行われたUFConFUEL7の興行で敗戦している。
またその解雇リストにはジェイ・ヒエロン、C.J.キース、
ワグナー・プラド、マイク・ルソー、マイク・スタンプ、
シミアン・ソレセン、そしてジェイコブ・ヴォルクマンらも
名を連ねている。そのヴォルクマンのニュースは本日
すでに報道されている。この選手たちは全員先の対戦で
敗戦を喫している。
UFCに近しい関係者がMMAjunkie.comに語ったところによると、
UFCは2013年中に100人程度のリリースを予定しており、
ストライクフォースがその活動を終えるに従ってそこの
ファイターたちと契約したことと、同様に先ごろ始まった
女子階級の副産物としてということだ。
フィッチ(MMA24勝5敗1分、UFC14勝3敗1分)のニュースが
すぐさまMMA業界に衝撃を与えたのは間違いない。
インディアナ出身であり長らくアメリカン・キックボクシング・
アカデミーのウェルター級であった男は、長年
世界でも屈指の170ポンド選手であると思われていた。
2008年、フィッチは王者ジョルジュ・サンピエールと
ウェルター級タイトルを賭けて対戦したが、
ユナニマス・デシジョンという結果で敗北した。
彼はUFCでキャリアを始めてから8勝0敗だったし、
その敗北は16連勝後の、彼にとって初めてのものだった。
その挫折の後、フィッチはUFC127でB.J.Pennを相手に
マジョリティ・ドローを喫するまで5連勝を重ねた。
その後、彼を取り巻く事態は少しずつ動き出していく。
UFC141で、フィッチはわずか12秒でジョニー・ヘンドリクスに
ノックアウトされてしまった。彼はUFC153で
エリック・シウバに判定勝利を納めて復活した。
しかし今月初旬に行われたUFC156で、彼は
デミアン・マイアに支配されてユナニマス・デシジョンで
敗北した。
UFCの最新ランキングで、フィッチはNo.9にランクされている。
(他の選手に関しては省略しました。)
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フィッチさんがまさかのリリースをされてしまいました。
このリストの中で、フィッチさん以外は概ねリリースでも
いいかな、と思います。しかしフィッチさんはちょっと
納得がいかないものがあります。
UFCのリリース基準というのは実はこれといった
確固たるものが明示されているわけではありません。
世間では3連敗が大体のリリースの目安とされていますが、
あくまで目安であり必ずしも3連敗でリリースとは限りません。
ファイトスタイルがブルファイトで、果敢に攻め込むタイプ
の選手は連敗をしてもリリースされにくい傾向がありますし、
連敗をしてもその試合がFOTNであったり、相手が強豪で
惜敗した場合にもリリースを回避される傾向があります。
また過去に有名だったネームバリューがある選手
(たとえばPRIDEで人気だった選手など)やTUFなどで
人気を博した、メディアに知名度がある選手などは
負けが混んでも価値があると見なされてリリースを
されないことが多いです。
一方で、消極的な試合をして判定で負けたり、
明らかなバッドシェイプで露骨なスタミナ切れをしたり
計量をオーバーしてしまった場合、また素行不良や
問題発言などをすると一敗で即リリースという
こともよくあります。また高齢で、明らかにタイトル挑戦が
見えてこないような未来の無い選手もリリースされ
やすい傾向にあります。最近では怪我をした選手の
代役出場を引き受けたものの、ショートノーティスで
絞りきれなかった選手が即リリースされてしまうなど
少し気の毒なケースも散見されていました。
フィッチさんは最近負けが混んでいたとはいえ、
負けた相手はジョニー・ヘンドリクスとデミアン・マイアで
どちらもタイトル挑戦が見えている強豪です。
しかも若手のホープであるエリック・シウバにはきちんと
勝っているわけで、成績的な面で言えばリリースされる
理由はありません。
もしリリースされた理由があるとすれば、UFCと何らかの
理由で揉めたか、マイア戦が消極的で無気力な試合と
判断されたかのどちらかでしょう。自分は恐らく後者だと
思います。マイアの戦略にはまり、防戦一方に追いやられ
判定で負けてしまったのは事実です。完敗と言っていいでしょう。
しかしそれはマイア側を賞賛するべき内容であり、
けっしてフィッチさんが貶められるような内容ではなかった
はずです。むしろあの状況下では善戦したほうでしょう。
フィッチさんは最後まで事態を好転させようと必死で
対処していたと自分は考えています。
もしかしたら、あのマイアの戦法で完封されるようでは
到底タイトルは見えない、年齢も考えたらもうこれ以上
伸び代はないと判断されたのかもしれません。
最近ではフィッチさんも、勝つためではなくファンを
魅了するようなリスクを背負った試合をしようと
し始めていたばかりですし、むしろこれからが
楽しみなところでした。海外でのファンの反響を
見ても、決してファンがそこまで少なかったとも
思いません。海外では、エンターテイメント性を
重視するあまりに選手の実力よりも人気を
優先し始めていて、これは危険な兆候だと
指摘する向きも多いですね。一部には
「やった!ベラトールでアスクレンとの究極の塩
対戦が見れるぜ!ひゃっほー!」と浮かれてる
変態もいましたがw
自分としては、ランキングも作ったことですし
そろそろここらでリリースのある程度明確な
基準を提示したらいいんじゃないかと思います。
そもそもランキング9位をリリースするのでは、
何のためのランキングだよハゲっていうことに
なってしまいます。実力者が、人気がないせいで
たった一度のワンサイドゲームによる敗戦
でリリースされるのでは、さすがにちょっと
スポーツとしてどうなのかと思います。ファンも
リリース基準がわからないことでかなりの
フラストレーションを感じつつあります。また
スポーツでありながら、実力者が人気を理由に
冷遇されることに矛盾を感じて憤る人も大勢
います。
そもそも皆が派手でKO狙いのスタイルばかりじゃ
面白くありません。フィッチさんのような手堅い
スタイルがあってこそ、華のある選手の価値も
わかるのだということをジョー・シルバには
教えてやるべきでしょう。塩があってこそ甘みが
引き立つのです。ジョー・シルバがスイカを
食うときには絶対に塩をかけさせてはいけません。
塩のありがたみを痛感させるべきです。
UFCはこれまで人気と実力主義とのバランス
を巧く取ってきたとは思います。ですが
そのバランス感覚が崩れ始めたときに、誰が
それを指摘し、どうやって修正するのかが
マンパワーに頼ったやり方では不明確です。
明文化してくれれば選手も試合内容改善を
しやすいですし、ファンもリリースを見て納得の
しようがあります。
あまりきっちりと明文化するとデメリットもあります。
連敗を基準にしてしまうと強豪との対戦をする人ほど
リリースされやすくなりますから、元王者などはかなり
のリスクになります。そうなれば実力人気ともにある
のに泣く泣く切るということもありうるでしょう。なので、
「大体こういうことを基準に判断しますよ」という程度
のアナウンスをするのが一番いいのかなと思います。
選手のリリースやギャラについて外部の人間を入れて
判断するのもいいでしょう。
もし可能であるなら、リリースした選手について
リリース理由、というものを添えるだけでいいかも
しれません。「彼は成績不良により」「彼は明らかな
消極的試合により」などを添えて解雇すれば、ファンも
選手も皆納得できる、納得できないまでも理解は
最低限できるのではないかと思います。
今年中に100人くらいがリリースされるということですが、
その第一弾としてフィッチさんがリリースというのは
象徴的なところです。これによって他団体の層が
厚くなり活発になるというのは喜ばしいところですが、
一方でUFCが実力ある選手を多く手放せば
必ず後々響いてくるのではないでしょうか。
女子部門創設、そして団体併合による選手の増加に
伴う負担の増加、メジャースポーツを目指して
エンターテイメントとスポーツの狭間で揺れる運営、
それらの煽りを受けて実力者であり人格者の
フィッチさんは本当に犠牲となってしまいました。
彼が今後どうするのかはわかりません。
しかし彼ならばきっと、この苦境もタフなメンタルで
乗り越えてくれるだろうと信じています。
いっそ他団体で王者を目指してもいいかも
しれませんね。