UFC172、ジョーンズvsティシェイラの試合の感想です。以下は個人的な意見ですので参考程度にどうぞ。
画像はUFC 172 大会フォトギャラリー | UFC ® - Mediaより
ライトヘビー級タイトルマッチ 5分5R
WIN 王者ジョン・ジョーンズ vs 挑戦者グローバー・ティシェイラ
(ユナニマス・デシジョンによる判定勝利)
王者は7度目の防衛に成功
閉じた金網の中は暴君の凄惨な実験場
グローバー・ティシェイラの眉は大きく切り裂かれ、塗りたくられたワセリンが再び溢れた血と混ざって眉の辺りから垂れ下がっていた。決して諦めないタフな男の深い傷が、金網の中で繰り広げられる戦いがショーではない事を証明していた。だがもし彼の顔面が綺麗なままだったならば、格闘技を知らない人にはこの試合がショーと映ったかもしれない。
それほどに、ライトヘビー級の暴君、ジョン・「ボーンズ」・ジョーンズの攻撃は常軌を逸していた。既存の格闘技の様々な要素を吸収しながら、そのスタイルはもはや既存の格闘技のどれともかけ離れていたからだ。まるでゲームや映画さながらの華やかさだった。だがその華やかさとは裏腹に、それらの攻撃は全て相手を効率的に破壊する意図が込められていた。
名伯楽グレッグ・ジャクソンが育て上げた芸術作品は、最先端のスタイルの果てに古流武術のようなものに辿り着きつつある、私はそう感じていた。
グローバー・ティシェイラは決して弱くはない。それどころか、試合内容を見れば先の挑戦者、「ザ・モウラー」アレクサンダー・グスタフソンにも決して見劣りはしなかっただろう。それでも、中盤にはすでに明確に差がついていたと私は思う。
そしてこの強豪を相手に王者は暴虐の限りを尽くした。王者は負けることを一切考えていないかのように、リスクを顧みずに次々とトリッキーな攻撃を繰り出していく。その様子はもはや新武器の試し斬りの様相を呈していた。そしてそれらは見せ技ではない、確実に相手にダメージを与える有効な攻撃手段でもあったのだ。
特筆すべきは肘打ち、関節蹴り、そして今回試合の決め手となったショルダー・クランクだろう。
目的は故障と混乱、全方位から迫る骨王の悪意
ジョーンズの攻撃の意図は明白だ。人体を破壊、もしくは痛めつける攻撃手段によって相手にトラブルを発生させてパフォーマンスを落とし、そして多様な攻撃手段で相手を混乱させて試合を優位に運ぶことだ。そのために彼らが選び出した攻撃手段はどれもえげつないものばかりだった。
まずは肘打ちだ。通常接近戦で使う技で、極端にリーチが短いために使う局面が限られている攻撃手段だ。ムエタイ、キックボクシングの一部、そして空手でも用いられる技だが、MMAでその使い手は決して多くはないように思う。有効ではあるが、近い距離で使うためにリスクもまた高いからだ。また肘の鋭利な部分を的確に当てるのは極めて難易度が高く、ましてや遠い距離から狙うのは至難の技だろう。
だがジョーンズはこれを比較的遠い距離から使い、さらにそこまでのリスクも負っていない。その秘訣は彼の使うタイミングと打ち方にあるように思う。
一つ目は比較的遠い距離から肘を折りたたんで横から回す打ち方だ。彼はこれをステップインと組み合わせて多用していた。一番よく使うのがこれを相手が出てくるのにカウンターで合わせる使い方だ。相手のステップインと同時に顔を下げ、横から回すと言うよりも畳んだ肘を前に押し出すようにして叩き付けていく。彼はこれを攻防一体の技として使っている。相手の突進を利用すると同時に前に出て距離を潰し、かつ腕で自分の顔面も覆って守っているのだ。鋭利な刃物を構えて体当たりをするのに似ているだろう。
次にこの肘を使うのがパンチを使う時だ。彼はパンチと同じ構えから、パンチと肘を巧みに織り交ぜて相手のディフェンスを掻き乱していった。構えは同じでも拳と肘は微妙に異なる軌道で飛んでくる。必要となる距離もまた違う。パンチの技術に秀でるティシェイラは、この距離と軌道を見誤って何度も肘を被弾した。
そして今回も有効だったのが、相手に金網を背負わせてからの接近戦での使用だ。これは最もスタンダードな肘の使いどころでありながら、MMAでは案外お目にかからない展開だ。ジョーンズはティシェイラを追い込み、そこから肘を使って次々と有効打を叩き込んだ。圧巻だったのは肘でのワンツーだろう。正確に硬い肘の先端で頬の当たりを打ち抜いていた。ただ有効ではあったものの、肘の多様でボディと顎ががら空きになったためにアッパーを何度も被弾していた。この辺りがMMAであまり見ない理由かもしれない。
二つ目はバックスピン・エルボーだ。これは彼が以前から得意としていた肘の打ち方で、ライアン・ベイダーからはこれでダウンを奪っている。
彼がこれを最もよく使うのが、相手を金網に押し込んだ局面だろう。その体躯を最大限に活かして相手を金網に押し込み、突如として回転して予想していない角度から肘を叩き込んでいくのだ。相手は金網を背負っているから下がれない。そこに突然ふっと圧力が無くなって相手は戸惑う。そして視線を上げた時には、スタンドの攻防ではまずお目にかからない選手の背中が眼前に広がっている。そして脳が状況を整理しようとした瞬間、右上方から高速で振りぬかれた肘が襲い掛かってくるのだ。相手の反撃手段を奪ってからの一撃というのがいかにもジョーンズらしい使い方だろう。
そして三つ目として今回初めて見せたのが、飛び込んで上体を屈ませてからの下から跳ね上げる肘だ。クリーン・ヒットはしなかったものの、タックルを切ろうと相手ががぶりに来ていたら直撃しかねない技だろう。がぶろうと頭を下げた動きがカウンターとなって、うまくいけば一撃でダウンを取れるかもしれない。上体を振って飛び込むために相手からの反撃も受けづらい。こんな攻撃すればうまいくいくんじゃないか、と妄想することはあっても実際に試合、それも大一番で使う気になどまずならないような技だ。これを試合で実際に試してしまうのがジョーンズという男の恐ろしさだろう。
次に彼の最も多用する壊し技が関節蹴りだ。これは以前から彼が愛用している技で、その危険性から非難も多い。立ち技の競技ではまず禁止されている技で、打撃による膝十字、一瞬で決まる膝関節ともいえるだろう。タイミングが悪ければ一発で行動不能もありえるし、試合後に影響が出てしまう可能性もある危ない技だ。だがUFCのルールでは反則とされていない以上、勝つためには使ってもなんら問題ない極めて有効な武器だ。
ただこの試合ではこれまでとは違う打ち方が目立った。以前は前に出した足でサイドキックのように蹴っていたが、この試合では後ろに下げた足を、サッカーのインサイドキックのような感じで繰り出して相手の膝がしらを蹴り飛ばしていった。そしてこれは近づいてパンチを打ちたいティシェイラの突進を止めるのにかなり効果を発揮しただろう。
試合が終盤になって疲労が目立ったティシェイラが、前に出ようと踏み出した時に放ったこの関節蹴りはかなり危険だった。踏み込んだ足を蹴られたティシェイラはその瞬間体がガクつき、ぴたりと動きを止めていたからだ。試合時は平気でも、試合後にティシェイラの膝に違和感が残ることは十分にありえるだろう。
最後に試合の決め手となり、そしてジョーンズの戦いの理念が最もよく現れていた攻撃であるショルダー・クランクについて言及したい。
これは1R、そして中盤あたりでも見せた相手の肘を抱え込んで捻りあげた技のことだ。相撲などでは閂という技名で呼ばれている。これがこの試合でティシェイラの肩を一瞬で破壊し、彼からノックアウト・パワーを奪った原因となった。
ジョーンズは脇の差し合いでティシェイラが右腕を差してくると、長身を活かしてそれを腕で抱え込み、そして肘の当たりを極めて一気に捻りあげた。丸太のようなティシェイラの腕がひしゃげると、ティシェイラは下がってその腕を抜こうとする。ジョーンズはそれに合わせて前に出ながら、ティシェイラの腕を上方に向かって持ち上げるように動かしていった。一瞬極まるかと思ったそれは外れ、試合には何ら影響がないように見えた。
だがこの一瞬の壊し技で、ティシェイラは肩を負傷していたのだ。これによってティシェイラの肩は力が入らなくなり、パンチから力は失われ、さらにクリンチで相手を突き放す際にもう片方の腕にかなり力を入れねばならず、それによって今度はスタミナまでも大きくロスしてしまったのだ。
試合後にティシェイラは語った。ジョーンズが腕を取りに来た時に放置してしまったが、それが大きなミスだったのだと。彼は恐らく、ここで試合に影響するようなダメージを受けるとは想像もしていなかったに違いない。柔術に精通したティシェイラですら、閂という技がよもやMMAで有効だとは夢にも思わなかったのだ。
信じられないのがこれを試合で使えると考えたジョーンズのセンスだ。以前リョート・マチダを絞め落とした押し付ける形のギロチン・チョークもそうだが、彼のサブミッションのセンスはかなり優れている。自分の長身と長い手足がどれほどに武器となるのかを知り尽くしている。確かに彼は体格の利、リーチの優位で勝ってきた部分は大きいが、決してそれに頼っているだけではない。それらの利点を把握しつくし、駆使しつくしているからこそ、ここまで勝ち続けてきたのだ。
煌めく感性、ギラつく凶暴性、冷酷な美しさを持つ王者「ボーンズ」
何遍も繰り返し述べているが、MMAの目的は勝利だ。勝つためにルールで許されることならば何をやってもいいし、ルールに書かれていないことで有効な行為があればそれも当然やっていい。だから常にルールを研究して何ができるのか、何が出来ないのかを研究し続け、新しい戦い方を考案する必要がある。人が知らない優れたものを編み出したものはそれだけ他人を出し抜くことが出来るからだ。
それは何も現代のMMAに限ったことではない。柔道において、かつて高専柔道があった時代には各学校の学生たちは次々と新技を開発していった。その中で生まれたのが今や寝技のシンボルマーク的な技である前三角締めだ。この技が開発された当初、対処法どころか技の存在すら知らない選手たちは次々と為すすべなく敗れていった。
MMA創世記も同様だ。タックルの切り方を知らない立ち技選手は簡単に転がされ、柔術を知らないレスラーはあっさりと腕を極められ、絞め落とされていった。知識とはそれ自体が武器であり、知らない攻撃手段には反応すらできないのだ。
肘打ち、関節蹴りは他の競技では基本的に禁止されているものだ。立ち技出身の選手には無意識のうちに「これは使ってはいけない」という意識が刷り込まれている可能性がある。そしてそれが飛んでくることなどほとんど想定すらしていないのだ。それは他のバックボーンでも同様だ。レスラーは頭の押し付けはやってはいけませんよということが体に刷り込まれているから、それをやられたら対策が取れないかもしれない。MMAに参戦する以上、それらはすべて取り払って一から組み立てなおす必要があるのだ。
そしてジョーンズを始め、ジャクソンズの所属選手が優れているのはこの点だ。決して既存の型にはまらず、常に自分がこうしたら優位だ、これは有効だということを模索しながら戦っている。もちろん失敗もある。それでも彼らの勝率を考えたら、その姿勢は間違いなく功を奏しているだろう。
その中でもジョーンズは群を抜いてセンスがいい。彼はレスラー出身でありながらグラウンド&パウンドに固執することはなく、ムエタイを練習してもムエタイの型にはまることも無い。それらの技術から取捨選択を繰り返し、足りないと思うものを次々と補っていくのだ。
彼は今回明らかにパンチ、それもきちんとしたジャブとストレートを積極的に使っていった。特にジャブの破壊力はリーチと相まって凄まじいものがあった。顔面を吹き飛ばされたティシェイラはマウスピースを思わず吐き出したほどだ。アッパーも凄まじい。スイッチを繰り返して両方の手でジャブとストレートを打っていた辺り、恐らく自分の練習成果を試していたのだろう。パンチに磨きをかけた理由はただ一つ、スウェーデンの勇士との再戦を見据えてのことだろう。
彼は勝つために貪欲で、変なこだわりを持たずに合理的に考えて様々な技術を吸収する。その姿勢は日本柔道の伝説的存在、木村政彦によく似ているだろう。彼は柔道で勝つために寝技を、そして空手を習い、ボクサーと対戦してやられればボクシングも学んだ。目的はあくまで勝つことであり、拘りや美学などは二の次だ。むしろ勝つために何でもするという考えこそ、最もシンプルで美しい哲学だろう。
彼は勝つために学んだ技術を体に溜め込み、それをオクタゴンで披露することに至上の喜びを見出しているのかもしれない。試合後に彼は言った、「全部アドリブだった」と。踵落とし、バックスピン・キック、ワンツー・エルボー、下からの突き上げる肘、そして一瞬でティシェイラの肩を破壊したショルダー・クランク・・・。あれらは全て彼がその場の閃きで繰り出したと言うのだ。
どこまで真実かはわからない。だがもし本当ならばなんともアーティスティックだ。グレッグ・ジャクソンがインターバル中に「芸術的だ!」と褒めていたのも納得できるところだろう。彼の戦いは音楽や舞と同じものなのだ。アドレナリンによる昂揚が導くままに、勝利を追い求めて戦いを紡いでいく。それは最盛期のアンデウソン・シウバに感じた煌めきと同じものだろう。
一瞬で相手を極めて破壊したり、人体の硬い部位で相手を痛めつけて行動を抑制したりという彼の戦い方は、生き死にを賭けた合戦組打ちの流れをくんだ古流武術を彷彿とさせる。それは究極の機能美を秘めており、そしてスポーツ化する格闘技の中で長らく封印されてきたものだ。それが総合格闘技の最先端の戦場で再び蘇るというのは何とも不思議なものだ。勝ちだけを追い求めれば、行きつく先は一つしかないのかもしれない。
パフォーマンスはここ最近では圧倒的に良かっただろう。コンディションも抜群だった。ティシェイラ相手にあれができるのであれば、もはや対抗馬はグスタフソン以外には存在しないだろう。だがただ一つ気になる点があった。それは彼のサミング行為だ。
無くならない「アイ・ポーク」とその対策案
ジョーンズはこの試合中、ティシェイラの顔や額に手のひらを当てて押す行為を繰り返した。彼は指を開いてティシェイラの顔を触ったり、それをぐいと押して突進を止めたり、顔面の前に開いて突き出すことで視界を塞いだりした。それらは全て試合には有効な行動だ。特に接近してパンチを打ちたいティシェイラにとってはこれ以上ないほどに有効だ。だがその過程でジョーンズは二度にわたってティシェイラの目を突いてしまった。
ティシェイラは露骨に嫌な顔をし、そして審判に抗議した。審判も試合を止めてジョーンズに厳重に注意した。それでもジョーンズはその行動を止めなかった。少し頻度が減った程度だろう。
手のひらを前に突き出して相手の頭や顔を触る行動はこれまでも問題になってきた。この行動で問題になった選手で記憶に残っているのがジョシュ・コスチェック、フィル・デイビスだ。彼らもこのアイ・ポークで問題となったことがある。
私はこの行動をレスラーの癖ではないのかと思っている。ボクシングを得意とする選手でこれをやる人を見たことが無い。レスラー、次いでキックボクサーに多い印象だ。キックボクサーは蹴りを打つ前の動作で、相手の顔面を手で押して蹴ることがある。これはボクシンググローブであれば問題の無い行為だが、OFGでやるとサミングを発生させる要因となる。福田力などもこれでサミングをしてしまったことがあった。
そしてレスラーはレスリングで頭を押し合う。頭を突き合わせながら相手の頭をはたいて牽制したり、額に手を押し当てて次の動きを探ったりする。そしてそこから試合を展開していくのだ。この動きがMMAでも出ているのではないかと推測している。これはレスラーにとってリズムを取る行為だ。この癖が抜けていないのではないだろうか?
さらにジョーンズははっきりと嫌がらせを目的にこれをやっている。突進の防止と視界を塞ぐのがメインのようだ。実際これは有効だ。人は頭を抑えられると行動がかなり制限されるし、動き始めを察するにも頭を触るのは効果がある。視界を塞がれることに関してはもはや説明の必要もない。一発を狙う選手にとっては一番嫌な行動だろう。
アイ・ポークは狙っているかどうかはわからない。だが結果的にサミングをしているし、それがティシェイラにとってプラスに働くことは絶対にない。現状ではやったもの勝ちになってしまっているのだ。
この問題に関しては、今のところグローブの変更が一番有力だと思われている。指の部分が開かないOFGにすれば防げるのではないかと考えてのことだ。指が常に曲がった状態になるのであれば、前に手を突き出しても先端部分が目に向かうことはない。だがそれは寝技などに支障を来すのではという懸念もある。
私見としては、手を開いて突き出す行為によるサミングは故意かどうかにわからず即減点でいいだろうと思っている。頭を押したり触るの自体は有効だし、それも技術と思うので規制はするべきではないだろう。だがそれを悪用してサミングを狙う奴もいるかもしれない。そのため、そういう動きを使ってもいいが即減点のリスクがある、という状況にすればいいだろう。ネックになるのがサミングの状況の定義だ。具体的にするのは難しいが、具体的にしなければあらゆる偶発的なサミングがすべて一発減点になってしまう。そうなればまたアクターが発生して目をやられたという大げさな演技をするだろう。
使ってもいいが減点のリスクがある、となれば軽々しく使わなくなるはずだ。たったの5R、もっと少ないときには3RしかないMMAで減点は凄まじい痛手だ。試合を大きく左右する要素になるのは間違いなく、出来ることならやめた方がいいとは思う。だがやられた側がやられ損になるよりはまだそのほうがマシだろうと思っている。
ジョン・ジョーンズが辿り着いたスターの形「スーパー・ヒール」
ジョーンズは試合でのサミングで大きな非難を浴びた。だが彼への批判はそれだけではない。彼が最終ラウンドで逃げ回ったことにも大きなブーイングが浴びせられた。
最終ラウンド、もはや一発逆転を狙うしかなくなったティシェイラは何としても打ち合いたいために無理やりに前に出続けた。満身創痍でありながら、尊敬すべき闘争心だった。だが勝ちを確信し、さらにリスクを避けたい王者はそのティシェイラを見るや、最後の1分くらいで流して逃げ回ったのだ。残り10秒でTDを狙いに行くあたりも徹底している。
極めつけは残り数秒、金網に押し込んだジョーンズはティシェイラを突き放すと、後ろに下がりながら見せつけるように両手を上げて勝利をアピールしたのだ。ティシェイラの屈辱は相当なものだっただろう。会場からもブーイングが飛び交う。試合後、その行動に腹を立てたのか腕組みをして苦い顔をしていたレフェリーが印象的だった。
逃げ回るまでは理解できる。それも確実に勝つための方法の一つだ。だが最後のアピールは完全に余計だった。この憎らしいまでのふてぶてしさがジョーンズの強みでもあるが、恐らくこれは多くのファンから怒りを買ったことだろう。ティシェイラが真っ向から勝負してきただけになおさらだ。しいて言えば、勝敗が決する前の行動だったことが救いだろうか。ティシェイラが敗者として確定した後にジョーンズが侮辱をする、もしくは勝利を見せつけるような行動をすればこれは完全にアウトだ。さすがにボーンズはそこまで浅はかではないとは思うが。
私はアスリートとしては感心できない行動だと感じた。最後まで全力で戦い抜くべきだと思うからだ。だが興行的には決してマイナスにはならないだろう。これからジョーンズは、多くの人が負けてほしいと願うヒールとなっていくからだ。
人々の関心を買うのは、何も強く品行方正な奴ばかりではない。むしろ「こいつにはひどい負け方をしてほしい」という欲求の方が、「勝ってほしい」という気持ちよりも強く人を惹きつけることすらある。ボクシングのメイウェザーもそういうところがあるだろう。またチェール・ソネンが多くの注目を浴びたのも同様の理由だ。
相手の故障など微塵も考えずに壊し技や他競技の禁じ手を躊躇なく使い、弱った相手にも一切手を緩めることなく徹底して痛めつけ、さらには勝ちを確信すればさっさと逃げ回ってブーイングにも涼しい顔をする。ジョーンズは今やヒーローではなく、ヒーローに打倒されることを待ち望まれるスーパー・ヒールへと変貌してしまった。だがこのおかげで、完全なベビーフェイスであるザ・モウラーとの対戦は一層白熱したものとなるだろう。多くの人はグスタフソンのKOを期待するに違いない。
ジョン・「ボーンズ」・ジョーンズ、冷酷非情な金網の支配者は、いつか敗れる時が来るのだろうか?ヒールのイメージを抱えたまま、彼はそう遠くない内にベビーフェイス、「ザ・モウラー」アレクサンダー・グスタフソンと再び拳を交えることになるだろう、多くの観客の負の期待と共に。
Tweet
憎たらしいまでの強さですね。勝ちに対する執念はたしかに木村政彦を彷彿させます。グスタフソン、コーミエとの試合が楽しみです。
返信削除この憎たらしさは自分は結構好きだったりしますwいいキャラです
削除ジョーンズの動きが古流武術のようだというのは、言い得て妙ですね。彼がよく見せる相手の腕を押さえて放つエルボーなどは、ジークンドーのトラッピングを彷彿させます。他の選手ではおそらくリーチの関係でフックのカウンター等を貰いやすいので多用は出来ないでしょうが、MMAというガチの世界で、アクションムービーのような技を使いこなすセンスには脱帽です。GSPはMMAの進歩を十年早めたと言われていましたが、ジョーンズの試合はMMAの更なる進化の片鱗を感じさせてくれます。
返信削除これまでは既存の立ち技競技の意識が抜けきっていなかったと思いますが、ジョーンズのおかげで決してそうじゃないんだという考えになる選手も多いような気がします。確かにジョーンズの肘やらはリーチが圧倒的だから使える面もあるでしょうがw
削除何も皆ご丁寧に同じ構えをする必要も無いんだと思います。自分が一番やりやすい戦い方を模索して、皆もっと滅茶苦茶やってほしいですw自由度の高さがMMAの魅力の一つですしね
やっぱりレフリーの表情はそう見えましたよね~w
返信削除あの変則の縦肘はようつべでアンデウソンさんの動画をみた「だけで」マスターしちゃったんですかね?
JJはタックルもあるのでより有効ですよね
後自分もムエタイプッシングは指を前に伸ばしてやって目に入ったら一発減点でいいと思います
普通にサミングにしか見えないし
特に彼は未必の故意をもってやってるようにも見えます
普通押すときは掌底で押すのに指を完全に前に出してますし
でもおっしゃる通りムエタイではなくレスリングの癖ならその見方は酷でしょうか
後間接蹴りも本当見ててヒヤヒヤします
これも前蹴り同様MMAだとカットがしづらいので
むしろ立ち技系の競技より危険かと
個人的には見たいカードはDCです
コーミエならJJの変幻自在の攻撃にも対処出来ると思うんですよ
そのやり方が文字通りかそれとも「出させない」戦法でなのかは分かりませんが
皆さんに言われるまでコーミエを完全に失念していましたwただ強いとは思うのですが、まだそこまでピンと来てない感じです。ライトヘビーだと減量苦があるでしょうから、長期戦になった時にどうなんだろうというのがいまいちわからないからかもしれません。
削除対抗馬にコーミエは入っていないんですね笑
返信削除サイズが小さいので間合いに入れるかどうかが鬼門ですが、単純なレスリングだけならJJより良いと思うので上になれればあるいは・・という感じがしますが
テイシェイラ戦は思った通り、間合いが詰めれなくてヒット数に相当差がでましたね。やはりグスタフソンくらいの大きさがないとJJ攻略は難しいでしょうかね。
コーミエは忘れていましたwただ忘れているということは、私の中でライトヘビーのコーミエの実力がいまいち把握できていないということです。なのでもうちょい試合を見るまで保留です。他の選手と違って階級移動が大きく影響しそうな選手ですので。
削除ティシェイラは見た目に反して機動力もあったし良いパンチをいれたんですが、それでも中盤以降は相当な差が出ました。肩をやったのが大きいんでしょうが、それでも大差です。グスタフソンはそこまで足を使わないでも打ちあえていたので、やはりある程度の体格があるか、相当なスピードがないとジョーンズは厳しそうです。