2013年8月26日月曜日

トラヴィス・ブロウニ、アリスターをKOしたときの事を語る

トラヴィス・ブロウニはUFC fight night 26でのアリスター・オーヴァリームへの劇的な1Rノックアウト勝利について話した(MMAmania独占インタビュー)



MMAmania.comより
画像はUFN: Shogun vs Sonnen Event Photo Gallery | UFC ® - Mediaより

これまでのキャリアで最大の勝利が訪れる中で、彼がどうやっていたのかを見てみよう。

先週末(2013年8月17日)にマサチューセッツはボストンで行われたUFC Fight Night 26において、トラヴィス・ブロウニはアリスター・オーヴァリームを相手に深刻な事態に陥っていた。

元K-1ワールド・グランプリ王者は最初のラウンド序盤にボディへの凶悪な膝を当てていた。その打撃はすぐさまブラウニの動きを止め、彼は連続のパンチで彼を攻撃し始めた。

ブロウニは「ザ・リーム」の驚くべき打撃の猛攻に晒されて打つ手なしのように見えた、しかし彼はマリオ・ヤマサキが試合を止めるのを防ぐに足る動きをし続けていたのだ。

そしてその後にそれは起こった。

オーヴァリームのペースは失速し、「ハパ」はUFC史上最も印象的な打撃の一つを直撃させ、元ストライクフォース王者を顔面へのフロント・キックで捉えて劇的な大逆転の第1ラウンドでのストップ勝利を記録した、そして帰宅する途中で「ノックアウト・オブ・ザ・ナイト」のボーナスを手に入れた。

ブロウニは本日早く、MMAmania.comに驚愕のKO勝利にまつわることについて話し、オーヴァリームが自身の望む所に来たと悟ったのはいつだったのか、そしてなぜ子供達と家路に着くことが試合後のあらゆるボーナスよりも大きな価値があったのかをこの独占インタビューで語ってくれた。

インタビューは以下:

ブライアン・ヘミンガー(MMAmania.com):あの試合が終わるとすぐに、あなたはボストンという街とあらゆることについて熱く語りました。あれは思わず出てしまったものなのですか、それとも自分が勝った場合に備えて何らかの計画をしていたのでしょうか?(訳者注 試合後のマイクでブロウニはボストンでの爆破テロの被害者に対して熱い励ましのメッセージを送った)

トラヴィス・ブロウニ:うーん、そうだね、私達は実はそれについて朝食のときに話していたんだ、「あれは一体全体どっから出てきたんだ?」って感じでね。でもそれは良い事だった気がする、そんな感じだ。私には、ああいう悲劇を経験せざるを得なかった人々の気持ちが本当によくわかるんだ、特に子供に関係している時はね。私には子供が二人いるし、ボストンにいる間に影響を受けた人たちのことについて考えていたんだ、一人の子供が死に、彼の姉は足を失った、そういう全てのことを考えていたんだ。ものすごく熱心にね。私はその週の間はずっとそのことについて考えていたし、それがちょうど試合の後に出てきたようなもんだね。

ヘミンガー:私は何人かの選手と話しまして、それはあなたがここ数ヶ月に渡ってあの瞬間を作り上げるためにしてきた小さなことの一つに見えますし、それが試合が終わった直後にあの大きな感情の渦の中で最高潮に達したんですね。

ブロウニ:うん、うん間違いないね。ああいうのはよく起こるんだ。これはフィジカル・スポーツであるのと同時に、精神的で感情的なものでもあるんだ。ああなることも多いだろう。

ヘミンガー:あなたはジャクソンズでトレーニングしているときに多くの犠牲を払っている選手であることを私は知っています。あなたは家族に会えません、あなたがニュー・メキシコにいるときに彼らはカリフォルニアにいるからです。この数日は再び子供達のよき父になる絶好の機会ではなかったでしょうか、リラックスして満喫することはできましたか?

ブロウニ:ああ、間違いなく、あれはもう一つの賞だった。勝利の後に家に帰るのが大好きなんだ。あなたがショーに出たりしたいのと同じくらい、家に帰って我が子達に会い、私がドアに足を踏み入れた時に彼らが「ダディ!」と大きな声をあげて私の腕に走りこんでくるのが私の最高の賞なんだ。そういうの全てがね。

ヘミンガー:試合のことに戻りましょう、試合中にオーヴァリームがあなたのボディに膝とパンチを突き刺しているときに、どれほどのダメージを負ったのかということについてあなたは言及しました。次の日から今日に至るまであなたはどのような感じだったのでしょうか?試合の夜に押し寄せた大量のアドレナリンが切れる日までは、疼きと痛みの大部分はあなたに襲い掛かってはこないのでしょうか?

ブロウニ:そうだね、実際私の腹は痛みはしなかった。彼は私の肋骨とかそういうような場所はどこも打ちはしなかった。彼は私のみぞおちを完璧に捉えて、それが私の横隔膜を凍りつかせたんだ、それが全てさ。私はもう息が出来なかったしそれは私を麻痺させたんだ。もう一つの要素として、私は頭に二箇所の打撲があったんだ、同じようなものとしてはね。私はもうすっかり完治したよ。私がやらなきゃいけないことといえばむこうずねの状態をはっきりさせることだね、骨の破片か、私の蹴りが彼の肘に当たったことが原因で発生したそういうようなものが何もないんだということをね。

ヘミンガー:あなたに起きた事態は、頭をパンチで打たれてほぼノックアウトされた状態になるよりもずっと恐ろしいような気がしますね、というのもノックアウトが起きた時はあなたは少しめまいがする程度です、しかしあなたがボディを打たれて一時的に行動不能になったとき、あなたはまだ起きていることすべてを経験しているわけですし、あなたは肉体的にはそれにほとんど反応できないわけです。恐ろしいことのように思えます。

ブロウニ:ああ、間違いないね。君が言ったように、何が起きているのかわかるしそれに対してはなにも出来ないんだ、だからそれはノックアウトされて、ケージの中で目覚める前に安らぎの場所に行くのよりも嫌なことだよ。(訳者注 ブロウニは気絶している間のことを「going to comfortable place」と言っている。失神すると気持ちいいとは言うが・・・。)

ヘミンガー:一部の人たちはあなたの試合をシェーン・カーウィン対ブロック・レスナーの短いバージョンになぞらえていました、一方の選手が早い段階で殴られ、もう一方は試合を終わらせようとパンチを浴びせかけるもののフィニッシュできず、対戦相手が大きなカムバックを果たしてしまう試合です。あなたはそういう類似性を見出しますか?

ブロウニ:私はそう思う。けれど違いがあるとも思う。やはり明らかな違いがある。彼は私の腹を捉えて私の呼吸をほぼ破壊したしそういう種類のものだ、だがシェーン・カーウィンがやったのはそのラウンドをあらゆる面で完璧に支配したことで、そして次のラウンドで彼が出てきたのはすでに頭の中で鐘が鳴ってぐったりした後だった。だから私は少し違うと思う。私はブロックのようにケージの中を転げまわったりしなかった。私の意識ははっきりしていた。

ヘミンガー:オーヴァリームがパンチを浴びせてフィニッシュしようとし続けているとき、あなたはオーヴァリームのパンチが失速するのを感じることが出来たと言いました。あなたが「彼は手詰まりだ、彼を捕まえたぞ!」と悟った具体的な瞬間について振り返っていただけますか?

ブロウニ:私が思うに、私がオーバーハンドの左フックとアッパーカットのコンボを放ちだして彼を下がらせた時だね、彼が私を掴んだ時、そこで違いが感じられたんだ。彼が私を掴んだのは、私がしようとしていることに怯えているからだというように感じられた。あわよくば私に何かしようとして掴みにいったというようには見えなかった。彼は私をテイクダウンするために掴んだわけではなかったし、さらに膝を叩き込むためでもなかった。彼はその時私がしようとしていることを止めるために私を掴んだのだ。その時、私は彼を窮地に追い込み、今が私が反撃するターンだと悟って彼にプレッシャーを掛けたんだ。私はいくつかのことを仕掛け始め、彼を考えあぐねさせ続けてあのノックアウトを得たんだ。

ヘミンガー:特に際立っていたのがゲームプランニングでした。ここ4、5年の間、皆はオーヴァリームと闘ってきましたが、彼のスタンドにディフェンス面で弱点があることに気づいていた人は多くありませんでした。K-1のバダ・ハリも、オーヴァリームがどでかいフックを放ってカウンターを当てた時にガードが開くことを利用しました。しかしあなた方は彼のディフェンスの中心上方が開くことを発見しました。トップ・ストライカーを分析し、あなたのために利用できる何がしかを見つけ出すあなたのコーチのあの能力はなんと言えばいいのでしょうか?

ブロウニ:おお間違いない、私達はジャクソンズにおいて、あのゲームにおける最高のコーチを何人か擁しているんだ。私達がしようとしていることについて一度も疑いを持ったことは無い。私は今年の間に皆の中央部分に蹴りを当ててきて、全く違ったリアクションをするのを見てきた。私は倒れる人を見たし、うなり声をあげて前に出てこようとする人を見た、だが彼らには打つ手が無かったし、私は彼らが蹴りを食らって数歩後ろに下がるのを見てきたんだ。だから私はあの蹴りが与える影響は何かを把握しているし、私はそれに精通しているんだ。私が彼に最初の一発を当てると彼は一歩下がった、それから私が同じ蹴りを顔面に当てると彼は三歩下がった、私はまるで「オウ!私は彼を捕らえたぞ!効いてるぜ!」って感じだった。

BOSTON, MA - AUGUST 17:  (L-R) Travis Browne knocks down Alistair Overeem with a kick in their UFC heavyweight bout at TD Garden on August 17, 2013 in Boston, Massachusetts. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

私はそれらを利用し続け、彼をその蹴りで打ち、頭部めがけてラウンド・キックを打ち、私はその蹴りを下腹部に放って、そしてそれを上方高くに放ったんだ。私は終始彼に推測させつづけた。それはほとんど彼を狙撃しているようなものだった。私は彼のみぞおちを打った、だがそれから私は彼の顎を正確に同じ蹴りで打ち、その後で両側から大振りのフックにいこうとしていたんだ。その間ずっと、恐らく彼はあれこれ考えていたはずだ。「下腹部を打たれるんだろうか?顔面をまっすぐ殴られるんだろうか、それとも頭の横側から殴られるんだろうか?」ってね。それがひとつよかったことだ。

ヘミンガー:あなたのスポーツへの情熱はまったく違っていました。あなたは自身のこれら強大なキックを撃つ能力ととても素早く動き回る能力が、UFCのヘビー級においてあなたが抜きん出ている理由だと思いますか?

ブロウニ:ああ、私が思うに皆は本当にこのスポーツをアスリート的な側面から見始めていると思うし、このスポーツはあなたをそういう方向に持っていくことができる。我々のチャンピオンは皆とてつもないアスリート達だ。ベンソン・ヘンダーソンを見てみるといい、ジョン・ジョーンズ、ジョルジュ・サンピエール、そしてケインもだ。それがこのスポーツが帰着しつつあるところだし、私は自分のスポーツへの情熱がここで大きなアドバンテージになると感じているんだ。

ヘミンガー:いくつかの試合を振り返ってみて、あなたはこのオーヴァリームとの試合の結果によってビッグフットへの敗戦の埋め合わせができたように感じていますか、つまりはもし最初のラウンドであなたが足を怪我しなければ、シウバとの試合はどのような結末になることを望んでいましたか?

ブロウニ:ああ、私はそういうことを毎試合予期しているんだ。私は誰であろうとマジで痛めつけるだけの技術、パワー、そして能力を持っている。それが私達が予期していることだ。それだけさ、みんながっかりするだろうね。

ヘミンガー:現在あなたが家族の時間を満喫しているのは承知しています、しかしあなたの向うずねやら全てが判然としたとして、あなたがそこを離れて戻ってくるのはどれくらい早くがいいと思っているのでしょうか?

ブロウニ:ドクターが私の診察やら全てを終え次第、私は子供と一緒に少しばかり休暇を取って、それからすぐに戻ってくる。私は試合の間を長期間空けるのを好む人間じゃない。忙しくしてるのが好きだからそこから離れて戻ってくるよ。

ヘミンガー:皆はすでにそこを離れてマッチメーカーが対ファブリシオ戦、スタイプ・ミオシッチ戦、タイトル・ショットさえ持ってくるのを想像して楽しんでいます。それらはあなたが望むタイプの試合でしょうか、それとも今あなたには他に目指している何かがあるのでしょうか?

ブロウニ:私は地道に前に進みたいと思っている。私には今いくらかの勢いがあるし、だからランクを上げ続けたいし強い連中と戦いたいね。私をタイトルに近づけてくれるのなら何でもいいよ、それが私の究極的なゴールだからね。
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というわけでアリスター・オーヴァリームを相手にアンデウソンばりの前蹴りでKOしたトラヴィス・ブロウニのインタビューでした。

試合中にアリスターのメンタルの弱さが完全に看破されていますね。彼が自分を掴んだのはテイクダウンに行くためでも膝を打つためでもなく、「自分がすることを止めようと」怯えて掴んでいたのだと言います。必死で殴ってもKOできず、ガスが空っぽになったところで少し打撃を受けて一気に心が萎えてしまったのでしょう。ブロウニはそれを彼の掴みかかり方で見抜いたようです。みぞおちを打たれてパンチを雨のように浴びせられたにも関わらず素晴らしい冷静さです。

そもそもアリスターがドン亀固定砲台になる前はこういうファイトスタイルでした。最初の数分でとにかくガムシャラに攻めて、怯んだ相手にいいのが入れば勝ち、冷静にさばかれたらあとは反撃を食らってKO負けという様式美でした。

そしてその様式美の根底にあるのはメンタルの弱さです。彼はジリジリとした、腹を据えた競り合いに耐えられないのでしょう。その気持ちはわりとわかりますし、そういう臆病さがいいほうに爆発したのがアンデウソン・シウバのような気がします。

当たり前ですがそういう攻撃は力みすぎてしまうために、使ったガスに見合った攻撃にはなりません。アリスターのガス欠は昔からこれに起因していたように思います。そして今回の試合も同様でしょう。彼はブロウニのみぞおちにいいのを当ててダウンを奪いますが、その後に早く試合を終わらせたいあまりに相手の状態を確認もせず、ただむやみやたらに殴り続けました。ブロウニのガードをまったく見ていませんでした。もし冷静に相手を見ていれば、呼吸の凍りついたブロウニの腹に追撃の膝を入れるなり、もっといいポジションを作るなりをしていたでしょう。彼はブロウニのガードの上から力んだパンチを撃ち続け、焦って反則の膝を放ち、それでもフィニッシュできずに燃料を全て使い果たしてしまいました。結局パンチはろくに当たらず、ブロウニがいうには頭に2箇所打撲が出来た程度だそうです。

レフェリーが止めてもおかしくなかったという人もいますが、自分は止める要素があったようには思いません。ガードの上からいくら殴っても意味が無いですし、脳震盪の兆候はブロウニに見られなかったからです。事実ブロウニは脳震盪は起こしていなかったと言います。バランスを失っておらず、ガードもしていて目で相手を捉えているのですから止める理由が無いわけです。

そしてガスを失ったアリスターはもはや息も絶え絶え、そしてそこにブロウニが鍛え上げてきた武器である前蹴りが炸裂します。ボディに、顔面に、またボディに、そして顔面に。狙撃のようだとブロウニが語るとおり、ガードがまともにできないアリスターの膨れ上がった腹に面白いように前蹴りが突き刺さりました。そして最後にまったく同じ軌道からの顔面への前蹴りが飛んできて彼はとうとう倒れてしまいます。

記事中で、記者がここ5年間でアリスターのスタンドのディフェンスに弱点があることに気づいた選手は少ない、といっています。ガードの際に、中心部分ががら空きになるという弱点です。弱点は正しいですが、選手が気づかなかったという点は間違いです。アリスターと対戦した選手は気づいていましたが、通常ではあり得ない筋肉と強化されたメンタルによって、そこを狙った攻撃にアリスターが耐えることができた、というのが正解です。

以前カブ・スワンソンの打撃分析記事で紹介しましたが、ムエタイのハイガードはMMAにおいて致命的な欠点があると言われています。それはボディとアッパーカットに極端に弱いという点です。ボディはがら空きになりますし、ハイキックやフックを想定して腕で頭の側面を覆って猫背になる形はアッパーカットに対する力の逃げ場を失います。今回のアリスターもほぼ正対した状態で顔を下げて猫背になったために、下から突き上げる前蹴りがまともに突き刺さってしまいました。また頭の側面を覆うガードは、中心部分が空くためにきちんと相手の攻撃を見ずに顔を下げてしまうとストレート系の打撃で簡単に抜かれてしまいます。ボクシングや空手のように身体を横にすればこのガードで防御できますが、ほぼ真正面に構えてしまうムエタイではまともに食らうことがあります。

ファブリシオ戦を思い出してみますと、1R早々に膝をおかしくしたファブリシオは引き込もうとしまくって大ブーイングを浴びます。しかし2R以降には開き直って、怪我に耐えながらスタンドで勝負を挑むと彼のストレート系の打撃がガンガン当たり始めます。結局その後にはアリスターも失速してファブリシオが組みにくるたびにアリスターが投げ捨てるというよくわからない試合になりました。あのときも亀ガードの隙間を縫ってパンチがガンガン当たっており、引き込みの印象が悪すぎただけで自分はファブリシオ勝ったんじゃないのかと思うくらいにクリーンヒットしていたのを覚えています。実は試合前にファブリシオのコーチはアリスターのテクニックが大したこと無いのを看破しており、当初の作戦ではスタンドでやる予定だったそうです。臆したファブリシオが過剰に警戒したために失敗したそうです。

結局アリスターがやっていたのは筋肉の鎧とグローブでとりあえずハイガードをするというものであり、相手がボディを狙ってくればそこにカウンターで力任せのフックを当てるという戦法でした。自分はあの亀ガードが死ぬほど嫌いな上にフックも力任せなだけで、あんな勝ち方する選手を持てはやす風潮がまったく理解できませんでした。

しかしドーピングがばれて筋肉の鎧を剥がされ、小さいグローブで試合をするとなると彼の亀ガードは機能しません。さらには相手の打撃に対する恐怖心が昔のように戻ってしまっています。これでは勝てるわけがありません。

今回のブロウニ戦でのディフェンスも酷いものでした。ある程度距離があると一応は足が動くようですが、やはり近くなってくると彼は相手の攻撃を見ていられないのです。ブロウニが何か動作をしようとするたびに彼は顔を下げて首をすくめ、ハイガードを選択してしまいました。それが蹴りかパンチかの判断すらせずにです。薬物に頼った闘い方が骨の髄まで染み付いてしまった感じです。とてもじゃないですがストライカーとは呼べないでしょう。彼はとにかくリラックスして冷静に試合できるようにならなければどうしようもないような気がします。

逆にブロウニはよく研究していたようです。特にここ最近は前蹴りとその与える効果について研究していたようで、対戦相手は彼の前蹴りに対して色々なリアクションをするものの、結局はどうしようもなくなって後ろに下がる選択をする、ということに気づいており、それを利用した攻撃方法というのを考えていたようです。ジャクソンズらしいというか、とても面白い発想です。そしてその蹴りがハイガードによって中心部分ががら空きになるアリスターのディフェンスにがっちりと嵌った、というのが今回のKO劇の真相のようです。

私はブロウニは結構好きです。飄々とした感じと、あまり格闘家然としていないところが個性的でいいと思います。バックボーンが格闘技じゃない選手で、以前やっていたスポーツはバスケットボールだそうです。さすがにバスケの選手だけあってスタミナがありますね。あの背の高さも納得です。

本人も言うように、とてもアスリート志向の強い人のようで、MMAがスポーツとして浸透していくこと、ファンがアスリート的な視点でMMAを見始めていることを歓迎しています。そしてそうなったとき、自分のようなタイプは有利になるだろうと。自分もこれは同感です。チンピラ系の人たちは、リングの上では真面目なスポーツマンに後れを取る傾向にあると思うからです。

これからのブロウニの活躍に期待したいと思う一方、アリスターの今後についてはどうなるのでしょうか?試合後のデイナは渋い表情でした。それは当然でしょう。元々はタイトル争いに加わるコンテンダーとして期待されていたにも関わらず、ドーピング違反が発覚、そしてビッグフットにサンドバッグにされ、さらに今回ブロウニに面白キックでKOされたのです。そして彼のギャラは安くはありません。試合内容を考えれば、とてもじゃないですが割りに合わないでしょう。あと一回負けたらリリースは間違いないかと思われます。

しかし、私は今のアリスターのほうが好きです。ドン亀固定砲台でKOを量産してチヤホヤされてるよりは、今のスタイルのほうが応援する気になります。今回体はさらに仕上がりが酷く、身体は丸く萎んでいました。テストステロン値が下がりすぎてもはやまともなシェイプすらできないのかもしれません。メンタルも結局はデビュー当時のままで、積み上げてきたものが何一つ無い状態です。

それでも彼は試合に出てきました。そして少なくとも勝利一歩手前までは行きましたし、膝蹴りそのものはかなり巧かったと思います。攻撃のセンスは決して悪くないのではないでしょうか。加えて、彼は試合後にツイッターでまだ闘う意思をすぐに表明しました。あれだけの負け方をしたにも関わらずです。

今のアリスターを見て彼を見限ったというファンの人がいるかもしれません。しかし、ちょっとやそっと負けたくらいですぐに見放すのではあまりにも愛が無いんじゃないでしょうか?今のこのザマはアリスターの自業自得です。しかし彼が薬に再び手を出すことなくケージに足を踏み入れ続けるのならば、彼が100戦100敗して世界中の人が彼を見放したとしても、私は彼のファンの最後の一人でいたいと思います。

8 件のコメント:

  1. ハパさんやりましたね。子煩悩な人らしいのでトレーニング中はさぞかし辛いのでしょう(笑)
    ハワイアンの性格とタフさ、白人の身体の強さを兼ね備えたハパ(ハーフ)らしいシンプルかつワイルドな戦法でした。
    弟フレームは着飾ってたものがバラバラ取れてますね。でも「UFCで闘う=言い訳しない」ことを選んだのはチョット見直しました。次戦が格闘家としての正念場になる気がします。

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    1. コメントありがとうございます!

      ハパさんは子煩悩なだけでなく、ものすごい人格者みたいですね。
      勝利後にツイッターでジャクソンズの選手が皆自分の事のように喜んでいたのを覚えています。とくにディエゴ・サンチェスのはしゃぎようがすごかったですw

      戦法は面白かったですね。MMAで前蹴りを主軸に据えた戦略とか初めて見た気がします。ワイルドすぎですw普通は思い浮かびませんが、あの長身と足の長さ、そしてバネを考えたら決して悪い選択肢ではないですね。結果もちゃんと残したわけですし。この柔軟さがジャクソンズの凄さですね。

      弟フレームって一瞬誤字かと思いましたが、そういえば弟でしたねw私がアリスターに求めていたのはこういう姿勢です。結局勝とうが負けようが、言い訳しないで試合に出続けるのが選手として一番真っ当なあり方だと思います。

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  2. はじめまして。アリスター野次の相手誰ですかね?ノゲイラとか?(笑)
    エディさんのblogはエディさんのマニアっぷりが出てて読んでてとても面白いです。応援してます。

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    1. マニアと言われるとちょっぴり恥ずかしいですwそんなにマニアックかな?いやマニアックですね。

      次の対戦相手は誰ですかね・・・もうここまで来たら組膝一点突破でいいと思うんで、ハイリターンを期待して上位陣とやったほうがいいんじゃないでしょうか。ノゲイラとかファブリシオはいいですね。あまり打撃に一発が無い上位陣がいいと思います。ミトリオーネとかシャウブあたりと対戦してもいいですが、負けたら確実にリリースなのであまりよくないような気がします。

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  3. PRIDE組のファイトスタイルは局面的で古いんですよね

    試合の組み立てができないから必要な技術が分からない。

    最新MMAではミルコの絶妙な上下打ち分けのキックも、ステップワークさえ止めなければ全く問題にされなかったですし。

    固定大砲式は本当によくないと思います。
    アリスターに必要なのはステップワークやアウトボクシングという、オクタゴンにおける必須項目で、それを実践したいならスタミナつけるしかないんですよね。

    UFCファイターのほとんどがオバケみたいなスタミナだと思います。

    K-1ファイターと打撃の練習をしているそうですが、問われるスキルがまるで違いました。

    それに気づかなければ、いくらテストステロン値が高かろうと、ペイザォンにパンチで打ち負けたのと同じ結果になりそうです。


    彼に今ある武器は、組み投げの強さと膝だけだと思います。

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    1. 最近はもうスタミナが最優先な感じですね。どんなに優れた技術を持っていても、息が切れてはその技術力が死んでしまいますし。

      アリスターは基礎に立ち返るといってキックボクシングをやっていましたが、やっている競技はMMAなんですよね。アリスターには方針を打ち立てて監督してくれるコーチがいないのかもしれませんね。おっしゃるとおり、このままではどれだけ練習してもまたスタミナを切らし、ガードを抜かれて負け続けるだけだと思います。

      ただキックボクシングばかりやっているわりに、なぜかクリンチが妙に強いんですよねw元々膂力はあるし足腰も強いですから、打撃のプレッシャーが無い差しあいだとリラックスできるのかもしれませんね。それによって本来持っている力を十分に出せるのかもしれません。膝だけは異常にスピードありますよね。もう彼は組み膝職人でいいと思います。ひたすら組み付いて膝、相手が倒れても膝、勝利者インタビューに来たジョー・ローガンにも膝を入れれば勝率は跳ね上がると思います。

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  4. ダナハー2013/08/27 20:57

    >PRIDE組のファイトスタイルは局面的で古いんですよね

    >試合の組み立てができないから必要な技術が分からない。

    これは本当に仰る通りですね。古い話ですが、五味vsケンフロを見た時に両者の戦術面の余りの差に、MMAと総合格闘技は別のステージのものだなと驚かされた記憶があります。

    アリスターはブラックジリアンでも孤立気味でロクに練習も出来ていないらしいですが、そんな環境で今から欠点の改善が見込めるものなんでしょうか?

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    1. 五味ケンフロ戦は完封という言葉しか浮かびませんでしたね。

      欠点が改善する可能性はあると思います。改善のためのモチベーションは敗北によって得られると思うからです。過去自分のやり方で成功した人は特に自分のやり方を捨てられない人が多いように思います。しかし敗北を重ねてそれが通用しないとわかれば、それを捨てざるを得なくなるからです。

      アリスターがこれでやり方を根本から変える必要に気づき、そしてまだMMAで王者を目指す気持ちがあれば可能性はあります。彼が謙虚に己の力の無さを自覚し、チームメイトに頭を下げて教えを乞えば今よりも強くなることは十分に可能なはずです。

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