ソネン:戦いがJDSの寿命を数年縮めてしまった
undergroundより
画像は一部UFC® 166 Event Gallery | UFC ® - Mediaより
土曜の夜にジュニオール・ドス・サントスはケイン・ヴェラスケスに敗北した、その過程で余分な殴打を受けながら。その試合はケインの冷酷非情な攻撃と(拳の滝の下に立っていることを考えればいい)、そしてドス・サントスのハートが長く記憶されることになるだろう。しかし、そしてさらに重要なことには、その試合はこのスポーツの転換点として記憶されるかもしれないということだ-その夜は、知的な防御が不足した状態の終焉を待つことが、試合を早く止めるための最適な基準ではないことをこのスポーツが決定した時なのだ。
何度もケージ脇に控えたドクターがJDSをチェックした、ハーブ・ディーンの指示で二回行った、そして試合の続行が許可された。第3ラウンド中、ディーンは人間がそれを止めることが可能なところまで近づいた、彼の手は選手達の体に置かれてさえいた、しかしこれ以上ないほどに紙一重の所で、彼はそのまま続けさせたのだ。
第5ラウンドにJDSはニンジャ・チョークにがっちりと捕えた、そしてそれはこのスポーツの歴史において最も偉大なる逆転が起こるかもしれないと思えた。だがその後ドス・サントスは頭から落とされて、彼は無防備なままとなり、そしてディーンが割って入った。
その医者は、そのレフェリーは、その選手は、そしてそのコーナーは全員が試合を止める能力を有している、そして誰も行使しなかったのだ。
UFC社長のデイナ・ホワイトはケージ脇でこの試合は終わりだと叫び続けていた、しかし彼は担当者ではない、州の統括機関が担当なのだ。
「あの試合は第3で止められるべきだったんだ。」とホワイトは後に言った。
「私は長年このスポーツに関わってきた奴だ、それにボクシングもだ、そして自身のためにならないほどにタフすぎる男たちを見てきた。そしてドス・サントスはそういう連中の一人だと私は思う、一つ前のケインの試合と今回のケインの試合の中でな。そして私が思うにあの試合は止められるべきだったんだ。彼が更なる損傷を負う必要があったのだとは私はまったく思わない。」
そして今チェール・ソネンが議論に加わった、ファンとのQ&Aセッション中のことだ。
「ジュニオール・ドス・サントスのコーナーマンは首にされる必要がある、それだけだ。」とソネンは言った。「あれは不適切であるというのを超えていた、というのも彼らは彼を向こうに送り返したんだ。医者は二度入ってきたが、なんとまああの医者は私にはさっぱりわかりませんという事態に陥っていた。あのレフェリーは試合を止めなかった、けれども彼は止めるべきだった。究極的にはそれは君のコーナーマンに帰結するんだ、君が信じている、まるで父親代わりのような存在の彼にね、そしてそいつはジュニオール・ドス・サントスを倒れさせちまったのさ、それだけの話だ。コミッションはこれらコーナー・マンを認可している。私は理由なんて知ったこっちゃないが、私が推測するに彼らの25ドルが持っていかれるだろうね。それはコーナーマンに罰則が科せられた初めての事となるべきだ、彼がしたことは過ちというものを超えていたからだ。」
「君の選手がもはや続けることが出来ない時、君は試合を止めてはならない。君の選手がもはや勝つことが出来ない時、君は試合を止めてやりたまえ。君のところの奴が勝つことが出来ないとわかったその瞬間、君は彼をそこから連れ出してやるんだ。あの試合はもっと早くに止められるべきだったんだ。それはジュニオールの寿命とキャリアを数年間縮めたんだ、あのコーナーマンは首にされるべきだ。」
彼の陣営によれば、ドス・サントスはその試合が第2ラウンドに止められたと思っており、そこからずっとオートパイロット状態で戦っていたのだという。
-----------------
UFC166:ジュニオール・ドス・サントスのコーナーは、ケイン・ヴェラスケスとのタイトル戦中に「タオルを投げ込むことは一切考えなかった」
MMA maniaより
ジュニオール・ドス・サントスのコーナーは「シガーノ」のハートと能力がケイン・ヴェラスケスとのタイトル戦を終わらせることを一度たりとも疑わなかった、彼らがUFC166でタオルを投げ込むことについて考えすらしなかったのはそれが理由だ。
アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)社長デイナ・ホワイトによれば、2013年10月19日のUFC166における「シガーノ」の王者ケイン・ヴェラスケスとのヘビー級王座戦の第3ラウンド中に、ジュニオール・ドス・サントスのコーナーはタオルを投げ込むべきだったという、そのブラジル人をそれ以上の損傷から救うためだ。
だがそういう考えはジュニオールの柔術コーチ、ユーリ・カールトンの頭をよぎりさえしなかったし、その点に関しては残りの彼のトレーナーの誰もがそうだった。
何故だろうか?
なぜなら早い段階でその試合からほとんど脱落していたにも関わらず-それはテキサスはヒューストンのトヨタ・センターで起こった-チーム・ドス・サントスは運を天に任せたパンチかサブミッションが、瞬きの間にその試合を終わらせるだろうと終始一縷の望みを抱き続けたのだ;「シガーノ」がやることのできる何かしらによって。
カールトンは試合を止めないという彼のチームの決定についてMMA Fightingに説明した:
「正直に言えば、私はタオルを投げることは決して考えなかった。もしそういうようなことがいつか起こるとすれば、ルイズ・カーロス・ドレア(ボクシング・コーチ)が決定する者となるだろう。私はずっとノックアウトを望んでいたんだ。第5ラウンドに、『シガーノ』はチョークに行った。なんだって起こり得るんだ。我々は試合で終始劣勢で、その後最終ラウンドで勝つ奴を見た。それはいつだって起こる。我々は血やそういうものすべてによって強い印象を受けることはない、『シガーノ』だって同じだ。彼はいつも勝つために戦う、たとえ何があってもな。彼はジムでいつもサブミッションに挑戦しているし、彼はここでそいつを使っていつもスパーリング・パートナーを極めているんだ。彼は無意識で立ち向かったのさ。ケイン・ヴェラスケスは防御のために回転して、シガーノは地面に顔面から落ちていき、そしてもう戦うことはできなかった。しかし彼が頭を地面に打ち付けなかった場合でさえ、彼はどのみち勝てはしなかっただろう、それは試合を変えなかっただろう。彼は常にぐったりとしていた。我々は彼がいいパンチを当てることができるのを望んでいた、たとえ彼が完全に疲れていたとしてもな、だがそれは起こらなかった。」
実際に、ドス・サントスは最終ラウンドの最後1分でケインにギロチンを仕掛けたのだ;しかし、ヴェラスケスはサブミッションの仕掛けからすり抜けた、それは結果的にジュニオールをキャンバスに頭から叩き付けて、実質的に彼をノックアウトしていた。
ユーリによれば、「JDS」が2ラウンドの後に「オートパイロット」になったという事実はあるファイター達にとっては極めて普通のできことだと言う。さらにその柔術コーチは暴露した、彼の生徒は最初に報じられたように、彼は第2ラウンドで負けたのだと思っていたことを彼には決して伝えなかったのだと。
試合のほとんどの記憶がないことも、また普通の事なのだろうか?
それでも、ケインは265ポンドのストラップを保持するためにあのブラジルの爆弾に23分間のノンストップの暴虐を加え続けた後も、勝つために続行した。
覚えておいてもらうために記すが、彼の「The MMA Hour」でのインタビューの間、ハビエル・メンデス-ケインのトレーナー-は言った、もし自分が同じ立場に立たされて、同様に自分の選手に試合に勝つためのあらゆるチャンスを与えたいと思ったら、タオルを投げることに自分は『引き裂かれて』しまうだろうと。
実際、自分の選手に対して信頼を抱く事と彼を不必要な損傷から保護することは、ほんの紙一重の差なのだ。
-----------------
ジュニオール・ドス・サントス:「私のゴールは以前も、そして今でさえ、再びNo.1になることだ。」
MMA junkieより
ジュニオール・ドス・サントスのゴールは変わっていない。
元UFCヘビー級王者「シガーノ」は、1年足らずの間にケイン・ヴェラスケスに対して二度の壊滅的な敗北に見舞われた、しかしそのことが彼にタイトルへの熱望を諦めさせることはないだろう。
ヘビー級王者とここ3回戦って2敗しているという事実にも関わらず、ドス・サントスは信じている、彼が勝ち越した時にもう一度挑戦する機会を得られるだろうと。
「その階級が将来どうなるかなんてまだわからないさ。」とドス・サントスはMMAfighting.comに語った。「私のゴールは以前も、そして今でさえ、再びNo.1になることだ。私はできるだけ早くそうなるようにベストを尽くすつもりだ。」
「私はリラックスして養生するためにオフの時間を取っている。私は私であることを愛しているし私は自分がやることをやる、そして本当にすぐにでも自分の働きぶりを披露するために戻ってくるだろうと確信しているし、私はUFCが望むなら誰とでも戦うだろう。」
テキサスはヒューストンで10月19日に開催されたUFC166で、「シガーノ」はヴェラスケスと3度目の出会いを果たした、そしてその試合は、基本的には2012年12月の二度目の試合と同じような展開で最後まで進んだ。
「私はまたしてもいくつかのミスをしていた。私の戦略は大喧嘩をすることだった、なぜなら私はそれに関しては有利だろうと信じていたからだ。」と彼は言った。「しかし私の敵は私のスタンドアップ・ゲームの阻み方を知っていた、そして彼はベストを尽くしたんだ。あらゆる試合の後に私はより経験を積み学んでいる。この試合で私が学んだ一番大事なことは戦略に関することであり、そして私は信じている、彼は私よりもずっとよく準備をしてきたのだと。」
UFC社長のデイナ・ホワイトは言った、あの試合は第3ラウンドで止められるべきだったと。ユーリ・カールトン、ドス・サントスの柔術コーチの彼はMMAFightingに話した、彼らがその選択肢を考慮することは決してなかったと。
「シガーノ」はそのことについては彼に感謝している。
「私はあの試合がもっと早くに止められるべきだったとは思わない、なぜならケインと私は二人とも勝利を目指していたし、それと同時に試合が止められるのを避けるために自分たちを守っていたからだ。」と彼は言った。「それに君はそれがわかるだろ、だってあの試合は私がサブミッションに行ってマットに頭を打った時に終わったんだからさ。私は目を回して自分を守ることが出来なかったんだ、それから(レフェリーが)試合を止めたんだ。」
「私のコーナーにいる人は全員私のことを知っているし、私があらゆるシチュエーションでどう反応するかを知っているんだ、そして彼らはそのことについて決して考えなかったと私は確信している。私はずっと勝利を信じていた。彼らもまた信じていた。私はタオルを投げることに反対はしない、だが私は自分の限界を知ってもいるし、私は自分が統御できない状況に自分自身を晒すことは決してないだろう。もし彼らがタオルを投げることで私からあれを取り上げたとしたら、私は本当に悲しんでいただろうね、でも私は信じているよ、私のチームでそれが起こることは決してなかっただろうってね。」
-----------------
キース・カイザーは、ネバダ州においてタオルを投げることがファールであり続ける理由について語る
bloody elbowより
ネバダ州アスレティック・コミッションの執行取締役であるキース・カイザーはなぜタオルを投げることが反則なのか、そしてコーナーが試合を止める適切な手段について語った。
UFCヘビー級王者ケイン・ヴェラスケスが元王者ジュニオール・ドス・サントスとUFC166で試合をした直後に明るみに出たより奇妙な事の一つが、いくつかの管轄の中で試合を止めるためにタオルを投げ込むのは違反であるということだ。
あれらの管轄の一つはネバダ州だ。Bloody Elbowは最近ネバダ州アスレティック・コミッションのアスレティック・ディレクターであるキース・カイザーと、ファイターのコーナーが試合を早く終わらせる事について話した。
ネバダにおいてタオルを投げ込むことが反則のままである理由はなぜかと尋ねられた時、カイザーは説明した、「それは今もって、私たちが違反としておきたいものなのです、なぜなら誰かがそういうような手段を実行した状況は選手たちを動揺させ、選手が傷ついてしまいかねないからです(コーナーがタオルを投げ込むことによって)。一人の選手がタオルが飛んでくるのを見て、そして彼はそれを注視し、そして彼は顔面に打撃を貰うのです。」
カイザーはタオルを投げ込むことが許されないもう一つの理由を付け加えた、それはケージの中での混乱を避けるためだというのだ、もし群衆の中にいる「バカなファン」が、どんな理由であれがケージの中にタオルを放り込もうと決意したら、そういう混乱が起こるに違いないからだ。もしファンからのタオルがケージの中に到達してしまったら、それはとてつもない混乱を引き起こすだろうし、オフィシャルが解決を試みる間は展開が中断される結果となるだろう。
タオルがマットを打った後に続く展開の中断は、休憩が発生することによって試合に、そしてタオルがケージに到達した時の選手の肉体的な状態に影響するに違いない。タオルの投げ込みを除外することによってNSACが回避するのを望んでいるのはそのことなのだ。
だから、コーナーマンがすることは何だろうか、試合を終わらせるのが選手にとって最善だと感じるほどに彼の選手が殴られているのを見たとしたら?カイザーによれば、試合を止める際の正式な手続きがあるのだという、「それは頻繁には起こりません、しかしコーナーマンが強くそれを止めたいと思った時には、我々は監査役に知らせることをコーナーマンに知らせます。そのコーナーマンと監査役は昇降台に上がっていき、他の監査役がそれを見るでしょう、すると彼は反対側の昇降台の一番上に登っていきます、レフェリーの背中が負ける選手のコーナーの方に向いている場合に備えてです。その監査役はそれから手を振り、そしてレフェリーはその理由を知るのです。」
その手順は試合前に監査役によってコーナーの人たちと共に再確認されるし、それは選手と彼もしくは彼女のチームもケージに伴うのだ。
カイザーは強く言った、もしコーナーマンが監査役と共に昇降台に上がった時にタオルを投げ込みたいと思ったとして、彼が遠慮なくタオルを持っていったとしても、彼らは絶対にケージの中にタオルを投げ込むべきではないのだと。
もしコーナーマンがその瞬間に動転してタオルをケージの中に投げたとしたら、彼らはそれをやったためにNSACから説教を受けるだけだと思われる。しかしカイザーは言った、話す以上のことがあるかもしれないと、「もし彼がそういう積極的な手段を実行したとして、それがある種の怪我を引き起こしたとしたら、私はかつて見たことがありません、しかしそれはあり得るのです。私は他所の管轄から、コーナーマンがタオルを投げ入れて、選手の一人がそれを踏みつけて怪我をしたり、もしくはまた選手がそれによって迷ったために頭部に打撃を貰ったりしたという話を聞きました、それはより深刻な問題かもしれません。」
これらすべてにおけるコーナーのゴールは、選手がまた別の日に戦うことが出来るように可能な限り選手の安全と健康を確保することであり、それはカイザーが失念していないことだ、「私たちはコーナーマンが試合を止めたいと思うのがよくわかる一方で、私たちは彼らが安全な方法でそれをやるのを望んでいます、そしてタオルのことがルールにあるのはそういう理由からです。」
-----------------
というわけで今回は「試合はいつ、誰が、どのように止めるべきか」を理解するために関連する4つの記事を一つにまとめてみました。一つの問題を各々の立場から眺めることで、より理解が深まるのではないかと思います。
10月19日にUFC166で行われたヴェラスケスとサントスの試合は素晴らしい激闘でした。しかし一方で、3Rのダウン以降まともにガードが機能しなくなったサントスは相当数の被弾を許し、5Rにマットに頭から落ちてTKOを奪われるまでに受けたダメージは深刻なものでした。そのために、試合終了直後から「この試合はもっと早く止めるべきだったのではないか」という意見が各所から持ち上がり議論を呼んでいました。
UFC社長デイナ・ホワイトは、あれは3Rのダウンで止めるべきだったと言います。MMAを代表する知識人のチェール・ソネンもまた、あれは3Rで止めてしかるべきだったとしています。しかしドス・サントスのコーチ陣は止めることなど考えもしなかったと言いますし、当のサントス本人も止めないでくれたことに感謝している、と言います。
私自身は、3Rに止めるべきだったという考えです。そしてこの問題はどちらが正しいかという問題ではなく、何を最優先にすべきかという問題だと考えています。
まず第3Rに試合を止めるべきとしたデイナ・ホワイトの意見です。彼は長年コンバット・スポーツに関わってきた中であるタイプの選手がいるといいます。それは必要以上にタフすぎる、頑丈すぎてしまう選手というものです。試合を挽回できる可能性が限りなく低い場合でも、KOしないために立ち続けて被弾し続けてしまうのです。そしてサントスもその一人だと言います。彼はケージの近くで観戦していましたが、ずっと試合を終了させろと叫んでいたようです。しかし彼には試合の中止を決定するいかなる権限も与えられていません。彼の叫びは無視され、そしてシガーノは大地に蹲って動かなくなるまで戦い続けることになりました。
MMA学博士のチェール・ソネンは明らかに怒っています。そして彼の怒りは、試合を止める権限を持っていたにも関わらず試合を続行させたサントスのセコンドに向けられました。究極的には、この問題の責任はコーナーマンにあるのだとソネンは言います。選手が信頼し、そしてある意味では父のような存在であるはずのコーチが、わが子たる選手をむざむざ負傷させるために死地に送り返したのだ、と彼は言います。ドクター・チェックなるものがまったく機能していないこと、そしてレフェリーが判断をギリギリまで迷って続行させたことも当然ながら、選手の安全を第一に考えるべきセコンドが選手を見殺しにしたことは、一選手であるチェール・ソネンにとっては許せない事なのかもしれません。最終的にはセコンドが選手の敗北を選手よりも先に受け入れて守ってやらなければ、ケージで選手はいよいよ誰にも救いを求めることができなくなるからでしょう。こんなコーナーマンはすぐに解雇しろ、コミッションは罰金を科せと極めて厳しい口調で断罪しています。彼らのしたことは過ちでしたじゃすまないことだ、と彼は憤りを隠しません。吐き捨てるような口調には、若きブラジルの戦士への思いやりが窺えます。
対してシガーノ陣営の柔術コーチであり、コーナーマンの一人であるユーリ・カールトンは、タオルを投げ込むことなど考えもしなかったと言います。彼らは全員シガーノの実力を信じており、そしてどんな劣勢でもシガーノならなんとかしてくれる、そう信じていました。それは彼のセコンド全員が同じ気持ちだったそうです。確かにシガーノはグダグダに疲れていた、それでもいいパンチさえ当たれば、彼らはその望みにすがり続けました。そして彼は言います、実際にそういう状況での大逆転は過去にもあったし、事実シガーノは5Rにニンジャ・チョークで極めかけたではないか、試合では何が起こるのかわからないのだと。ただ一方で、もしチョークを外す際の動きでシガーノが頭を打ち付けなかったとしても、彼は試合を変えることは出来なかっただろう、とも思っていたようです。シガーノは第2ラウンドからの記憶を失っており、そこから先は「オートパイロット」状態で無意識のままに体が反応している状態だったそうです。カールトンはそれは良くあることだと言いました。彼らはたとえシガーノがどのような状況になっても決して動揺しないのだと胸を張ります。
そしてケージで戦い、自分を危険に晒していた当の本人であるジュニオール・ドス・サントスは、そのセコンドに感謝をしているそうです。なぜなら自分が完全に防御できなくなったのは、5Rに頭を打ち付けた時だからだ、それは皆も見ただろうと。彼は自分の限界を知っているし、自分を無防備な状態に晒すような真似はしないだろうと言います。2R以降の記憶がないにも関わらず、です。そして彼のチームは全員彼のことを熟知しており、だからこそ絶対に試合を止めないだろうと信じているとのことです。彼のチームへの強い信頼を感じます。
最後にシガーノをここまで追い込んだ王者ケイン・ヴェラスケスのヘッド・コーチであるハビエル・メンデスは、シガーノ陣営のインタビューを見て言いました。もし自分が彼らの立場だったら、自分は選手に可能な限りのチャンスを与えてあげたいという気持ちと、タオルを投げ込みたいという気持ちの間で「引き裂かれてしまう」だろう、と。
それではまずいつ、誰が試合を止めることができるのか、ということから確認していきたいと思います。通常試合が終わるのは以下のような時です。
・KO(完全な失神)
・TKO(レフェリーが続行不能と判断した場合)
・ドクターストップ(続行不可能な怪我とドクターが判断した場合)
・ギブアップ・タップアウト(サブミッション等により、選手が敗北を認めた場合)
・ノーコンテスト(反則等により試合続行が不可能な場合)
・セコンドによるストップ(セコンドが選手の敗北を認めた場合)
試合を終える権限を持つのは選手、レフェリー、コミッション(ドクター)、セコンドの4者となります。当然ながら、大会主催者は試合に関与することは出来ません。ケージ際で選手が危険だからとどれだけ興業会社の社長が叫んでも、一切試合に影響がないのはUFCの健全さの証明でもあります。
まずレフェリーです。レフェリーは試合を最も多く止める機会のある立場でしょう。試合を一番間近で見るために、誰よりもその危険性に気づくことが可能だからです。逆に言えば、もしレフェリーがその危険性を見落として試合を止めそこなえば、それは選手の命がケージの中で失われる可能性があるということでもあります。なので彼らは試合を注視し、これ以上危険だと見たらたとえどれだけ選手が不満を持とうと、そして観客が批判しようと試合を止める義務があります。
次に選手自身です。選手はギブアップの意思表明を行うことで、試合を終えることが出来ます。サブミッションだけでなく、打撃でも選手がタップすることがあります。特にボディへの強烈な一撃を受けた場合などは、選手が自分から敗北を認めたりします。ボディを打たれると意識はあるままに体の自由を失いますから、その恐怖は相当なものです。ボクシングと違ってボディで蹲った後には追撃がありますから、選手としてはギブアップを選択するのはやむを得ないところですし、懸命な判断でもあるでしょう。その状態で無理をすれば選手生命にかかわる怪我をしかねないからです。ただ選手はどうしても勝ちたいですから、心が強いほどにどんなに危険な状況でもタップをしなくなります。ここには絶対に判断の誤りが発生します。なので選手のタップを必要以上に当てにするのは、彼らを見殺しにすることになりかねないでしょう。
次にドクターとコミッションです。ドクターは必要に応じて選手をチェックし、怪我が深刻でこれ以上の続行は危険だと判断した場合に試合を止めることが出来ます。インターバル中に明らかに選手に脳震盪の兆候が出ていたり、大量の出血や腫れで視界が奪われていたり、他にも様々な理由からドクターは試合を止めることが可能です。彼らもまた、人気や批判を一切考慮せずに選手の安全を確保する義務があるでしょう。また金的等の反則の際にはノーコンテストの決定も下します。
そして最後がセコンドです。彼らには試合を止める権限があります。選手自身はまだ大丈夫と言っていても傍から見て明らかに危険な場合等、選手が正常に判断できていないと感じた場合に彼らは選手の代わりに試合を終わらせることが出来ます。
そして今回問題となっているのが、このセコンドが試合を止める権利を行使しなかったことについてです。それではこの試合でそれぞれの権利者がどのような状態だったかを見ていきます。
今回の試合では、まず頻繁にドクターチェックが行われました。シガーノは耳の下と右瞼の裂傷、そして左目の腫れがあり、特に目の怪我は出血も夥しく彼の視界はほぼ奪われかけていました。そのためにレフェリーは二回に渡り医師にシガーノの目を確認させ、試合ができるかどうかを確かめさせました。またインターバル中やラウンド開始前にもシガーノはチェックを受けました。しかし、結果的に医師は続行可能という判断を下しています。チェール・ソネンは医者が「さっぱり判断つきません」という風に見えたがなとチクリと揶揄しています。自分はそのあたりについてはわかりませんが、もし両目が見えておらず、かつシガーノが意識をほぼ失っていたのならばやはり医者はなんらかの兆候をくみ取って試合を止めるべきだったろうと思います。
この試合のレフェリーはハーブ・ディーンです。彼は自身もMMAをやっており、またレフェリーの経験期間も相当に長いベテランです。なのでMMAに対する理解度はかなり深い方でしょう。第3ラウンド、ダウンを奪われた後にチョークに捕まりかけたシガーノが、命からがら逃げだした後に足に力が入らずマットに横倒しに倒れ込んだ時、ディーンは大慌てで駆けだして、もうケインの背後にぴったりとついてその手を王者に触れかけていたのです。しかしすぐにバランスを取り戻したシガーノを見て、彼は迷いながらもその手を除けて後ろに下がりました。そして二人の側にぴったりと張り付いて、もしあと少し何かあれば試合を可能な限り早く止められるようにと彼は準備をしていました。
このレフェリーは脳震盪の兆候をよく知っています。選手の倒れ方でそれを判断しているようで、決して無能な人ではありません。しかしシガーノの肉体が常識を遥かに超えたレベルで頑丈だったこと、そして大一番に可能な限り悔いを残させたくないという彼の気持ちがギリギリのところで止めないという判断をさせたのだと思います。本当はあの倒れ方を見て止めようとしたディーンの本能は正しかったのでしょう。しかしこれを責めるのは少し酷な気もします。次は興業やら二人の無念やらは一切考えず、危ないと思ったら迷わず止めてほしいと願うばかりです。レフェリーはつい選手やファンの批判を気にして止める際に迷うことがあるでしょうが、レフェリーはそういうものを超越してひたすらに選手の安全性だけを考えて判断してほしいところです。
選手については、今回のサントスはタップしても誰も批判できないほどに徹底的な攻撃を受けました。しかし彼の意識は2Rにはもはや大気圏外に飛び立っていたこと、そして彼の心の強さを考えればこの選択肢はまずなかったでしょう。時折攻撃を加えている側の選手が、相手の無防備さを心配してレフェリーにストップを促すことがあります。しかし対戦相手がブラウンプライドでは、そんなことはまずありません。彼はどんなにシガーノが弱ろうとその拳を緩めませんでしたし、それは称賛されるべきことだと思います。もっともオートパイロットのシガーノが異常に強くまだ一発の脅威が残っていたので、そんな余裕はなかったのでしょう。
以上の事から医者が止めず、レフェリーも止める最大の機会を失い、そして選手はオートパイロット状態で勝利を求めて無意識に戦い続ける中、もはや止めることができたのはセコンドだけだったことになります。だからこそ、今回はセコンドに批判の矛先が向いたのです。本当を言えばレフェリーが止めたほうがよかったでしょう。ドクターも止めてよかったはずです。ただそうならなかったときに備えて、やはりセコンドも止める覚悟を持っている必要があると私も思います。しかしこれは非常に難しい問題でもあります。セコンドは選手を勝たせるためにそこにいるのです。その彼らが選手を差し置いて負けを認めるというのは、そうそう決断できるものではありません。
追記 この試合、やはりドクターがきちんと止めておくべきだったでしょう。5R開始前にかなり迷ってましたが、あそこで止めても誰からも文句は出なかったはずです。次にレフェリーで、やはりこれも3Rに飛び出していったところで止めるべきだったと思います。その上で、ソネン同様「究極的には」最後にセコンドの責任にもなるのだということで以下をお読みください。
ソネンはセコンドがそれを決定するタイミングとして、選手が続行可能かどうかではなく、選手の勝利が可能かどうかで判断しろ、といいます。つまり選手がどれだけ手負いでも、逆転の可能性があるのならば続行させるべきだ、というのがソネンの考えです。
しかしその考えでいけば、この試合を止めなくて正解だったという意見も出るでしょう。無意識でありながらサントスは強烈な肘でヴェラスケスをダウンさせかけましたし、その後も肘で流血させ、さらには5Rでニンジャ・チョークを仕掛けたからです。彼の攻撃にはまだ力が残っていました。
ただ、それはあくまでも無意識です。記憶がないことからも、体のバランスが失われていないだけでサントスの脳は確実に揺れていたことになります。事実彼は3R以降にノーガードで殴られるシーンが何度もありました。セコンドも彼が終始ぐったりしており、あくまでも頭をマットに打ったのは結果的にそこで完全に無防備になっただけで、その前段階からすでに相当に弱っているのは把握していたわけです。頭を打たなくても試合には変化がなかったことは指摘しています。つまり勝つ可能性がほぼないことはわかっていたのです。
また一般的に言われるのが、選手が防御の姿勢を完全に取れなくなった時が止めるタイミングというものです。しかしこれは一番最初の記事にあるように、この試合によって判断基準が変わるかもしれません。なぜなら、サントスの惨状は彼が完全に防御反応をできなくなるまで待った結果だからです。サントスはノーガードで殴られましたが、ところどころでは相手の攻撃に反応できていたために試合を続行させられました。彼はヴェラスケスとの2戦目でも全く同様でした。それはほとんどスタンディング・ダウンの状態にもかかわらず、まだ防御の姿勢が取れているからと見逃されてしまったのです。
私としては、やはり選手が重度の脳震盪を起こした可能性があると判断した時点で試合を止めていいと思います。なぜなら、それが一番選手の安全を確保できるからです。そして脳震盪を起こした状態で逆転できる可能性はまずないでしょうし、あったとしてもそれは結果的に運が良かっただけのことで、そこに至るまでのダメージは意識がはっきりしている状態とは雲泥の差だからです。
ばったりと倒れなければ意識があるわけではありません。立っていながらもほとんど失神しているような状態はあります。そしてその状態での被弾は極めて危険で、脳に甚大な被害を及ぼす可能性があるのです。近年ボクシングでは、立った状態でも相手の攻撃に対して体を丸めて顔を下げるだけのままでいるとすぐに試合が止められるようになりました。完全に倒れずとも危険な状態であることが周知されてきたからでしょう。少し早すぎるという意見もあるようですが、私はこれでいいと思います。やはり危険な状態の目安として、相手の攻撃に対しての反応を見るのがいいと思います。反応せずに何度も被弾したり、どこかぼんやりとしてることが増えたならばもう止める準備をした方がいいでしょう。
またセコンドならばコーナーで選手と話します。その際の発言などからも脳震盪を起こしているかどうかがわかります。選手が今の状況を理解できなくなっていたり、周りの人間のことがわからなかったり、また会話が明らかに成立しない場合には脳震盪の可能性があります。脳震盪はすぐにダメージが抜ける性質のものではないので、そういうことがあったら止めると言うのも手でしょう。
今回のサントス陣営の最大の問題点は、勝利のほうが選手の安全よりも優先順位が高かったことです。
先にも述べましたが、もし選手が瀕死の状態であってもレフェリーが止めない可能性、そしてドクターが止めない可能性だってあるわけです。そうなった時に、選手が最後に頼れるのはセコンドしかいません。そのセコンドが瀕死であることを見抜けずに続行させたならば、ケージが選手の死に場所となります。彼は金網に閉じられた空間の中で、孤立無援で死ぬまで戦うことになるのです。
シガーノのコーナーマンたちは、シガーノがボロボロになっていたことはわかっていたうえで、シガーノの能力と気持ちを「信じていた」のだといいます。だから試合を止めなかったのだと。脳震盪を起こすと言うのはもう物理的、肉体的な問題であって、精神の作用でどうこうなるものではありません。信じているといえば聞こえはいいですが、きつい言い方をしてしまえば、彼のコーナーマンたちはわずかな勝利の可能性に縋ってシガーノを見殺しにしたと言えるかもしれません。そしてそれはいいパンチが当たるかサブミッションが極まるかという、到底戦略とは呼べないものでした。そこには信じることが出来る勝利の可能性などほぼなかったはずです。もしそれを信じていたのなら、それは完全に過信というべきものでしょう。
サントス本人が止めないでくれなどというのは当たり前のことです。彼はMMAを愛しているし、このスポーツが彼のすべてであり、そして彼はすでにこのために命を捨てる覚悟はできているからです。だからこそ、彼の周囲の人間が彼を止めなければならない時があるのだと私は思います。そうでなければ彼はあっさりと己の命を生贄に捧げてしまうからです。
サントス陣営がシガーノを信じていた気持ちは疑いませんし、彼を心配していたとも思います。そして可能であればギリギリのところまで戦わせてあげたい、可能性を奪いたくないと思っていたのも事実でしょう。それは真実美しいことです。ただ、試合が終わった後にあそこまで傷ついた教え子を見て、それでも信じていたのだからしょうがない、というのは不味いと思います。この一番の問題は、彼らは善意でこの決定をしていることです。動機が善であれば結果が善となるとは、必ずしも限らないのです。むしろ動機が善であるものほど、結果が悪となる場合に修正が難しくなります。
コーナーマン、セコンド、そしてドクター、選手以外に試合を止める権利を持つ者たちが最も優先すべきことは、「可能な限り少ないダメージで試合の決着をつける」ことです。つまりは選手の安全性ということです。誰が判断しても構いません。ただ全員がそう考えなければ、いつか必ず事故が起きると思います。もしセコンドが試合を止めたら問題も起きるでしょう。セコンドは下手をしたら選手に恨まれて解雇されるでしょう。ファンからは試合に水を差したと罵られるかもしれません。興行に大打撃を与えるかもしれません。ただそれを恐れて選手の命を蔑ろにすれば、それ以上のダメージを負うことになるでしょう。選手がたとえ一敗しても、重度の怪我がなければまた戦う機会も訪れます。若い選手ならなおさらです。しかしたかが1勝のために無茶をさせてもし大事故が起きたら、彼はMMAどころか人生すらも手放さなければならなくなるかもしれないのです。天秤に載せるまでもないことでしょう。
「コンバット・スポーツで何を寝言を言ってるんだ、こいつらは死ぬのを覚悟でやっているんだろう」という考えの人間も一定数いると思います。しかし選手がそれを覚悟していることと、選手が覚悟しているからと周りが選手の安全性を無視することは全くの別問題です。周囲が選手以上に彼らの命を大事にしてやらなければ、これは本当にただの殺し合いを楽しむだけの野蛮で下劣な見世物に堕し、そうなればMMAはあっという間に消滅してしまうでしょう。
さて、それではセコンドがもう試合を止めなければと思った時にはどうすればいいのでしょうか?デイナ社長も選手もセコンドも、皆がセコンドが試合を止める行為を「タオルを投げる」と言っています。しかし実はネバダ州では、タオルを投げることは禁止されているのです。
最近ケージの試合でタオルが投げ込まれたのを見たのは、ジョシュ・トムソンvsネイト・ディアズ戦でディアズ陣営が投げたのと、青木真也vsエディ・アルバレス戦で青木陣営が投げたのくらいです。ほかにタオル投げを見た記憶がありません。
恐らくデイナ社長などは慣用句的に使っており、タオルを投げることが禁止なのは把握しているのでしょう。しかしこれほどに一般的に知られる行為でありながら、なぜ禁止なのでしょうか?これは自分も前から疑問に思っていたことでした。
その理由は、選手の安全性確保といたずら防止のためとのことです。これは正直言われるまで想像もしていませんでした。特に後者のほうは言われてみて納得という感じです。
カイザーが言うには、タオルを投げることで選手が不必要な怪我をする可能性があると言います。片方の選手がタオルに気を取られた瞬間に、攻撃を食らってしまうかもしれないからです。これはありそうな話です。カイザーは自分は見たことはないが、と注釈を加えたうえで、タオル投げが認められている他の州では実際にそういう事故があったと聞いたそうです。確かに言われてみれば、タオル投げのあった試合では2戦とも、選手もレフェリーもほとんど誰も気づいていませんでした。円形に近いケージでは、よほどのコントロールで選手達とレフェリーのど真ん中に落とさなければ一発で試合を止めるのは不可能です。しかも彼らは所狭しと動きます。落ちる場所によっては片方の選手しか見えないケースがあるでしょう。確かにそれで気を取られて攻撃をやめた瞬間に被弾をしたら最悪です。もう一つの事故はタオルを踏んづけて怪我をしたそうですが、そんなドリフみたいなことがあるんでしょうか。飛距離を稼いで狙いをつけようとおしぼりみたいにねじって投げたら、踏んだ時に捻挫とかはしそうですね。
そしてもう一つの理由が、「バカな客」がいたずらでタオルを投げる可能性があるからです。これは納得ですね。もし群衆の誰かがケージにタオルを投げてうまいこと入ってしまえば、試合は確実に台無しです。試合を中断して長時間の休憩をすれば、選手のコンディションが変化して試合の流れが変わるのは疑いようがないところです。
そういう理由から、NSACではあえてタオル投げの禁止を残しているそうです。そしてその目的はただ一つ、選手から少しでも危険性を取り除くことです。
なのでもしセコンドが試合を止めるならば、きちんと正式な手続きがあるそうです。まずセコンドがコミッションの監査に止めたい旨を伝えると、彼らは二人で選手入場口にある登り台に登ってケージ脇に立ちます。試合前にセコンドの人が立って垂れ幕なんかを下げているところでしょう。するとそれを見た他の監査は相手陣営の所にある登り台に立ち、レフェリーがどちらを向いていても見えるように陣取ります。そしてその後で両者が手を振ることで、試合中止の意図をレフェリーに伝えるというものです。
この手順はちゃんと試合前に選手やセコンド皆の前で、監査役によって確認されるそうです。管轄する州が違うとこの手順は変わるのでしょうか?ネバダ州の管轄ではこれ以外の方法で止めることはできません。もっとも、仮にタオルを投げたとしてもそれはどのみち違反行為ですので投げた陣営が敗北になりますから、結果的には同じことです。ただ安全面を考えた時、カイザー曰くやめてくれとのことです。何もなければコミッションからの説教だけで済みますが、事故があった場合にはその限りではなくなってしまうかもしれないようです。
このやり方は安全ですが、問題点もありそうです。まずストップが遅れるということです。ケースによっては、このやり方のせいで止めるのが遅れたためにダメージが増すこともあるかもしれません。またタオルを投げるような衝動的な止め方に比べて、考える時間がある分セコンドはタオルよりも決断しにくいのではないかと思います。このやり方のせいでセコンドが試合を止めにくくなるのでは本末転倒なところがあります。もし言いに行って登りかけてる途中で形勢が変わったら、「やっぱりナシで」とか言っていいんでしょうか?そのあたりも気になるところです。ケージの外で監査とコーナーマンが昇降台を登ったり下りたりしていたら、タオル以上に気になってしまいそうです。
私は名勝負よりも選手の安全性確保を優先するべきだと考えます。たとえファンとして消化不良な試合になったとしても、私が文句を言うことはないでしょう。それは仕方のないことだからです。ファンが声高に早く止めるレフェリーを非難しすぎることで、彼らの止めるタイミングを誤らせることもあるのではないでしょうか。人間のすることですし、ましてや脳のダメージは外からではわかりにくいものです。矛盾しているようですが、私は可能な限りギリギリまで選手には可能性を残してあげてほしいと思うと同時に、可能な限り彼らの安全性を確保してほしいと思っています。どちらも選手への愛情から生まれるものです。
ではどちらを優先すべきかという時に、やはり私は選手の安全性を選びます。敗北は取り戻せますが、身体の損傷は取り戻せないことがあるからです。そして選手の命が失われれば、それは永久に取り戻すことはできないのです。
Tweet
余談ですが、私はボブ・サップの最近の稼ぎ方は結構感心しています。自分の安全を確保して勝利を目指すならば、あれはある意味で究極の形です。やり逃げというやつですね。出て行って一発当たればよし、そうじゃなければ即タップというのはまさにルールの穴を突いた盲点でした。戦績的にはもう滅茶苦茶になりますので他の競技だったら勝ち上がれずにお払い箱でしょうが、ワンマッチが多く見世物的な色合いが強いイベントがある、そしていまだにプロの資格というべきものがないMMAではそれなりに合理的です。格闘家としてはダメなのですが、ただああいう人がいると気づかなかったルールの穴やシステムの問題がわかりますので、結構価値はあるんだと思っています。頭は間違いなくいいでしょう。
これは凄く難しい話だと思います。
返信削除私もこの試合はストップされるべきだったとは思いますが、その責任を最終的にセコンドに背負わせていいのかは疑問に残ります。
勝つ可能性が少しでも残っていればこれまでの選手の頑張りを一番よく知っているセコンドが続けさせるのは当然の選択、安全第一は建前であってセコンドは選手の勝利を考える、だからと言って家族同然のセコンドが見殺しにしたなんてことは絶対に無いですよ、その表現は気に入らないしセコンドの気持ちを理解できていない。なので選手と利害関係がないレフェリーかドクターが判断するべきだと思います。ファンが一番納得するのは医学的見地から選手の状態を判断できるドクターがストップすることじゃないでしょうか。心情的に一番試合をストップし辛い立場にあるセコンドを批判するのはナンセンスだと思います。
ソネンはもっともな事を言ってますが、自分がジョン・ジョーンズに負けたときレフェリーストップが早かったと言ってたので、当事者になってたら逆の事を言ってた可能性が高いような気がします。
この手の話は正論を言っておけば聖者になるのは簡単なんですよ。早くストップすれば安全は守れますよ。でもそれじゃあファンは面白くないから見なくなる、だから難しい話なのです。
それとボクシングはここ1ヶ月でメキシコとニューヨークで2人選手が死んでいるので一概に試合が早く止められている言えないと思います。
あえてきつい口調で書いたので気分を害されたのであれば申し訳ありません。ただ、結果的にそうなることもあるだろう、ということでご理解ください。私はサントス陣営の愛情を疑うつもりは毛頭ありません、ただ、選手を信じすぎることが結果的に選手陣営双方にマイナスになることはあると思います。私はそういう心情は理解しています。セコンドは共に練習しているからこそ一番止めるのが難しいこともきちんと前置きはしたうえで、あえてこういう表現をしました。
削除記事中にも私のコメントにもある通り、続けさせるのも止めるのもその根にある感情は同じです。ただ、その愛情のゆえに選手に明らかに無理をさせてしまうのであれば、それは本末転倒です。セコンドに責を問うのは酷とは思います。そしてやはり最善はレフェリーかドクターが止めるべきであることはその通りです。しかし最後の砦として、セコンドもその責を負う必要があるのは否めないのではないでしょうか。
聖者になるどころか、むしろセコンドと選手の信頼関係は一番非難しにくいからこそあえて非難するというヒールな役割がこの記事の趣旨です。家族同然だからということでそこの信頼関係を聖域にしてしまうことこそ、私は問題だと思っています。そういう美化の仕方には必ず盲目的になる危険性があるからです。
ソネンについてはそうかもしれません。ただソネンの発言には自分が戦っている場合と他人の戦いを見る場合の主観と客観の相違があるのではないでしょうか。この相違こそ、セコンドが止める責を負う必要がある理由でもあります。選手は多分思っている以上に自分の試合時の状態を把握できていないのだと思います。
ボクシングの方は私は知りませんでしたので情報ありがとうございます。最近の止め方を見る限りではだいぶ早くなったように思いましたが、全部が全部というわけではないんですね。
自分はあの試合の責任はドクター>レフリー>セコンドだと思います
返信削除やってる(やってた)側としては一発のある階級/選手なら最後まで…という期待をもってしまうのは仕方ないかと
身内なら「何で止めたんだ」と今後の関係に支障をきたしかねないですし
でもテレビ画面から見ても3R以降は半分無意識で闘ってる状態なのにドクターがスルーしたのは不思議でなりません
多分受け答えも満足に出来ない状態だったのに何故続行させたのか…
もしかしたらJDSは英語喋れない/ドクターもポルトガル語喋れないだったんですかね
だとしたらそんなメディカルで興業を行うという事自体恐ろしいです
ただダナの言動はホッとします
他団体/選手へのヘイトスピーチは
日本人の目から見ると一番手がそういう品の無い事するとMMA自体の格が下がるので眉をひそめてしまいますが
私も順位的には同じです。ドクターはせめて5R開始前に止めてくれてもよさそうなものです。
削除以前Dr.ベンジャミンの脳震盪に関する解説の際、インターバルでのやりとりをレフェリーなりドクターは聞いておいた方がいいということを言っていました。ただ、確かにご指摘通り言語が違えばドクターやレフェリーでは受け答えがちゃんとできてるか判断できないですね。それはあるかもしれません。
デイナは昔から選手の安全性にはうるさいですね。選手が余計なダメージを負う試合では必ず文句を言うあたり、自分はかなり好意的に見ています、
ミゲール・コットxユーリ・フォアマン
返信削除http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=19KLF8zXsyM&t=3365
ボクシングですが今まで見た中でもアホ度が最高レベルの不可解レフェリングの動画です。
ユーリ・フォアマンが5ラウンドあたりに足を滑らせてサポーターもしている古傷のひざを痛めてしまい、足を引きずりながら戦うのですが、8ラウンドについにコーナーがタオルを投入で試合終了、と思いきや・・・・
続きはぜひ動画をご覧ください。
タオル投入はここでも無効なんですねw一瞬意味が分かりませんでした。タオル投入で棄権となるかどうかは州ごとに違うようですので、NYではたぶん無効なのでしょう。選手は試合をやめているのにレフェリーだけその意図を汲めてないってのもすごいですね。結局フォアマンは無駄に殴られただけですから気の毒です。
削除この場合も、ちゃんとコミッションに伝えて中止が正しい手順みたいですね。セコンドがインターバル挟んで普通に送り出しちゃうのもよくわかりません。そこで棄権すればいいと思うんですがw
私も試合の責任はドクター>レフリー>セコンドだと思います
返信削除5Rである限りこういう試合はいくらでも増えるでしょう
選手の安全がそんなに大事なら3Rにすべきでしょう
ただ興行なので無理でしょうね
私も責任的にはそういう感じです。誤解があるとよくないので追記しておきました。あくまでもレフェリー、ドクターのほうが責任は重大です。
削除5Rである限り、というよりもJDSである限り、というほうが適切かと思いますw他の選手ならばとっくに立てなくなってる気がします。ただ彼のように度を越えてタフな場合、セコンドの方で限界を超えないように考えてやらないと危ないと思います。
選手の安全はそんなに大事です。これを大事にしなければMMAはやはりすぐ廃れてしまうと思います。興業だからで無理をさせてしまうのはやはりスポーツとしては最悪です。日本ではとかく興業面が優先され、そうでなければ人気が落ちると言う考えがかなりありますが、自分はそれはちょっと違うかなと思っています。
もう一つ、セコンドが本当に選手の事を考えるならば、やはり一試合のみではなくトータルのキャリアで考えてあげたほうがいいのだと思います。無理をさせて勝ったものの引退する羽目になるよりは、あまり無理をさせずに手を引かせてキャリアが長く続くようにしてあげるほうがいいと私は思っています。特にJDSの夢は40代までMMAを続けることですので、なおさらそういう配慮が必要なのではないでしょうか。2試合連続でヘビー級の拳を200発近くもらってますので。
削除私はただ単に外傷だけ見ても、サンチェスといい、サントスといい、UFCって試合を止められないものなんだなぁ〜・・・と驚いてしまいましたが、皮膚の外傷に関してはあんな程度の扱いで良いものなんですね???
返信削除どっちがどうという話ではないのですが、これPRIDEだったらあっさりストップなんだろうなと思いながら見てました。
サンチェスはあとちょっとで瞼がめくれちゃいそうで肝が冷えました。せっかく試合後にテープ貼って隠してたのになぜかサンチェスが剥がしたせいで、傷口がばっちり見えてたのは勘弁してほしかったですw
削除肘があるので裂傷と出血はほんと頻繁ですね。最近は皆肘の有効性に気づいて多用するので、毎大会大流血です。確かに表面的な傷にはかなり緩い感じですね。表面的な傷はそこまで重大な障害を残したりはしないし、完全に治癒するからということなんでしょうか。逆に選手に障害が残りそうな脳へのダメージなどには厳しいイメージです。そのあたりもPRIDEとは逆な感じですね。
書き終わってから思いましたが、アメリカはよりスポーツとしての安全性重視で、PRIDEは地上波放送を考えて絵面的な残虐さ、特に流血を忌避したのかもしれませんね。このあたりも行政が関与してるかどうかが大きそうです。
削除「誰が止めるべきだったか」というなら、やっぱりディーン(レフェリー)だったでしょうね。
返信削除ドクターは試合を中断してしか判断できない。セコンドはどうしたって一方通行の視点でしか判断できないし、グレッグさんみたいに冷静な判断ができる人ばかりではないでしょう。
レフェリーは唯一公平に迅速に試合を止めることのできる立場です。その責任は大きいですし、彼らは迅速な判断を行う機械であるべきです。それが試合場にいながら闘わない「第三者」である彼らの闘いであると思います。
あと、大一番だから止めなかったって言うのは「むしろ逆でしょ!」ってかんじですね。大一番だからこそ適切な対処をしなければならないんです。なぜなら普段MMAを観ない人だって大一番だけは観るかもしれないからです。そういう人たちには「ケインvs.シガーノ3」こそがMMAルールのスタンダードに観えちゃったでしょう。それはMMAのイメージ的に大きな痛手だと思うんですね。大一番だからこそ、ディーンには2人の名勝負をジェノサイドにせずウォーで終わらせてほしかった、というのが感想です。
pakyさんのコメントで確信しましたが、これ私のタイトルミスですねw論旨と表題がずれてるから誤解を招くんです。薄々気づいてましたが、いよいよ確信しましたので後でこっそり変えます。正しくは、「なぜセコンドはタオルを投げなかったのか」ですね。
削除理想はレフェリーが止めることですね。ハーブ・ディーンの体は明らかにヤバいというのをわかっていた動きです。あそこで躊躇してはやはりダメなんだと思います。
はじめまして、つい最近UFCに興味を持ち始めた者です。このタイトルマッチは先日有料の動画配信サービスで初めて観ました。
返信削除元々はK-1ファンだったので、UFCでは、あそこまで出血・ダメージがあっても、試合が続行されることに、まず驚きがあり、観戦中はドクターストップがかかって然るべきだと思っていました。
ラウンドが進むに連れて、いたたまれない気持ちが増していきました。
私自身は、人命が何よりも優先されなければならないと思いますので、あの試合で何ら機能を果たしていないように見えたドクターの判断には、疑問を抱かずにはおれません。
人が亡くなってからでは遅いので、今こうして、あの試合について議論されることは、選手の安全に繋がるきっかけにもなり非常に良いことだと思っています。
コメントありがとうございます。あの試合を見てしまいましたか・・・wMMA見始めたばかりの方にはショッキングだったかと思います。
削除日本の格闘技は地上波放送が主だったために流血に対しては厳格でしたね。あれは競技側よりもテレビ側の都合だったのでしょう。
実際出血そのものはそこまで人命には影響しないでしょう。ただ瞼が落ちてしまいかねないほどの裂傷などであれば止めるべきだと思います。あの試合で問題なのは出血よりも脳震盪です。サントスがタフすぎるために体からバランスが失われないという事態になりましたが、記憶は飛んでいるのですからやはり脳がダメージを受けていたことになります。
ドクターは専門家です。レフェリーが見落とした場合、専門家が脳震盪の兆候をくみ取って止めなければならないのは間違いありません。あのドクターは責められてもやむをえないでしょう。
人命を最優先することはスポーツの根幹です。それはこの競技に関わる全ての人が肝に銘じておかなければならないことです。今回コメントをくださった貴方のように、この問題を真剣に考えてくれる人が一人でも増えてほしいというのがこのニュースを取り上げた理由なのでお役に立てたのであれば嬉しい限りですw
その意識を持つことは観客ですら例外ではありません。なのでもっとそのことを周知するべきなのだと思っています。選手を殺し合いをする奴隷のように考える観客は最も憎むべき連中です。
最近興味を持っていただいたとのことですので、これからぜひ一緒にMMAを満喫していきましょう!また何かあればお気軽にコメントくださいませ。