トレイナーたちは、グレイソン・チバウの試合の夜の体重戻しの秘密を暴露する
MMA fightingより
グレイソン・チバウは試合の夜に181ポンド(82.174Kg)を計測する、ずしりと重いライト級選手だ。彼は24時間という期間にどうやって26ポンド(12.3Kg)も増やすのだろうか?彼のフィジカル・コンディショニングに答えられる連中、トレイナーのステファン・ディアスとエバートン・ビターには彼らの方法論があった。
「ステファン・ディアスはこのグレイソンとの手順全てを約5年ほど前に始めたんだ。」とビターはMMA Fightingに話した。「私はステファン・ディアスと合同で、アメリカン・トップ・チームで仕事を展開した、私達は同系の仕事を持っている。スポーツ・トレーニングには『生物学的個性』と呼ばれる原則があり、我々はそれに敬意を払い、キャンプを個々に作らねばならないのだ。」
「チバウのケースでは、ステファンは彼のために必要な重量を落とす戦略を作ることに数年間を費やした―そして彼はチバウの試合で事足りる量を知っている―私は劇的に変えることなくこの仕事に追従してきた。そのアスリートはこの作業全てに慣れていた、だから我々のゴールは各身体能力においてのベストをどんどん探り続けることだ。我々が作業する試合はどれも分析であり、そして彼のジェイミー・バーナーとの試合の後、我々は何を改良できたのかを見るために腰を落ち着けた。」
8月31日、UFC164においてチバウはバーナーと155ポンドで戦った。月曜日、計量の4日前の日に、そのブラジル人はいまだ20ポンド以上落とす必要があった。全ては計算されている、そして彼らは、彼が4日以内にそれほど多くの量を落とすことが出来ないのではないかと恐れることは決してなかった。
アメリカン・トップ・チームの栄養士レオポルド・レオンの助けを借りて、チバウは8月30日の計量で155ぴったりの数値をたたき出した。次の日、チバウはバーナーをユナニマス・デシジョンで破り、彼のUFC戦績を13勝7敗に延ばした。
「試合の夜、彼は181前後だった、」とビターは言う。「このリカバリーはコントロールされていた、だから我々は彼を規定体重にしたし、それが彼のパフォーマンスに影響することもなかった、だがそれは彼の対戦相手次第で変わる可能性がある。」
重ければ重いだけいいのだろうか?そうではない。
「我々は彼を試合当日に可能な限り重くしようとしてるわけではない、」と彼は言う、「なぜなら我々は過去に、彼が※血清ナトリウム過剰によってとても膨れ上がって、その体重がほぼ186になった状況を経験したし、このことはケージの中で彼の動きに悪影響を及ぼしてきた。」
(※訳者注 脱水による高ナトリウム血症と思われます。)
4日間の内に20ポンド落とすのは容易ではない、だがアメリカン・トップ・チームのトレイナーたちはその秘密を暴露する。
「ファイト・ウィークの期間中、彼は打撃コーチのルシアーノ・『マカロニ』と柔術コーチのマーカス・ダ・マッタと共に技術的な部分を練習する、だが体重を落とす補助として有酸素運動の維持も行うのだ、固形食物の食事制限と一日あたり6から8リットルの範囲での水分摂取(蒸留水)の増量も一緒にだ―それかナトリウム0パーセントの水だ―徐々に水を減らした後の2日間の間でだ。」とディアスは言った。「これは身体にさらなる水分の排出を引き起こし、計量の前の瞬間には何も保持していない状態になる。」
チバウが155の数値をたたき出すとすぐに、彼は自分の身体に水分を戻し始める。
「この短時間のリカバリーの後で、彼は吸収の早い軽い食事を食べる、バナナ、グレープ、フルーツサラダのようなものだね、ビタミン・ウォーターやゲータレードと同じだ。」とディアスは言う。「計量は大抵夜遅くに行うし、アスリートはすでに半ば体重が戻りつつある。我々は低脂肪で炭水化物の豊富な食べ物の摂取を二時間ごとに続け、グルタミン、デキストロース(グルコース・ブドウ糖)、マルトデキストリンとビタミンを加えたシェイクも作る、これは炭水化物の超回復を得るためと、そのアスリートのパフォーマンスを補助するためだ。我々はカルシウム・ピル、パタシアム(カリウム)、マグネシウムも加える、脱水による試合中の筋肉の痙攣を避けるためだ。」
ディアスとビターは説明する、チバウは5年間に渡ってこの手順を実行してきた、だから彼はすでに自分の身体がその変化にどう反応するかを知っているし、中止するときも把握している。サウナとホット・バスを使って脱水症状に陥るファイターはよく見るが、体重を落とすのにそれのみでやるべきではないと彼らは説明する。
「我々はサウナとホット・バスのみで短期間に多くの体重を落とすアスリートを他に何人か見てきたが、それは本当にアスリートのリカバリーを阻害するし、アスリートを失神させてしまうこともあるんだ。」とビターは言う。「事実、サウナは健康にとって非常に危険だ。我々はアメリカン・カレッジ・オブ・スポーツ・メディシン(ACSM、国際的なスポーツ医学の研究組織)からの勧告を引用するだろう:『パフォーマンスに影響を出さないために、あなたはアスリートに体重の6パーセント以上を脱水させてはならない。アスリートが流動性の物質のみ(脱水)で彼の身体の10パーセント以上を減量するとき、あなたの死の機会は非常に高確率になる。』」
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というわけで、脅威の体重戻しで有名なグレイソン・チバウの秘密についてでした。もうすでに人体実験の領域ですね。
驚くべきは、サウナや風呂に否定的なことです。減量というと一般的なイメージとしてサウナに入って汗を流すというのが浮かびます。しかし水分抜きだけでの減量は極めて危険だということです。その弊害自体はよく知られています。しかしサウナそのものを否定というのは意外でした。なぜなら今でも多くのファイターが減量の際に使用しているのを見るからです。それのみでの減量はかなりデメリットが大きいようですね。
チバウのトレイナーたちが言うには、チバウは計量の4日前まではまだ175ポンドほどあるらしいです。そこから20ポンド(10kg近く)を落とすというのだから恐ろしい話です。彼は技術的な確認のほかに、有酸素運動と食事制限を行います。そして恐らくこれがミソなのでしょうが、それに加えて計量前二日間に蒸留水かナトリウムの入っていない水を大量に摂取するようです。(※追記 水分を身体に取り込む方法に関しては不明、経口摂取以外かもしれません)ミネラルを含まない水を取ることで、さらなる水分排出を引き起こすとのことです。これによってチバウはたったの4日で一気に10キロを落とします。
そして計量が終わるや今度は超回復です。まずはビタミンやミネラル、糖分などを身体に取り込みます。その後で炭水化物を二時間おきに大量に取りつつ、ビタミン、糖分、アミノ酸のシェイクを作ってこれを摂取します。さらには大量の脱水でおかしくなった体の電解質バランスを整えるためにミネラルのサプリメントを摂取します。
これらの作業でチバウはなんと、ライト級上限の70.3キロからほぼミドル級上限の82キロまで戻すようです。2階級上の体重です。もはや反則レベルの体重差を、彼はこれらの手順を踏むことで実現するようです。この手順を編み出したトレイナーはスポーツ医学の知識に非常に精通しており、様々な文献にも目を通しているのには感心しました。こういう専門的なトレイナーがいるのは素晴らしいですね。ATTには彼らのほかにも、栄養士までいるようです。
もっとも、トレイナーたちが言うように体重が重ければそれだけ有利かといえば、もちろんそんなことはないようです。やりすぎれば体内の電解質バランスが崩壊して血清ナトリウムの数値が跳ね上がり、身体に異常を来たしてしまいます。また体重が増えすぎればスピードやスタミナにも当然影響が出るでしょう。スタイルによってはかえって邪魔になるかもしれません。
実際、私は戻しすぎてる選手でうまくいった人をあまり見た覚えがありません。グレイソン・チバウは毎回2R過ぎにガス欠を起こしているような気がしますし、他の選手もよくガス欠を起こしていたように記憶しています。単純に荷物が増えたわけですから燃費が悪くなるのは当然です。
ではどこにメリットがあるかと言えば、やはりクリンチと打撃においてでしょう。体重が10キロも上の奴をクリンチから崩そうと思えば、同じ体重の相手よりも遥かに大変になります。もしトップを取られたらスタミナの消耗速度も段違いでしょう。また打撃において、その重さにかなりの影響が出てきます。相打ちになった場合、体重差がそのまま威力の差になってでてきます。他のコンバット・スポーツは伊達や酔狂で体重を細かく分けているのではありません。体重という要素が格闘技においてはそれだけ大きな要因だからこそ、厳密に分けているしきちんと計量をするわけです。
なのでこの体重を戻すという行為は安全のために階級を細かく分けたことの裏を掻くものです。チバウが2階級も上の体重まで戻すのは、本当は結構危険なことだと思いますが、しかしこれもルール上合法である限りはテクニックの一つです。ある意味ではこういうことをやる人のおかげでルールの整備やスポーツ医学が発展するわけですから、決して無駄ではないでしょう。
いずれにしろ、チバウの戻しはやりすぎでしょう。トレイナーたちは体重戻しの限界に挑んで可能な限り重くしてるわけじゃない、といっていますが怪しいものです。気分はすっかりショッカーで、チバウの改造を楽しんでるんじゃないかと疑っています。もし私の読みどおりなら、いつか100キロを超えたグレイソン・チバウらしき人をケージの中に見るかもしれません。なんにしても、あんまり無茶なことはやらないほうがいい気がしますねw
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ATTのリバウンド法は、5年より前のPRIDEの時から注目されてましたね
返信削除デニスカーンやJKカルバンが10kgほどリバウンドさせていました
以前どこかの記事で、ATTのリバウンド法について読んだ記憶があります
輸血を応用した医療技術で体重を急減増させるとのことでしたが、記憶違いかなぁ
あるいはUFCで禁止か、ATTがメソッドを改善、もしくは隠蔽しているのかも知れません。
ご指摘ありましたので原文を探しましたが、輸血、輸液、点滴に類するものが見当たりませんでした。しかし同様に飲むとも言っていません。水分摂取量を増加させる、というのみで、自分はその言葉から経口摂取だと勝手に思いこんでいました。摂取方法について特には言及していないのですが、経口摂取ではない可能性があります。なので自分のコメントは修正しておきます。
削除いつもとても簡潔で的を射たコメントいただいて本当に感謝しております。naoさんの博識には敬服しています。また何かありましたらご指摘ください、ものすごく頼りにしていますw
チバウが宇野選手とやったときあまりの大きさの違いに驚いた記憶があります
返信削除(T-T)
チバウやカルバン20年後に後遺症が出そうですね 汗
コメントありがとうございます。そういえば後遺症とかはどうなんでしょうね?わかるのはこれからでしょうが、見る限りトレイナー達は選手の健康面には結構気を使ってるようです。臓器への負荷が怖いですね。
削除まあ健康にプラスになることは絶対にないとは思いますw
(※追記 水分を身体に取り込む方法に関しては不明、経口摂取以外かもしれません)
返信削除タイムリー・・・というわけではないですが、10月から禁止になる点滴による水分補給でしょうね。
はたして、チバウさんはどうなってしまうのか。
そして、もうすぐUFC日本大会!
お忙しいと思いますが、大会後の感想など楽しみにしてます。
返信遅れて申し訳ありません;;最近自分のことで手いっぱいでブログの管理を放置してましたw じつは記事もちゃんと読んでないのですが、点滴は禁止になったんですね!チバウさんは試合勝っちゃいましたがw
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